国立大学法人 大阪大学

キャンパスクラウドの再構築に BIG-IP を採用  ADC の筐体にファイアウォール機能を 統合することでトータルコストの削減とラック収容効率の向上に貢献

国立大学法人大阪大学サイバーメディアセンターは、新設したITコア棟に大阪大学のキャンパスクラウドを集約するのを機に 、機能が重複し 、 システム構成がアンバランスだった従来のADCとファイアウォールを刷新し、BIG-IP LTMにBIG-IP AFMの機能 を統合したプラットフォーム集約型の構成を採用。 他社の分離型の提案よりもコスト削 減に貢献し、同一筐体で ADC とファイアウォールの両方を管理することによりオペレー ション負荷を低減するとともに、 ラックの占有容積を縮小して高集積で利用効率の高 い HPC (High-Performance Computing)システムを実現した。

従来の課題

大阪大学は2000年4月に、大規模計算機センターや情報処理教育センターなど既存の施設を再編し「サイバーメディアセンター」を設立しました。 教育・研究機関と連携して機能する大学全体のセンターを創ることをめざしています。 また、文部科学省から「学際的大規模情報基盤共同利用・研究拠点」として認定を受けています。 北海道大学、東北大学、東京大学、東京工業大学、名古屋大学、京都大学、九州大学と連携し、ネットワークで結ばれたスーパーコンピュータの共同利用・研究の拠点の1つとして役割を果たしています。

「スーパーコンピューターは大量の電力を消費するため、電気料金の高騰が続く中で効率良く運用することが大きな課題です」と、大阪大学情報基盤機構/サイバーメディアセンターの柏崎令樹助教は言います。 コスト削減が急務となり、2009年にCPUやメモリなどの資源の電力効率を高める取り組みを始めました。 そのために、スーパーコンピューター以外の大学内システムをできる限り仮想化しようとしました。 その結果、「大阪大学キャンパスクラウド」(以下、「阪大クラウド」)として知られる分散システムの統合を実現しました。 しかし、柏崎助教は阪大クラウドがいくつかの大きな課題に直面したことを明かします。

「2009年には、仮想化インフラをどの規模で構築すべきか具体的な見積もりがなく、明確な見通しなしに構築方針を決定しました。 その結果、一部の機能が重複し、システム設計にバランスや一貫性が欠けてしまいました。 例えば、ADC(アプリケーション デリバリー コントローラー)、ファイアウォール、ルーターでは異なるベンダーの最上位モデルを採用しました。 これにより、必要なリソースと実際の提供リソースに大きなミスマッチが生じ、各モデルの管理が管理者の負担を大きく増やしました。」

 

解決

2014年9月に大阪大学は、サイバーメディアセンターの拠点となる「ITコアビル」を建設し、教育界の注目を集めました。 ITコアビルは、阪大クラウドを含むすべての情報機器を集中管理するデータセンターとして機能し、ベクトル型スーパーコンピュータやPCクラスターといった強力な計算資源を学内外の皆さんに提供しています。

「ITコアビルの完成を機に、機器リースの期限を迎えた第1世代のHandai Cloudを再構築することにしました。 システム設計の非効率を解消し、新技術を取り入れて第2世代のHandai Cloudを創り上げることを目標に据えました」と柏崎玲樹助教は語ります。

2014年の交換作業では、過去5年間運用してきた仮想化インフラの情報を活用して、必要な容量を正確に見積もることができました。 その結果、100以上のシステムを稼働させているHandai Cloudの負荷分散を分析しましたが、実際には大きなトラフィックは処理していないことが判明しました。 加えて、厳しいSLA(サービスレベル契約)でダウンタイムを許さない条件でしたが、定量的な根拠はなく、ADC(アプリケーション デリバリー コントローラ)やファイアウォールに過剰なスペックは必要ないと結論づけました。

さらに、ITコアビルの完成に合わせて、既存の2つの情報システムをキャンパスクラウドに統合しました。 しかし、それにより2Uファイアウォールが2台と2U ADCが1台必要になり、運用面でスペースが無駄になり、電力も余計に消費して非効率が生まれました。

