Webアプリケーションセキュリティの進化:AIを活用したWAFとランタイム脅威検知がサイバー防御を変革

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生成AIと機械学習ツールによって、組織はイノベーションの推進、アプリケーションの拡張、運用の自動化が可能になる一方、現代の脅威アクターもまったく同じテクノロジーを活用し、攻撃の高速化、変異、自動化を進めています。

進化する脅威に対応するためにセキュリティアーキテクチャをどのように進化させる必要があるのかを探るため、F5は「AI搭載WAFによる脅威検知の向上と誤検知の削減」と題したウェビナーを開催しました。

このプレゼンテーションでは、従来のWeb Application Firewall(WAF)が抱える構造的な課題、ランタイムでの脅威検知が運用上不可欠である理由、そして革新的なAI駆動型機能をはじめとする次世代WAFを支える技術的ブレークスルーについて詳しく解説しました。

以下に、このセッションで共有された主要なテーマ、実環境のデータ、技術革新、実践的なポイントを包括的にまとめます。

現代のエンタープライズ環境:セキュリティを再構築する3つの力

F5はセッションの冒頭で、あらゆる業種のエンタープライズITチームとSecOpsチームの業務のあり方を現在大きく変えつつある、3つのマクロな要因について説明しました。

  • ハイブリッドマルチクラウド環境:現代の企業は、多様なクラウド環境とオンプレミス環境にわたる柔軟性を確保できるようシステムを構築しています。規制上求められるレジリエンスと最新のアプリケーションアーキテクチャを背景に、ハイブリッドマルチクラウドは新たな戦略から企業の標準へと移行しています。
  • AIアプリケーション導入の加速:独自のAIモデルを社内で構築する場合も、サードパーティのAIサービスを統合する場合も、組織はインテリジェンスをビジネスプロセスに直接組み込んでいます。ウェビナー参加者へのアンケートでは、参加企業の60%以上が現在、主要なビジネスワークフローでAIを積極的に活用していることが明らかになりました。
  • AI駆動型およびエージェント型の脅威環境:攻撃者も同等、あるいはそれ以上の切迫感を持ってAIを導入しています。現在では、LLM、自動化されたエージェント型ツール、高度なスクリプトを利用して脆弱性をスキャンし、多段階のエクスプロイトを作成するとともに、マシン速度で攻撃を大規模化しています。

脆弱性の発見から悪用までの時間が短縮

このような環境の変化により、脅威活動が急増しています。最新のセキュリティデータによると、Web攻撃は前年比で77%増加し、悪意のあるボットトラフィックは150%増加しています。

根本的な問題は、保護を実現するまでの時間です。従来、セキュリティチームには、公開された共通脆弱性識別子(CVE)が広範に悪用されるまでに、パッチを適用するための数日、数週間、場合によっては数か月の猶予がありました。現在では、自動スキャンとAIを活用したエクスプロイト生成により、その猶予は数時間にまで短縮されています。ゼロデイエクスプロイトが絶えず出現する時代に、従来のパッチ管理ワークフローでは到底対応できません。

従来型WAFの構造的な限界

Chris Malladi氏が説明したように、Webアプリケーションファイアウォールは20年以上にわたり、最前線の重要な防御手段として機能してきました。しかし、従来のWAFアーキテクチャでは、現代の運用要件への対応が難しくなっています。ウェビナー中に実施した参加者へのリアルタイム投票から、SecOpsチームが次の3つの継続的な課題に直面していることが確認されました。

