世界的な電子機器メーカーがF5でAIデータ配信を拡張
高スループットのデータパスで、AIと分析のパイプラインを円滑に稼働
世界的な家電メーカーでは、S3オブジェクトストレージへの需要が急増し、ストレージネットワークだけでは対応しきれなくなりました。F5 VELOSとBIG-IPは、AIおよび分析パイプラインの継続的な稼働を支え、より迅速なインサイトの獲得、大規模なデータ転送の保護、将来の拡張に対応できる余力の確保に貢献しました。
ビジネス上の課題
世界最大級の家電メーカーである同社は、世界各地の市場で製品を提供し、顧客にサービスを提供しています。市場で稼働する数百万台の自社デバイスからテレメトリを受信し、そのデータをAIモデルのトレーニングに活用しています。同社のIT部門はセルフサービス型プライベートクラウドを運用し、自社データセンター内で社内チームにストレージ、コンピューティング、ネットワーク、セキュリティをオンデマンドで提供しています。S3互換オブジェクトストレージは基盤サービスの1つであり、全社のさまざまなチームが利用しています。
AI時代のクラウドの経済性を見直す多くの企業と同様に、同社は大量のデータをパブリッククラウドからオンプレミス環境へ戻すことを決定しました。そのデータの最大の発生源は、デバイスからストリーミングされるテレメトリデータと診断データでした。これらのデータを社内環境に移行したことで、同社はデータをより適切に管理できるようになり、コスト削減への明確な道筋も得られました。一方で、インフラに対する需要のあり方も変化しました。
“新たなS3およびAI機能を備えたF5ソリューションは、Dell ObjectScaleとの親和性が高く、必要なパフォーマンスとSSLスループットに加え、将来を見据えたプラットフォームを提供しました。 ”
データがオンプレミス環境に移行されると、社内チームはすぐにその活用に乗り出しました。新たな部門がデータを直接照会し始め、新しいデータレイクやデータウェアハウスが次々と構築されました。AIやアナリティクスの新たなユースケースも、ほぼ毎週のように生まれました。S3ストレージの需要は、同環境内の他のあらゆるアプリケーションを桁違いに上回る規模に拡大しましたが、同社のプライベートクラウドは、そのデータ量と処理速度を想定して構築されていませんでした。その結果、パイプラインが滞留し、本来なら数分で完了するはずの分析やモデルのトレーニングジョブに数時間を要するようになりました。データ需要によってネットワーク層とストレージ層にボトルネックが生じ、分析やトレーニングジョブの処理速度は著しく低下しました。同社には、拡張性を備えたデータパスが必要でした。
ソリューション
同社は、負荷に対応できる耐障害性と高スループットを備えたデータパスを構築するため、Dell ObjectScale S3ストレージの前段にF5ハードウェアを導入することを選択しました。F5ソリューションとDell ObjectScaleは、高いパフォーマンス、運用を中断せずに拡張できる能力、ハイブリッド環境への強力な対応という共通の設計優先事項を備えています。さらにF5製品は、業界をリードするスループット、セキュアな転送を実現する堅牢なSSL/TLS暗号化に加え、F5 BIG-IPソフトウェアバージョン21で導入されたS3プロファイルなど、AIワークロード向けに構築された新しいS3固有の機能も提供しました。
チームは、高性能BX520ブレードを搭載し、F5 BIG-IP Local Traffic Manager(LTM)を実行するF5 VELOSを導入しました。これにより、同社のS3トラフィック専用のハードウェア層が構築され、毎秒数ギガビット規模の需要に対応し、AIワークロードによる急激な負荷増大を吸収できるようになりました。ストレージ需要の増加に応じて、稼働中の運用を中断することなく、ブレードを追加するだけでアーキテクチャを拡張できます。
“ワークロードが増大し続けても、このプラットフォームは今後何年にもわたり効率的に拡張できます。”
