CUSTOMER STORY

KDDI株式会社 | 電気通信事業

オンサイトの支援により予防保守の体制強化、サービスのさらなる安全性と快適さを追求

個人/法人ユーザーに対し、多様なICTサービスを提供するKDDI。同社は安全かつ快適なサービス提供を実現するため、F5ネットワークスのコンサルティングサービス「サービスデリバリースイート」を活用している。F5製品に精通した専門家のサポートによって、システム設定の最適化と、障害を未然に防ぐプロアクティブな運用保守を実現。さらに社内標準となるリファレンスモデルも策定し、サービス品質のさらなる向上と、運用体制の効率化を進めている。

実績を評価し導入を進めたF5製品設定の一貫性と知識の確保が課題に

「au」ブランドで個人向けの携帯電話事業や固定通信事業を展開する一方、法人に対してもデータセンターやセキュリティ対策などの幅広いICTサービスを提供するKDDI。同社のサービスには数千万というユーザーがアクセスするコンテンツやアプリケーションも多く、さらに近年はスマートフォ ンの普及などを背景に、そのトラフィックは増大を続けている。

「お客様の生活やビジネスを支える私たちのサービスは、決して止まることが許されません。そのため、いかにサービスの品質を確保するかは、当社の最重要課題となっています」と、KDDIの築嶋健輔氏は語る。

同社は、製品選定に当たっても信頼性を第一に重視。以前から同社の様々なシステムに適用され、安定したパフォーマンスを発揮してきた実績を評価し、F5ネットワークス(以下、F5)のアプリケーションデリバリコントローラーを数多く採用している。「F5製品の高度なロードバランシング機能は、安全性と快適さの両立が求められる当社サービスを支えるシステムの要として、なくてはならないものとなっています(図1)」(築嶋氏)。

だが、F5製品の導入を進めるなかで、検討すべき課題も出てきた。それが機器設定の一貫性の問題だ。「従来は、システムごとの担当SIerから提示された設定を採用し、運用を行っていました。しかし、サービスの増強を進めるなかで、システム数も増加。設定が統一されていない状態では、管理の煩雑化や、問題発生時の対応に手間がかかる恐れがあったのです」と、同社の野口博則氏は述べる。

さらに、こうした状況は別の問題も招いていた。ナレッジの蓄積に関する問題である。「システムごとの個別対応を続けていたのでは、F5製品に対する知見やノウハウを、体系的に社内に積み上げていくことが困難です。今後、F5製品の導入拡大を検討するうえでは、ナレッジの蓄積・共有を進める体制を整備する必要もありました」と、新名豪氏は振り返る。

既存設定を検証し参照モデルも策定SIer任せからKDDI主導の体制へ

そこでKDDIは、システム構築・運用体制の改善に着手。システムの全体最適化と、運用のさらなる効率化を図るため、SIerに一任していたF5製品の機器設定を、KDDI主導で決定・管理する体制へシフトすることを決めた。そのためには、F5製品に対する深い理解と詳細な知識を社内に蓄積することがかせない。そこでKDDIが選択したのが、F5が提供する「サービスデリバリースイート」を活用することである。

これはF5製品のユーザー企業を対象にした、コンサルティングと運用支援を行うサービス。導入企業ごとにF5製品に精通した「サービスデリバリーマネージャー」が用意され、ユーザー企業の立場に立ったサポートをオンサイトで実施する(図2)。「同サービスはグローバルでも豊富な実績があり、大きな安心感がありました」と築嶋氏は選定理由について話す。

同サービスを活用し、KDDIがまず取り組んだのが、すべての既存システムを再検証し、改善できる設定などがないかを確認することだった。F5のサービスデリバリーマネージャーに参加してもらい、F5の推奨設定と照らし合わせながら検証を進めた結果、ログ出力に関する設定や、フェイルオーバー時間に関する設定などを最適化できたケースもあったという。

「こうした大規模な検証作業をすべて自社内で行うには、非常に大きな労力が必要となります。サービスデリバリースイートでは、F5の担当者にオンサイトで検証してもらえることで、作業の省力化やサイクルの短縮はもちろん、より精度の高い検証が行えたと評価しています」(野口氏)。

さらに、この検証作業を通じて得られた調査結果は、サービスデリバリーマネージャーによって週次のミーティングで共有され、KDDI社内のナレッジとして蓄積。こうして得られた知見を基に、KDDIの標準設定ポリシーとなる「リファレンスモデル」も完成させた。

「リファレンスモデル策定に当たっても、F5の的確なサポートは非常に役立ちました。おかげで3カ月間で作業は完了。このリファレンスモデルによって、KDDI主導によるポリシー管理体制が実現し、SIerへの的確な指示、問題発生を未然に防ぐシステム開発が容易になるのはもちろん、問題発生時の対応の迅速化も可能になります」(築嶋氏)

人材育成にもF5の支援を活用安全性と快適さを今後も徹底追求

今後同社は、リファレンスモデルを、新たに立ち上げるシステムと、更改のタイミングを迎えたシステムに適用していく予定だ。本格的な効果検証はこれからだが、その成果には大きな期待が寄せられている。「すでに、ある新規システムの開発では、SIerから提案された設定内容をリファレンスモデルと比較し、障害につながる可能性のある不備を事前に発見・修正できました。こうしたケースは今後さらに増えていくはずです」(新名氏)。

昨今、モバイルサービスの高度化につれて、ネットワークの安定性に対するユーザーの関心も年々高まっている。「今回の取り組みで、予防保守や有事対応力の強化も実現でき、こうしたニーズの変化への備えも固められたと自負しています」と築嶋氏も期待を込める。

加えてKDDIでは、F5のサポートを受けながら、社内の人材育成にも一層注力していく考えだ。「現在取り組んでいるのは、運用リーダーの育成です。F5には標準的なトレーニングメニューに加え、KDDI向けのカスタムメニューも作成してもらい、エキスパート人材の育成を進めています」と野口氏は説明する。将来的には、トレーニング修了者を中心にした社内の教育体制も、F5の支援のもとで確立していく方針だという。

「F5のサービスデリバリースイートは、F5担当者と常に目的を共有しながら、サービスの改善に取り組むことができます。大規模なネットワークを持つ通信事業者ならではの要望にも柔軟に対応してもらえるのもありがたいですね」と満足感を示す築嶋氏。KDDIでは今後、F5製品の活用範囲を、ロードバランシングだけでなく、セキュリティやDNS、PEM(Policy EnforcementManager)にも広げていくことを検討している。そこでもF5のサポートを受けながら、より安全かつ快適なサービスを実現していく考えだ。