CUSTOMER STORY

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

メリット

個別設定、個別IPアドレス空間を利用可能なマルチテナント機能

公開APIであるiControlを使い他アプリケーションと容易に連携

世界で7万人が参加する開発者コミュニティDevCentral

課題

ユーザごとに個別設定を利用可能なロードバランシング環境

独自のセルフサービスポータルから設定変更可能

サービス開発に必要な情報の容易な入手

CTCがBIG-IP Local Traffic Managerを使い、カスタマポータルでビジネスの要求に即応可能なクラウドサービスを構築

伊藤忠テクノソリューションズのアンブレラ・ブランドであるcloudageのサービスラインアップに、新たに加わったのがcloudage CUVIC OnDemandだ。セルフサービスポータルを充実させ、ロードバランサオプションまでユーザ自身が設定でき、クラウド上にすぐに必要なリソースを確保できるサービスだ。そこで採用されているのは、F5ネットワークスのアプリケーション・デリバリ・コントローラ、BIG-IP LTMだ。外部アプリケーションとの連携を容易にするiControlと開発者コミュニティDevCentralの存在が決め手に。

カスタマポータル型クラウドの新サービスをスタート

伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)が新たにスタートしたcloudage CUVIC OnDemandは、ユーザ自身が設定を行なうカスタマポータル型クラウドサービスだ。伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 クラウドプラットフォーム事業グループの渡邊 泰祥氏はこのサービスについて次のように説明する。

「従来の仮想化ホスティングサービスはカスタマイズ性の高さなどを特長としていましたが、その分どうしても提供までに時間がかかっていました。cloudage CUVIC OnDemand は、標準化とセルフサービス化を進め、必要なリソースを必要なときにすぐに使えるようにしました。ユーザが直接設定を行なうカスタマポータル型サービスなので、セルフサービスポータルの操作性にはこだわっています」

顧客に提供していくだけではなく、自社で提供していくSaaSの基盤としての活用も期待されている。そうした背景もあり、安定したサービス基盤とするべくシステム構成にもこだわったと語るのは、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社ITビジネス企画推進室の杉田 修一郎氏だ。

「これまでに多くのITシステムを提供してきたCTCの技術とノウハウをつぎ込んでいます。サービスとして顧客に提供するものですから、機器の選択も慎重に行ないました。月額8800円からという低価格なサービスですが、価格競争力のためだけに廉価な機器を選んではいません。十分商用に耐えられる環境を提供すべく、社内での実績と信頼性を重視してベストオブブリードで構成しています」

機能と信頼性に妥協せず選択した結果、サーバ機器はHP 社、仮想化基盤はVMware、ストレージにはNetApp社の製品を使っている。そしてロードバランサオプションとして提供されるのは、F5ネットワークスのBIGーIP LTMだ。

公開API、開発コミュニティが開発期間短縮の大きな力に

必要なときに必要なリソースを確保するクラウド環境では、従来のサーバ環境に比べてリソース規模の変化は頻繁に発生する。そのため、適切なコンテンツ配信にはロードバランシング機能は欠かせない。その製品選定要件について、渡邉氏は次のように語る。

「クラウドサービスで使うので、マルチテナントに対応しているのは前提条件です。さらに、カスタマポータル型サービスに採用するためにはもうひとつ大きな要件がありました。それは、セルフサービスポータルから必要な項目だけを操作でき、ネットワーク機器の設定画面を触らせずに設定変更できる仕組みです」

そこで目に留まったのが、BIGーIP LTMが持つ公開API、iControl だ。iControl を使えば、他のアプリケーションを容易に連携できる。他社製品では、同様の機能を持つ製品は見つからなかったという。

「オープンソースのものを使い、ベースOS上で連携機能を開発することも考えましたが、コストや開発期間を考えると得策とは思えませんでした。実際、iControl を使ったことで開発期間はかなり短く抑えられました」

iControl の重要性について杉田氏はそう語り、開発時に特に大きな効果を感じたポイントとしてエラー処理の容易さをあげた。独自に作り込む場合は、設定変更が成功したかどうかをチェックし、エラーだった場合の処理を作り込まなければならない。こうした処理は個別に作り込む必要があり、デバッグにも時間を擁するポイントだ。一方iControl はAPIとして動作するので、返り値から設定変更が成功したかどうかすぐに判別できる。さらに杉田氏は、開発に必要な情報が多く公開されている点にも触れた。「BIGーIP LTMの場合はAPI の仕様が公開されている上に、DevCentral などの開発コミュニティで活発な情報交換が行なわれているのも魅力でした」

DevCentral とは世界中で7万人以上、日本人会員だけでも5千人以上の会員を擁するF5ネットワークスの開発者コミュニティだ。iRulesやiControl のサンプルコードなども提供されており、実際の開発に役立つ情報が詰め込まれている。これらのサンプルコードをカスタマイズすることで構文や作法を理解できたことも、開発期間短縮に大きな効果を上げたと杉田氏は指摘している。

より簡単、柔軟で高機能なサービスへと進化を続ける

cloudage CUVIC OnDemand のサービススタートは2011年2月。セルフサービスポータル画面は、すべてCTCが自社開発したものだ。サービス全体の設定画面でロードバランサオプションを選択すると、BIG-IP LTMの設定画面が現れる。この時点で既に、ユーザごとのVLAN設定やIPアドレスなどの基本情報はプリセットされており、サーバ用途を選択するだけで、CTCのノウハウを十分に詰め込んだBIG-IP LTMの設定がテンプレートから読み込まれる仕組みだ。ユーザは細かい設定を気にする必要はなく、必要なときに必要な機能を持つ配信環境構築を手に入れられる。

「サービスはスタートしましたが、これからまだまだ機能を強化していくつもりです。監視機能の強化や、URLでの負荷分散を取り入れ、プライベートクラウドとのハイブリッド化も実現していきます。課金体系を含めて、ユーザの要望によりフレキシブルに応えられるサービスを目指します」

渡邉氏は今後の展開についてそのように語ってくれた。開発から運用までクラウドについて高い技術と豊富なノウハウを持つCTC。BIG-IP LTMの持つ機能を活用してより使いやすいクラウドサービスを作り上げていくことだろう。