BIG-IP LTMは、単にトラフィックを転送するだけではありません。S3オブジェクトリクエストをストレージノード間でインテリジェントに分散し、高いスループットとサービスの可用性を維持します。ノードにかかる負荷の初期兆候を監視し、ホットスポットによってパイプラインが停止する前に、取り込みトラフィックの負荷を再分散します。また、ストレージエンドポイントを抽象化するため、基盤となるストレージが拡張または変更されても、AIおよび分析アプリケーションの接続を維持できます。その結果、S3環境全体のレジリエンスと予測可能性を高めるデリバリーレイヤーを実現します。
他の選択肢を評価した結果、同社は、新しいS3およびAI機能を備えたF5ソリューションがDell ObjectScaleとの親和性に優れ、組織の長期的な成長を支えるために必要なパフォーマンス、SSLスループット、将来を見据えたプラットフォームを提供できると判断しました。
成果
ストレージの前段に専用のF5データパスを配置することで、同社は業務を遅らせていたボトルネックを解消しました。以前は数時間かかっていたジョブも、今ではパイプラインをはるかに速く処理されます。各チームは必要なときに回答を得られるようになり、ビジネスも需要に対応しながら、より迅速に問いに答え、意思決定を下せるようになりました。
より多くのテレメトリを、より優れたAIへ
F5ソリューションにより、同社はAIのトレーニング、推論、分析に使用するテレメトリを、約30~45日という従来よりはるかに長い期間にわたって保持し、処理できるようになります。F5ソリューションはデータの継続的な流れを維持し、より多様かつ大量のデータの収集、エンリッチメント、分析を可能にすることで、より優れたモデルのトレーニングと、実用的なインサイトの創出を支援します。同社はこうしたインサイトを活用して、デバイスの障害を発生前に予測し、運用効率を高め、出荷と物流を最適化しています。
暗号化データを大規模かつセキュアに転送
転送中のデータ保護は必須要件でした。F5ソリューションは、導入環境全体で高性能なSSL/TLS暗号化を実現し、3,400 Gbpsを超えるSSLスループットによって、増加する暗号化トラフィックに対応します。機密性の高いテレメトリーデータを、パフォーマンスを低下させることなく保護できます。
ビジネスの成長に対応できるプラットフォームを構築
VELOSアーキテクチャは、再設計やダウンタイムを伴わずに拡張できるため、新たなAIやアナリティクスのユースケースの開発に合わせて、容量を継続的に追加できます。データパスが増大する需要に対応できるという確信を持って、データレイクの構築を進められます。
AIデータ配信のために構築されたテクノロジーアライアンスを活用
この導入事例は、F5とDellのテクノロジーアライアンスパートナーシップが実現できることを示しています。BIG-IP LTMはDell ObjectScaleと連携し、AI向けにレジリエントで高スループットなS3データ配信を提供します。両社は、このワークロードに特化した設計を継続しています。最近の取り組みには、BIG-IPソフトウェアv. 21のS3プロファイルに加え、実証済みの設計に基づいて他の組織が独自のAIデータパイプラインを拡張するのに役立つ共同リファレンスアーキテクチャや市場展開資料が含まれます。
この家電メーカーにとって、両社の関係は今後も発展させていくための基盤です。ワークロードが増大し続けても、プラットフォームは長期にわたり効率的に拡張できます。
他の企業にとっての教訓は明快です。AI需要の拡大に伴ってデータ量と処理速度が増す中、専用のアプリケーションデリバリ層を導入することで、増大する負荷への対応に苦慮するストレージを、拡張可能なパイプラインへと変えることができます。
メリット
- AIとアナリティクスの処理を遅らせるS3のボトルネックを解消
- モデルのトレーニングに使用するテレメトリをより多く処理
- 転送中の暗号化データをマルチGbps規模で保護
- ダウンタイムなしで拡張し、新たなAIユースケースに対応
課題
- 急増するS3オブジェクトストレージの需要
- 分析とモデルのトレーニングを遅らせるボトルネック
- 大規模環境での高スループットなデータ配信のセキュリティ確保