  1. 導入とチューニングの複雑さ:従来型WAFは、静的なシグネチャルールと正規表現(regex)に大きく依存しています。アプリケーション固有のロジックに合わせてこれらのポリシーを微調整するには、多大な手作業が必要です。そのため、本番環境のアプリケーションに不具合が生じることへの懸念から、多くの企業向けWAFが数か月にわたって「監視モード」のまま運用されています。
  2. 誤検知による疲弊:静的ルールを過度に厳しく設定すると、正当なユーザートラフィックまでブロックされます。誤検知率が高いと、SecOpsアナリストは、不要なアラートの確認、例外リストの管理、レガシーポリシーの更新を延々と繰り返すことになります。
  3. 増大する運用コスト:従来型WAFの保有に伴う真のコストは、初期ライセンスではなく、継続的な運用負担にあります。これには、絶え間ない手作業での例外管理、プロフェッショナルサービスの利用、アプリケーション導入の遅延が含まれます。

従来型WAFは主に既知の脅威を想定して設計されているため、AIツールによってペイロードがリアルタイムでエンコード、難読化、または動的に変更される適応型攻撃への対応が困難です。

AI搭載WAF:技術アーキテクチャと成果

厳格なセキュリティ適用と運用の容易さのトレードオフを解消するため、F5は根本から再設計した防御エンジン「AI-powered WAF」を導入しました。

Debrup Ghoshは、進化を続けるこのアーキテクチャの動作について、技術的な仕組みを詳しく解説しました。このエンジンは、静的なパターンマッチングだけに依存するのではなく、トラフィックパスに多層型のリスクインテリジェンスパイプラインを直接実装しています。

  • シグネチャとインジケーターの照合:ベースラインフィルタリングにより、既知の攻撃シグネチャと悪意のあるインジケーターを迅速に特定します。
  • マイクロ秒単位で動作するインラインニューラルネットワーク:専用の機械学習モデルが、HTTPトラフィックの挙動、ヘッダーパラメーター、ボディのペイロードをリアルタイムで検査します。特に重要なのは、このニューラルネットワークが標準CPU上だけで、ほぼゼロのレイテンシで動作するため、高コストなGPUインフラストラクチャが不要になる点です。
  • 動的リスクスコアリング:エンジンがシグナルデータを統合し、コンテキストと結果に基づいてリスクを評価します。SecOpsチームは、数千もの個別シグネチャを管理する代わりに、グローバルなリスク適用ポリシーを定義するだけで済みます。
  • エージェント型脅威インテリジェンス:リアルタイムの検知結果をグローバルな脅威テレメトリと関連付け、攻撃を特定の脅威アクターや攻撃キャンペーンに帰属させます。

静的なルールセットからAI搭載WAFに移行することで、脅威対策の有効性とSecOpsの生産性の両方が飛躍的かつ定量的に向上します。誤検知を95%以上削減できるため、組織はWAFポリシーをほぼ即座にアクティブブロッキングモードへ安全に移行し、ユーザーの利便性を損なうことなくセキュリティギャップを解消できます。

実際の事例:ゼロデイエクスプロイトからの防御

このウェビナーで特に注目を集めた内容の1つが、AIを活用したWAFが新たに発見された未修正の脆弱性にどのように対処するかを示す実践的なケーススタディです。

2026年4月、F5のインラインニューラルネットワークエンジンは、公開アドバイザリの発表や公式シグネチャの作成に先立ち、本番環境で5件の重大なゼロデイエクスプロイトを検知し、ブロックすることに成功しました。

特筆すべき例として、エンタープライズ向けモバイル管理ソフトウェアのゼロデイ脆弱性が挙げられます(CVSSスコア9.8の「Critical」と評価されたCVE-2026-1340やCVE-2026-1281などの重大なCVEに関連)。

AIエンジンは、多段階のリモートコード実行(RCE)ペイロードに関連する異常なヘッダー構造を検知し、ネットワークエッジでリクエストを即座にブロックしました。F5 Agentic Threat Intelligenceは、その基盤となるエクスプロイトインフラストラクチャを、イラン系APTグループのMuddyWaterやHandalaを含む既知の国家支援型脅威アクターに関連付けました。

