F5 2024年テクノロジー展望
3つのトレンドが重なり合い、2024年のセキュリティに大きな変化をもたらすと見込まれています。
執筆:Lori MacVittie
市場の兆候には目を向けず、生成AIが今年最大の注目を集めるテクノロジーでありトレンドだと言い切るのは簡単です。
生成AIが市場に大きな、まさに激震ともいえる影響を及ぼし、ひいてはあらゆる企業に影響を与えていることは間違いありません。F5もこの事実を認識していますが、あえて指摘するまでもないとも考えています。AIを事業、製品、サービス、ワークフローに導入し、組み込む必要があることは誰もが認識しており、すでに理解している多くの人々に改めて説くことに、実質的な価値はありません。
ここで指摘すべきなのは、生成AIの陰に隠れているものの、同じく重要な別のトレンドがあるという点です。それは、まだ印象的な呼び名のない「セキュリティとオブザーバビリティの融合」です。
「技術者の85%が、オブザーバビリティは今や自組織にとって戦略的な優先事項であると回答している」(AppDynamics )という結果は、驚くにはあたりません。企業のデジタル成熟度を詳しく調査したところ、デジタル成熟度が最も高い組織でさえ、可視性の確保とデータのサイロ化に苦慮していることがわかりました。必要なデータポイントが分散したデータソースに閉じ込められているため、データのサイロ化が可視性の問題につながることも少なくありません。また、同じ組織が挙げている専門知識の不足も、その一因である可能性があります。
また、セキュリティの重要性については、今さら多くを語る必要はありません。セキュリティは、経営会議室からサーバールームに至るまで、依然として最重要課題であり、大きな懸念事項です。経営陣の景気見通しが明るいか暗いかにかかわらず、セキュリティへの投資は引き続き優先度の高い取り組みです。
実際、2023年後半には、収束しつつあるこの2つのトレンドに生成AIの引力が作用し、セキュリティが急速に引き込まれる渦、すなわちAISecOpsが生まれました。
セキュリティとオブザーバビリティの融合
FY23を通じて、セキュリティとオブザーバビリティの各分野では、それぞれの活動が引き続き活発化すると同時に、両者の融合が進みました。具体的には、オブザーバビリティ企業がセキュリティサービスの提供を開始する一方、セキュリティ企業は、可視性を高めるためにオブザーバビリティに関する高度な機能を獲得または構築しています。
当然の流れとも言えますが、この融合における次のステップは、AIの統合です。

CIOの88%が、DevSecOps文化の構築にはオブザーバビリティとセキュリティの実践を融合することが極めて重要になると回答し、90%が、こうした実践を拡大するにはAIOpsの活用を増やすことが鍵になると回答しています(Dynatrace)。
この進化は、すでに市場で起きています。AI、特に生成AIは、セキュリティとオブザーバビリティの両分野で活発な動きを促してきました。その影響は2023年後半に加速し、減速する兆しは見られません。
オブザーバビリティとセキュリティの融合はすでに進んでおり、両者とAIの統合も目前に迫っています。
これは、セキュリティとAIのどちらもオブザーバビリティに大きく依存しているためです。つまり、ビジネス価値につながる有意義で実用的なインサイトを提供するには、どちらにも大量のデータが必要です。運用およびセキュリティ市場では、運用データ(テレメトリ)の堅牢なリポジトリがなければ、AIは役に立ちません。
一方、セキュリティと一般的な運用上の課題の両方で必要となるテレメトリの量は膨大であり、AIがなければ、データから有意義な結果を得ることはできません。実際、セキュリティデータで補完されていないパフォーマンスおよび可用性データは、最適とは言えないという見方が市場で広がっています。技術者の半数以上(56%)が、アプリケーションの可用性およびパフォーマンスのデータとセキュリティデータを統合するオブザーバビリティソリューションを求めています(AppDynamics)。マルチクラウド環境とハイブリッド環境を管理する体系的なAIベースのソリューションに運用データを提供するため、運用上のニーズに対応する「信頼できる唯一の情報源」を探しています。
したがって、オブザーバビリティは、AIと将来のセキュリティ製品の両方を支える基盤機能となります。
AISecOpsの台頭
2024年は、AISecOpsの実践手法が形づくられ、今後進むべき「道」として定着する年になると予想しています。
この融合により、従来のAIおよびMLの手法を用いてリアルタイムのトラフィックを分析し、脅威をより迅速かつ効率的に検知して無力化できるようになるだけでなく、セキュリティ担当者が脅威データを扱う方法も大きく変わります。これが、AIを取り入れる理由です。
しかし、おそらくさらに興味深いのは、可観測性、セキュリティ、AIを実現するテクノロジーです。これらのテクノロジーは、新たな機能やユースケースを可能にし、そうでなければ実現できないほどの速さでコンバージェンスを推進しています。
