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Edge・クラウド動向から紐解く、F5のVolterra社買収の経緯と戦略とは

Keiichiro Nozaki サムネール
Keiichiro Nozaki
Published July 28, 2021
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みなさん、こんにちは。
既に皆様ご存じかと思いますが、今年1月にEdgeクラウド基盤を提供するVolterra社をF5は買収しました。その後、社内外の様々な手続きを経て、先日日本でも報道機関向けの戦略説明会を開催致しました。当ブログでは、各種メディア様の記事をご紹介しながらその内容を総括したいと思います。

Edgeが注目を浴びる背景とトレンド

直近1~ 2年の間にEdgeクラウド・ネットワークという概念が注目を浴びている、という話は前回のブログでも触れました。前回も引用した通り、調査会社のIT業界2021年見通し(プレディクション)を見ても各社さんこれあれそっちも、とEdgeコンピューティングやEdgeネットワークが2021年大賑わいです。なお、ここではこのEdgeネットワークの定義は、

「パブリッククラウドやデータセンタに一極集中していたアプリケーションの実行環境をユーザに近しい場所を含めた複数のインフラ拠点へ分散させ、演算処理を実施する」

と定義します。

Edgeが注目されている主な要因

当然ながらこのトレンドが加速しているのは理由があります。一言でいうと、「データ駆動型ビジネスの進展」が背景にあります。この傾向により、アプリ・システムの分散化が進み、それに対応するためにEdge基盤を活用したインフラの構築が必要となっているのです。もう少し具体的に見ていきましょう。

  • 今まで以上に高度化・複雑化するモダナイズされたアプリケーションはアーキテクチャが分散化されるケースも出て来る
  • システムの分散化の結果、データの流れも変わってくる。具体的には、通信網を流れるトラフィックが従来以上に上り・下り双方向に変わる
  • 通信網の技術も、4Gから更に広帯域な5G時代に差し掛かり、最新鋭のアプリケーションの接続・配信に対応できる

これらの条件が揃うことにより、ざっくり以下のような流れが実現できます。

  • デジタル化やDXにより、アジャイルな開発プロセス、スピード感をもった新規事業などの取り組みが始まる
  • 素早い開発、頻繁な戦略変更や技術検証の結果の方向転換などが起こるため、柔軟性を持った開発やシステム稼働、インフラ構築が最重要項目
  • 当然これらに最適なのはデータセンタ基盤よりもパブリッククラウドのような環境を活用したスモールスタート
  • 頻繁な変更やシステム・アプリのリリースに最適な分散型アーキテクチャを採用すると、ワークロードの配備も分散化が可能になる。一つのシステムが全て一箇所で稼働する必要性も低くなる。特定の処理をエンドポイントに近いロケーションで実行するのが理に適うのであれば、それも可能→Edgeが必要となる

また、以前のブログでもご紹介した通り、弊社の年次エンドユーザレポートであるアプリケーション戦略レポートの2021年度版においてもEdgeのユースケースを5種類挙げ、回答者の皆様からはIoTを中心とした高い関心度合いを示して頂いております。このように、調査会社、テクノロジの発展による情勢の変化、そしてそれに呼応するユーザ企業の期待値などが絡み合いながら、Edge基盤技術への期待と少しずつ、しかし確実に進む現場で技術調査や検証などが進み始めている、それが2021年現在のEdgeを取り巻く日本の現状と言えます。

具体的なユースケースを3つご紹介

上記は一般論ですが、分かりやすい例を挙げて具体的に詳細を見ていきたいと思います。

まずはIoT技術を活用した監視システムを挙げてみましょう。ご周知の通り、監視システムは監視カメラで記録した画像・動画データを監視システムに集約し、記録、解析などを行います。従来であれば重い画像や動画データを中央システムまで転送していたのを、例えば部分的な解析処理を監視カメラが配備されている拠点内で実行できるとどうなるでしょうか。画像や動画データ全てを集中処理する中央の拠点(大抵はデータセンタやパブリッククラウドと想定されますが)に転送するのに比べて、一定の処理を監視拠点で行い、解析結果のみ中央拠点に送り、送信するデータ量の削減、遅延などのリスク低減も期待できます。このように、従来の中央集権を前提とした処理と比較して活用できるケースは多様な場面で考えられるわけです。