AI搭載WAFを利用しているお客さまは、SecOpsチームが手動でルールを作成したり、緊急パッチの適用時間帯を待ったりすることなく、自動的に保護されました。

ランタイム脅威検知の必要性

脆弱性が増大し、ソフトウェアの更新サイクルではAIが生成するエクスプロイトへの対応が追いつかなくなる中、ランタイム脅威検知はアプリケーション防御に不可欠な中核となります。

Q&AセッションでDebrup Ghoshは、ソフトウェアパッチを待つだけでは、もはや有効な戦略とはいえない理由を強調しました。推論モデルがコードベースを体系的に分析し、新たなエクスプロイトペイロードを自動生成できるポストMythos時代には、セキュリティチームは実行時に意図とコンテキストを検査する防御策を導入する必要があります。

AI WAF機能の今後のロードマップ

F5は、AIを活用したWAFソリューションの継続的な進化に向けた明確な方向性を示しました。

  • 自動異常検知:アプリケーションの通常時の動作を継続的に学習し、わずかな逸脱を検知します。
  • AI主導のポリシー管理:人間のアナリストによる関与を維持しながら、例外リストを自動調整するCopilot支援のポリシー推奨。
  • 高度な振る舞い検知:個々のHTTPトランザクションを個別に分析するのではなく、ユーザーセッション全体にわたる多段階の攻撃シーケンスと悪意を特定します。
  • ポートフォリオ全体での統合:CPU効率に優れたこれらのニューラルネットワークエンジンを、WAF for Distributed Cloud、WAF for NGINX、WAF for BIG-IPを含む、あらゆるWAFフォームファクターに拡張します。

セキュリティリーダーが押さえるべきポイント

CISO、SecOps責任者、アプリケーションアーキテクトにとって、このウェビナーで得られる知見から、取り組むべき項目がいくつか明確になります。

  • 形式的なセキュリティ対策から、実効性を重視した防御へ移行する:静的なシグネチャ照合だけでは、自動化された攻撃者への対策として不十分です。最新のWAAPソリューションには、機械学習を活用したリスクインテリジェンスを組み込む必要があります。
  • 誤検知の削減を優先:運用の拡張性を確保するには、管理上不要なアラートを減らすことが不可欠です。誤検知率を下げることで、チームはWAFポリシーをパッシブなログ記録からアクティブなブロックへ移行できます。
  • エッジにランタイム脅威検知を組み込む:低レイテンシでCPU負荷の低いニューラルネットワークにより、外部から流入するアプリケーショントラフィックを保護することで、パッチ適用サイクルが遅れた場合でもゼロデイエクスプロイトから確実に保護できます。
  • ポートフォリオ全体を包括的にカバーすることを求める:AI防御機能は、従来のオンプレミスアプリケーション、最新のマイクロサービス、クラウドでホストされるAI APIのいずれを保護する場合でも、ハイブリッドアーキテクチャ全体で一貫して機能する必要があります。

静的でメンテナンス負荷の高いWebアプリケーションファイアウォールの時代は、終わりを迎えつつあります。脅威アクターが人工知能を活用して複雑な多段階攻撃を大規模化するなか、企業のセキュリティ防御も動的に適応しなければなりません。マイクロ秒単位のニューラルネットワークスコアリング、エージェント型脅威インテリジェンス、堅牢なランタイム脅威検知を統合したAI搭載WAFにより、組織は迅速にブロックモードへ移行し、国家支援型の脅威アクターに先手を打ち、誤検知を排除して、あらゆるクラウド環境の重要なアプリケーションを保護できます。

F5 AI-powered WAFについて詳しくは、オンデマンドウェビナーをご覧ください。上のフォームから録画にアクセスできます。

講演者

Erin Verna

Erin Verna
シニア・プリンシパル・プロダクトマーケティングマネージャー
F5

Debrup Ghosh

Debrup Ghosh
プリンシパルプロダクトマネージャー
F5

Chris Malladi

Chris Malladi
F5 Distributed Cloud WAF担当プリンシパルプロダクトマネージャー
F5