柏崎氏が注目したのは、システムインテグレーターが提案したF5ネットワークスのADCアプライアンス「BIG-IP Local Traffic Manager(BIG-IP LTM)」と高性能ファイアウォール「BIG-IP Advanced Firewall Manager(BIG-IP AFM)」を一体化した単一プラットフォームでした。

「BIG-IP LTM/AFMは、最小限の構成から大規模なエンタープライズ構成まで、リーズナブルなコストで柔軟にスケールできる点が大きな強みでした。 さらに、ADCとファイアウォールを同じアプライアンスで一元管理できるため、限られた技術スタッフでも無理なくシステム運用が可能になりました」と柏崎氏は語っています。

 

結果

B大阪大学では、ADCとファイアウォールの更 新にあたり、基本的条件を満たした複数製品の 機能とパフォーマンスをマトリックス化して最終 的に3機種ほどに絞り込んだ。 分離提案した他社 よりもBIG-IP LTM / AFMによる統合提案は トータルコストが最も安く、かつグローバル市場での実績も十分にあることが認められた。 また、世界市場での実績の確かさも高く評価しています。 その上で2014年9月に入札が行われた結果、BIG-IP LTM / AFMの採用が正式に決定した。。

■ 高集積で利用効率の高いHPCを実現

「BIG-IP LTM/AFM は、他社が提案する別々のソリューションと比べてコスト面で非常に競争力があると実感しています」と柏崎氏は語ります。 さらに、BIG-IP LTM/AFM は 2U のアプライアンスに ADC とファイアウォールの両方の機能を搭載しています。 L2/L3 スイッチを加えても、セットアップ全体が2ラックに収まり、高密度かつ効率的なHPC活用を実現し、管理者の構成作業負荷を大幅に軽減しました。 この点が非常に重要な要素でした。」

■  阪大クラウドはパブリッククラウド移行が基本方針

柏崎氏はこれらの利点を認めつつも、大阪大学の情報基盤機構がオンプレミスの仮想化インフラを拡充するのではなく、可能な限りパブリッククラウドへ移行するという明確な方針を持っていると説明します。 「それでも、Handai Cloudの利用が増えてトラフィックが上昇し、ADCにさらに高いスループットが求められるようになった場合は、BIG-IP LTMのラインアップにより高性能なモデルが用意されています。 必要に応じてF5 Networksのソリューションを引き続き活用できる安心感がそこにあります」と柏崎氏は述べます。

BIG-IP LTM の性能をライセンスの追加だけで簡単に向上できる点が、F5 Networks の ADC ソリューションが世界中で高く評価される理由の一つです。 柏崎氏もこの柔軟性を大きな強みと感じています。

■ 最後のピースでパズルを完成したBIG-IP

このプロジェクトを振り返り、柏崎氏はこう語っています。 「BIG-IPは大阪大学が求めていた最後のパズルのピースにぴったりと合いました。 限られた予算の中で、必要な機能すべてを備え、システムを完成させる決定的な役割を果たしてくれました。」 彼は、自分たちの要件に最適な製品を選べたのは運命的な出会いだったと断言しています。

BIG-IPを用いて阪大クラウドの再構築を支援したF5ネットワークスジャパンは、この連携を大切にし、今後も強力なサポート体制と多様で柔軟な製品ラインアップで大阪大学やサイバーメディアセンターの革新を後押しします。

 

大阪大学

緒方洪庵が1838年に開学した蘭学塾 「適塾」を原点とし、 適塾の流れを汲む 大阪医学校や大阪医科大学などを経 て、 1931年に日本で 8 番目の帝国大学 として医学部と理学部からなる大阪帝 国大学が設立。その後、 1949年に大 阪大学となった。 2004年の国立大学 法人化、2007年の大阪外国語大学と の統合を経て、国立大学として学部学 生数トップを誇る日本屈指の総合大学 に成長した。

メリット
  • 限りある予算の中で必要な機能のADCとファイアウォールを選択
  • ADCとファイアウォールを同一筐体で運用し管理者の負担が低減

課題
  • 2つのシステム統合でADCとファイアウォールの機能が重複
  • 異なる機種ごとのオペレーションが管理者の大きな負担に

製品