上記のIoTユースケースはマイナビ様の記事でも触れられていますが、今回の戦略発表会では他にも2種類のユースケースをご紹介しました。

2つ目のユースケースは通信事業者向けMEC基盤向けとなります。Multi access Edge computingとは、ETSI(欧州電気通信標準化機構)が標準化すすめる通信事業者の基盤において、ユーザに近いところにエッジサーバーを設置し、そこでアプリケーションとの通信を行うことで、低遅延な通信を実現する技術)になります。多くの通信事業者様においては、MECをこれからは活用するに当たり、日本全国の各都道府県に最低ひとつ以上構築する算段となるようです。この数だけEdge基盤であるMECの拠点が構築されるということは、当然その多拠点に配備される局舎全てをどのように管理していくのか、MEC拠点同士の通信、セキュリティ、そして既存の自社インフラとどのように連携させていくのか、などが既に課題として挙がっております。管理性の分かりやすい例を挙げますと、フラットなネットワークであるKubernetesベースの世界では階層的な管理や制御(routing tableを分割する、といったことが出来ない)などの要件は規模が大きくなればなるほど深刻な課題となり得ます。ここでVolterraからご提供できるソリューションとして、

  • 単一のコントローラから多拠点のMECを包括管理でき、各MEC拠点で配布するプログラムもゼロタッチ・プロビジョニングで迅速に実現できる
  • コンテナ製品として稀有なルーティングスタックの実装により、キャリア網との連携が容易
  • アプリケーションのトラフィックのメトリックを収集しているため、適切なトラフィック処理判断が容易に実現

などが挙げられます。

最後のユースケースは迅速・簡単かつセキュアにマルチクラウド接続を構築するものになります。こちらはアスキー様の記事でもご紹介頂いております。従来のマルチクラウド環境の接続ソリューションにおいて問題になりやすかったのは、L3からL7まで一貫して接続性を提供するソリューションがなかなか無かった、またクラウドごとに異なるコンソールでのコンフィグやセキュリティ設定が煩雑、などの課題がありました。そこでVolterraをご活用頂くことで、L3のSRC/DST/Portから、L7のアプリレベルのAPIアクセスの可視化やセキュリティまで一貫して提供し、しかも設定はVoltConsoleから一元化することが可能となります。このマルチクラウド接続は本年のInterop TokyoのShowNet基盤でもご採用いただき、ネットワーク基盤のマルチクラウド接続を迅速に実現しました。しかも、ご存知の通りVolterraはSaaS接続であるため、通常ShowNetの構築作業は会場である千葉県幕張メッセでオンサイトで行うことが一般的ですが、弊社のVolterraソリューションは全てリモートで構築を全て完了することができました。新常態に適応できる、クラウドベースのソリューションならではの接続ソリューションの強みが発揮された好例と言えるかと思います。このInterop Tokyoの設定詳細はこちらのブログでも解説しておりますので是非御覧ください。

まとめと今後の展望

今回のブログでは現時点での弊社から見える市場情勢と代表的なユースケースをご紹介しました。しかし、当然弊社F5とVolterra社が一緒になったことにより、これからさらなるシナジーをユーザ企業様にご提供していくべく、現在社内でも様々な準備が進んでおります。まだお話できることは少ないのですが、ひとつだけ言えるのはお客様のアプリケーション基盤の可用性、安定性、セキュリティを一貫して提供するインフラ基盤の選択肢が更に広がり、データセンタ、パブリッククラウドなどに加え、Edge基盤においても弊社のもつ全てのアプリケーショ基盤技術がシームレスにご支援できる準備が整った、ということです。製品レベルの今後の計画などは、またご紹介できるタイミングで情報発信を継続していきたいと考えております。これからも皆様のアプリケーション基盤に貢献してまいります、F5をどうぞよろしくお願いします!