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医療法人 明仁会 かないわ病院

1956年4月、医師会員と財界の有志を中心に、精神病床100床を有する精神科病院「金石神経サナトリウム」として発足。2002年8月の病院改築によって精神病床を189床に増設し、「かないわ病院」と改称した。金沢北西部における地域精神医療のニーズに対応する一方で、石川県精神保健福祉協会や金沢市の福祉健康センター事業、金沢市こども福祉課事業、石川県こころの健康センター事業等にも協力。地域の小規模授産施設等との連携も積極的に行い、精神医療福祉と精神障がい者の自立促進に貢献し続けている。

メリット

ユーザIDとパスワードに加え、クライアント証明書も併用することで、高いセキュリティが確保できた。

BIG-IP APMのPCoIPプロキシ機能によって、十分なデータ転送速度を実現できた。

課題

院外から安全に仮想デスクトップにアクセスできるセキュリティ

動画再生も可能な高いパフォーマンスの確保

院内の仮想デスクトップに院外からアクセスできる環境を整備、患者に対する訪問支援を支える基盤に

1956年に設立され、石川県金沢市北西部地域の精神医療のニーズに応え続けている医療法人 明仁会 かないわ病院。ここでは限られた人員できめ細かいケアを行うため、医療や経営に関する情報の電子化や、仮想デスクトップによる情報アクセス等のIT化が進められている。その一環として構築されたのが、BIG-IP APMによる院外からの仮想デスクトップへのアクセス環境だ。クライアント証明書による安全なアクセスと、PCoIPによる高いデータ転送効率等が高く評価されている。

BIG-IP APMで十分なセキュリティと速度を確保した院外アクセスが可能になりました。これによって訪問支援を推進していきます

従来の課題

メンタルヘルスの重要性が強く指摘されている現代社会において、重要性がますます高まっている精神科医療。しかしその現場の人的リソースは必ずしも潤沢ではなく、限られた人員で患者に対応しなければならないケースが少なくない。この課題をITの積極活用で解決しつつあるのが、医療法人 明仁会 かないわ病院だ。

同院は石川県金沢市北西部地域の精神医療のニーズに対応するため、1956年に設立された精神科病院。189の病床と140人の職員を有し、医師や看護師のみならず多職種の専門集団(コメディカル)が、患者のケアに携わっている。当然ながらケアに関わるスタッフは、綿密に情報交換を行わなければならない。関係する全てのスタッフが患者をきちんと理解することが、患者との信頼関係を生み出し、より良い治療を可能にするからだ。

かないわ病院はこの目標を実現するため、2013年4月に専門部署を設け、院内IT化への取り組みを本格化。医療や経営に関するデータを全てサーバに保存すると共に、VMware Horizon Viewによるデスクトップ仮想化も実現、院内のどこででも必要な情報にアクセスできる体制を整備した。

「最近では患者様の高齢化や、厚生労働省による『精神障がい者アウトリーチ(訪問支援)推進』等もあり、在宅医療へのニーズも高まっています」このように語るのは、かないわ病院 IT管理課 課長の河原 直人氏だ。そこで同院ではIT化の次のステップとして、訪問看護を支援する環境整備にも着手。ここで重要な課題になったのが、仮想デスクトップに対する院外からの安全なアクセスと、動画再生にも対応できるパフォーマンスの実現だった。「現在の精神科の医療情報はテキストベースのものが多いのですが、将来は動画によって細かいニュアンスを伝えたいという要望も増えてくるはずです。これにも問題なく対応できることが必要です」

ソリューション

これらの要件を満たすために採用されたのが、BIG-IP Access Policy Manager(APM)である。採用の理由は3つあったと河原氏は説明する。

第1は、ユーザIDとパスワードだけではなく、クライアント証明書も併用することで、高いセキュリティを確保できること。これなら仮にパスワードが漏洩しても、クライアント証明書が格納された端末からしかログインできないため、不正アクセスを防止しやすい。

第2は、PCoIP(PC over IP)に対応しており、VMware Viewの画面を高い効率で転送できることだ。「導入前に実機検証を行いましたが、動画も問題なく再生できることを確認しました」(河原氏)。

第3は、同時接続数ライセンスであるため、同時接続数が一定以内であれば、対象ユーザ数が増えてもライセンスを追加する必要がないことだ。当初は院外からの接続は一部の管理職のみに限定することも想定していたが、BIG-IPならその必要はないと言う。

実際に導入したのは、BIG-IPの仮想アプライアンスであるBIG-IP Virtual Edition(VE)。これによって2015年12月からパイロット運用を開始している。今後関連部署の調整を行った上で、2016年4月には本格活用を開始する予定になっている。

メリット

■  スタッフ間の情報共有のタイムラグを解消

BIG-IP APMによる院外アクセスの効果としてまず期待されているのが、スタッフ間の情報共有がさらに加速されることである。情報共有を推進するためグループウェアの導入も進められているが、院内からだけのアクセスでは、その効果は限定的だと言える。医療スタッフはシフト勤務によって24時間のケアを行っており、全スタッフが同時に院内にいることはありえないからだ。「スタッフの労働環境にはもちろん配慮しなければなりませんが、院外からのアクセスが可能になれば、情報伝達のタイムラグも短縮でき、業務効率もさらに高まると考えています」

■  地域連携を推進する基盤としても期待

第2に期待されているのが、地域の関連施設との連携強化だ。他の医院や調剤薬局等へと情報共有の輪を広げていくことで、地域全体でのきめ細かいサポートも容易になるのではないかと言う。「公的な地域連携ネットもすでにありますが、主に医師による利用を前提にしており、コメディカルの連携はあまり進んでいません。また小規模な施設では維持費等のハードルが高いようです。BIG-IP APMならブラウザと電子証明書があればアクセス可能なので、患者様の同意の上でなら手軽に参加していただけるというメリットがあります」

■  将来遠隔診療が可能になればさらに可能性が拡大

そして第3に期待されているのが、将来は遠隔診療の基盤としても活用できるのではないか、ということである。遠隔診療に関してはまだ様々な制約があるが、2015年11月に厚生労働省が遠隔診療の適用範囲に関して新たな通達を出す等、状況が変わりつつある。「当然ながら厚生労働省の方針に従い、慎重に取り組みを進める必要がありますが、遠隔診療が解禁されれば、アウトリーチの可能性はさらに拡大するはずです」