そのテクノロジーとは、次のとおりです。
1. eBPF
eBPF(extended Berkley Packet Filter)は、テレメトリの収集ポイントと制御ポイントの両方として機能できる、軽量なLinuxカーネルレベルの仕組みです。カーネルの変更や再コンパイルが不要で、キャプチャ機能と制御機能をシステムに容易に組み込めることから、広く利用されています。主にシステムからテレメトリを取得するために使用されますが、限定的な機能を実行できるため、制御ポイントとしても使用できます。
たとえば、不審なパケットの伝播を防止できるほか、パケットレベルのルーターのような役割も果たせます。この二面性により、オブザーバビリティ(収集)とセキュリティ(制御)の両市場で、eBPFの重要性が高まっています。eBPFは、従来のエージェントベースのテクノロジーでは実現が難しい、またはコスト面で現実的ではない、より充実したキャプチャポイントを提供することで、分析を可能にします。eBPFは、オブザーバビリティとセキュリティの機能を実現する基盤となります。
2. API
API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)は、2023年を通じてセキュリティ市場とオブザーバビリティ市場の両方で中心的な存在となりました。APIは、ロジックの呼び出し、タスクの実行、プロセスの開始を行うエンドポイントとして使用されます。アプリケーションエンドポイント(URI)と多くの特性を共有する一方、API固有の特性により、セキュリティと運用に特有の課題が生じます。さらに、APIは運用タスクやプロセスの自動化にも広く使用されています。そのため、APIは顧客向けアプリケーションに関連する単なるビジネス上の懸念事項ではなく、企業全体に関わる体系的な課題となっています。APIは、自動化とオブザーバビリティを実現するうえで重要な役割を果たします。
3. GraphQL
GraphQLは、API向けのクエリ言語であり、データに対してクエリを実行するためのランタイムでもあります。GraphQLを使用すると、クライアントは必要なデータを指定してリクエストし、予測可能な形式でレスポンスを受け取れるため、データの過剰取得や取得不足を抑えられます。GraphQLの普及は、APIの利用と依存度の高まりによって促進されていますが、組織はAPIのガバナンスと管理に苦慮しています。また、GraphQLはより直接的なデータアクセスをサポートできるため、アプリケーションアーキテクチャ内のデータを、従来のビジネスロジックと並ぶ主要な要素として扱えます。APIと同様に、GraphQLには対処すべき新たなセキュリティ上の課題があり、可観測性が必要です。
4. DPU
データ処理ユニット(DPU)は、CPU(中央処理装置)からデータ処理タスクをオフロードし、高速化するために設計された専用ハードウェアコンポーネントです。特定の計算タスクの実行に特化しているという点で、高度な暗号処理や優れたゲーム体験を実現するGPU(グラフィックス処理装置)と似ています。DPUは、データの移動、変換、管理に関するタスクに最適化されており、CPUを汎用計算に専念させることで、システム全体の効率を向上させます。DPUは、データ集約型アプリケーションのパフォーマンス向上、システムのボトルネック軽減、消費電力の削減に役立ちます。大量のデータを効率的に処理することがパフォーマンスとスケーラビリティに不可欠な、最新のデータセンターアーキテクチャ、エッジコンピューティング、AI/MLワークロードで、DPUの利用が拡大しています。
これら4つのテクノロジーが連携することで、オブザーバビリティとセキュリティの機能、ならびに生成AIと従来型AIの統合が加速しています。組織がAIOpsへの移行とセキュリティとの融合を進める中、2024年には4つすべての導入と利用がさらに拡大すると予想されます。
AI、特に生成AIの活用を計画しているのはF5だけではありません。F5は、アプリケーションデリバリとセキュリティを「驚くほど簡単」にすることを使命としています。実際、こうしたテクノロジーの導入と運用を驚くほど簡単にするには、あらゆる形態のAIを統合して活用することが重要です。F5は、ボットや不正行為の検知テクノロジーを支えるモデルなどの従来型AIと生成AIを組み込む新たな方法に、積極的に取り組んでいます。
しかし、その実現には、成功を支えるテクノロジーへの投資が必要であることも認識しています。そのため、DPUの導入を加速するOPI(Open Programmable Infrastructure)プロジェクトの設立を支援し、投資とオープンソースへの支援を拡大しました。また、あらゆる形態のAIを取り入れて、F5の製品やサービスを強化・拡充するためのイノベーションにも、これまで以上に注力しています。
F5は、AIが進化をもたらし、自動化の機能を新たなレベルへと引き上げることで、あらゆる職務、特にデジタルビジネスを支えるアプリとAPIのデリバリおよびセキュリティに携わる職務の生産性と効率が向上すると考えています。
