BIG-IPをScaleNでスケールアウトし、これをルートドメイン単位で仮想的に分離することで、サービスのオンデマンド化が可能になった。
高いパフォーマンスを発揮するBIG-IPの採用で、トラフィックの大きな顧客も収容しやすくなった。
BIG-IPはSNIやHTTP/2等にもいち早く対応しているため、新たな顧客ニーズにもすぐに対応できるようになった。
オンプレミスの顧客システムを移行・収容する際に、ネットワーク アプライアンスの設置コストがハードルになるケースが少なくなかった。
この問題を解決するには、ネットワーク機能を仮想化し、必要なときだけ利用できるサービス メニューが求められた。
特に充実したWAF機能を高い運用性で提供できることが、今後の顧客ニーズに対応するには不可欠だと判断された。
クラウドやハウジング、データ分析プラットフォーム等、データセンタを基盤に多様なサービスを提供するIDCフロンティア。ここでは各種ネットワーク機能を仮想化して提供するため、BIG-IPが導入されている。複数のBIG-IPを組み合わせScaleNでスケールアウトした上で、仮想化によってマルチテナントに対応させることで、サービスの月額利用や提供時間短縮を実現。これによって顧客システムの移行・収容をさらに容易にし、顧客数や収容システム数の増大に貢献している。
このネットワーク サービスが用意されたことで、当社データセンタに移行可能になったお客様は少なくありません。BIG-IPの導入はビジネスの成長にも貢献しています
これまで顧客がオンプレミスで運用してきたシステムを、いかに自分たちのサービスへと移行してもらうか。クラウドやホスティング、ハウジング等のデータセンタ事業を手掛ける事業者にとって、これは重要なビジネス課題だと言える。その取り組みの一環として、仮想化されたネットワーク機能(IDCフロンティア ネットワークサービス)をサービスメニューに追加したのが、IDCフロンティアである。
「これまでにもオンプレミスから当社のデータセンタ・クラウド環境にサーバを移行したいが、社内で使用しているネットワーク アプライアンスと同じものをハウジングするとコストがかかるため、移行が難しいというケースは少なくありませんでした」と語るのは、株式会社IDCフロンティア カスタマーサービス本部 プラットフォームエンジニアリング部でソリューションアーキテクトを務める三浦 尊氏。また他のデータセンタから同社のクラウドに移行する際にも、同様の問題が発生することがあると言う。「この問題を解決できればより多くのお客様に当社のインフラを使用していただけます。そのスタート地点に立つことがまずは重要でした」
IDCフロンティア ネットワークサービスの提供に向けた取り組みを開始したのは2013年4月。これまでの顧客の要望や運用上の条件から、満たすべき必須条件を明確化した上で、各社のネットワーク アプライアンス製品の比較検討が行われた。条件としては、マルチテナント対応であること、SSLアクセラレーションが可能なこと、スクリプト言語を備えていること、ファイアウォール・ロードバランサ・WAFの機能を提供できること、IPv6に対応していること、APIを公開していること等が挙げられていたと三浦氏は説明する。
この段階で2社の製品へと絞り込み、2013年8月には実機による負荷試験を実施。その結果選ばれたのが、BIG-IPだったのである。
BIG-IPが採用されたのは、当然ながら上記条件を全てクリアしていたからだが、特に重視されたポイントが3点あったと言う。
第1はWAF機能が充実しており、処理能力も十分に高いことだ。「WAFは使い方が難しい機能ではありますが、セキュリティ確保のために今後重要な機能になるはずです」と語るのは、株式会社IDCフロンティア カスタマーサービス本部 オペレーションサービス部の夢川 貴之氏。BIG-IPのWAFであれば、より多くの顧客の要望に対応できる機能を、高い運用性で提供できると言う。
第2は利用実績の高さ。特にスクリプト言語の利用実績が重視されたと夢川氏は説明する。「ユーザが多ければ、より多くの情報が入手できます。異なるスクリプト言語への移行は大変な作業になるため、最初にどの言語を選ぶのかはとても重要です」
そして第3がScaleNによるスケールアウトが可能なことだ。これは複数台のBIG-IPを仮想的に1台のデバイスとして稼働させる機能であり、運用性向上に大きな貢献を果たすと判断された。
2014年3月にはBIG-IPの採用を決定し、同年7月から主要なデータセンタへと導入。「IDCフロンティア ネットワークサービス」という名称で、各種ネットワーク機能の提供を開始した。現在では東西3拠点で同サービスを展開。これらをルートドメイン単位で仮想的に分離し、マルチテナントを実現している。
機器選定で特に重視したのはWAFです。これは使い方が難しい機能ですが、BIG-IPなら充実した機能を高い運用性で提供できます
ScaleNでBIG-IPをスケールアウトした上でマルチテナント化することで、テナント毎にアプライアンスをハウジングする方法に比べ、料金もリーズナブルとなった。これによってオンプレミスからの移行も容易になっている。「このサービスメニューが用意されたことで、移行可能になったお客様も少なくありません」と三浦氏。顧客数や収容システムの増大といった、ビジネスの成長にも貢献していると言う。
またサービス提供に必要な期間も大幅に短縮された。「アプライアンスを新たに設置する場合には、調達プロセスも含め1~2か月かかるのが一般的です。しかしこのサービスでは、お申し込みいただいた日から標準5営業日(最短1~2営業日)で機能提供を開始できます」
トラフィック増大にも対応しやすくなった。「今までのアプライアンスマネージメント型のサービスですと、トラフィックの急激な増大に対応するためには、上位の機種にリプレースするという対応が必要でした。」と夢川氏。そのためトラフィックの増加予測のしにくいシステムはアプライアンスの選定が難しかったと振り返る。「しかし今ではサービスメニューの変更のみで、インフラ環境の構成変更なくトラフィックの増大に対応できます」
今後はセルフサービス ポータルも構築し、サービスの提供スピードをさらに高めていく計画だ。すでに設定変更用のポータルを、iControl等を活用して開発中。将来はこのポータルを、クラウド サービス全体のポータルに統合することも視野に入れていると言う。
また提供機能も顧客の要望に応じて拡大していく計画だ。「SNI(Server Name Indication)やSPDY、HTTP/2等にいち早く対応しているのもBIG-IPのメリットです。お客様の新たなご要望にも、BIG-IPならすぐに対応できます」(三浦氏)