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ユーザ企業調査結果にみる、日本企業がデジタル革新で遅れを取り戻す鍵とは。

Keiichiro Nozaki サムネール
Keiichiro Nozaki
Published March 10, 2020
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2020年版、アプリケーション・サービスの状況レポートの発表。

皆さんこんにちは。昨年に引き続き、弊社の年次ユーザ企業レポートが発表されました。詳しいレポートの全容はフルバージョンをダウンロード頂けますのでそちらに譲りたいと思うのですが、ここでは特に日本と世界、特にアジア諸国との比較から考察をしてみたいと思います。

世界共通のトレンドで特筆すべきものとは?

端的にまとめると、グローバル調査の主なトピックは下記の5つになります。

  1. 80%の企業がデジタル革新を推進中。いわゆるTime-to-Marketが最優先事項。
  2. 87%の企業がマルチクラウド化を進めているが、大多数がセキュリティの課題に直面している。
  3. 73%の企業がアプリケーション基盤の自動化に着手。サービスデプロイの効率化と高速化を狙っている。
  4. 69%の企業が10種類以上の多様なアプリケーション基盤技術(L4-L7技術)を活用している。
  5. 63%の企業においてアプリケーション基盤技術(L4-L7技術)の責任は運用部門にあるが、半数以上がDevOps部門への責任の移管を計画中。

これを簡単にまとめると、

「マルチクラウド化が更に広がり、今まで以上に多様で高度な可用性・セキュリティなどの基盤技術を自動化しつつ活用して、DevOps文化を中心とした体制で各社がデジタル革新を推進している」という世界平均の企業像が見えてきます。

日本はどんな感じ?

これもまた毎年おなじみなのですが、それでは日本の結果はどうだったのか。結論から申し上げますと、例年同様に日本の回答は数値上、かなり低い水準です。例えばデジタル革新(DX)推進については、アジア最高点であるインドが90%であるのに対し日本は62%とアジア各国との比較でも下から2番目です(世界平均は前述の通り80%)。特に顕著なのは、「インフラを構成するコンポーネント(ネットワークやセキュリティ)」の自動化及び同項目のセルフサービス化の分野になります(下図参照)。これらの項目はアジア地域の中でも最低水準であり、世界平均と比較しても非常に低い水準となっています。

個人的にはこれはひとえに勤勉さなどに代表される日本の文化的な背景も関わっていると感じていますし、もっと言うとこういった調査にご協力頂く際に一般的に控えめに回答する傾向が反映されているとも感じます。(インドとか、事実はどうあれイケイケドンドンなところがある。)

また、こういった考察は弊社の調査に限った話ではなく、Gartner社だったりIDC社、果ては「2025年の崖」でおなじみの経済産業省レポートでも同様の切り口で語られているので皆さんにとっても新しい話ではないと思います。

このレポートでしか見ることのできないデータ。

さて、そんな耳タコな話ばかりしても面白くないですし、せっかくなので、当調査ならではのデータを2点ご紹介したいと思います。

1.     アプリ基盤に活用が期待される先進技術は、日本でも取り組まれている?

下図の通り、クラウドを始め(それ以外はここでは省略しますが)日本が世界平均を下回る項目はあるにせよ、実はCI/CDパイプライン化サーバレス・コンピューティングなどの先進的なクラウド技術に対する興味度合いは実は日本は高いのです。デジタル革新やインフラの自動化などが進んでいないにも関わらず、要素技術単位で見ていくと、ポツポツと取り組みは見受けられる…。一見、矛盾しているようにも見えます。しかし、ここで推測できる状況としては、営業・マーケティングを含むビジネス部門を巻き込んだデジタル革新自体は進みにくいものの、真面目なインフラや開発部門の中ではしっかりと新しい技術への学びは行われているし、必要性も認識されているのではないか、というものです。つまり、会社組織としてみると非常に勿体ない状態とも言える状況なわけです。

2.     デジタル革新(DX)プロジェクト「有り」組と「無し」組の格差が拡大??

もう一つ、極めて興味深いのが下記の世界平均と日本の比較図です。いわゆるクラウドネイティブ環境向けの先進技術分野への取り組み度合いを、世界平均と日本でそれぞれDXプロジェクトが存在「する組」と「しない組」のクラスタで分割して比較しています。

明確な違いは、世界平均ではDX有り・無しの差が比較的少ないのに対して、日本では有り組 VS 無し組の差が大きい分野(=Ingress ControlとAPI Gateway)が存在する点です。ここから推測できるのは、日本では世界以上にDXに取り組んでいない企業が先進技術面でも取り組みが遅れているのではないか、という事実です。(※そもそも縦軸の尺度が世界平均と日本で開きがある点は、今回は敢えて無視しております。)DXという取り組みは往々にして技術の世界のみの話ではなく、経営判断・ビジネス判断という側面もある事を鑑みると、経営側で牽引しないとここからの巻き返しが厳しい企業が日本には存在するかもしれない、という事でもあります。

これは、前述のGartner社の記事にも極めて近い記述がありますし、一考の価値はあるかと考えています。

以下、引用

「ガートナーはビジネスのデジタル化に当たってディスラプションに直面し、ビジネスイニシアチブへの資金提供や適切な人材の獲得といった能力を強化して転機を乗り越えた企業のことを「適合した企業」と呼んでいる。(中略)同社は、適合した企業と比べて日本企業は「ITのリーダーシップ」と「戦略」に関する能力が大きく引き離されているとも指摘している。」

海外のお客様のコメントから考える、「じゃあどうするのか?」

当レポートでは、インフラの視点でDXを幾つかのフェーズに区切っています。まず、既存のインフラの自動化。そして効率化された世界で初めて可能となるデータを活用した経営判断への新しい貢献。最後に、前述の経営判断を更に高度化する、AIや機械学習を活用したフェーズです。

世界的に見てもDXはまだまだ始まったばかりという現状で、IT部門ができることとは、何でしょうか。経営やビジネス部門への働きかけなども勿論ありますが、ひとつ筆者が最近海外のお客様から聞いた面白いエピソードをヒントとなる事例代わりにご紹介し、本稿を締めたいと思います。

先日、仕事でシドニーの自社イベントに参加した際に、たまたま金融系のお客様、複数名様(異なる企業様でした)とDXの現状について話す機会がありました。それぞれ同じオーストラリア、同じ金融という業種にも関わらず、DXの現状は大きく異なったのが非常に印象深かったので、具体的なコメントを幾つかご紹介します。

まず、大手と言える某金融機関のAさんは

「いや、うちは巨大組織だからさ。鈍重な動き出し、まだまだこれからだよ。ああ、クラウドも使い始めてるけどまだPoC(概念検証)だけだね。」

とのこと。

一方、どちらかと言うと中小と言える組織規模のBさんは

「もうDXを進めないと3年後は会社が無いと思っているよ。最近は僕らネットワーク部門の業務指標は、たとえ金融機関と言えども『App Storeにおけるモバイルアプリのレビュー点数』に一部紐付いているからね。アプリなんてうちの部門には直接関係ないけど、運用部門も消費者がウチのデジタルサービスをどう評価しているかが給料に直結するように上層部が変えちゃったんだ。」

との事。

はたまたCさんは、

「いや、社内でDXが立ち上がっているのは知ってるけど…何を開発しているかは知らない。でも取り敢えずパブクラ環境でコンテナベースの環境を準備しろと言われているんだよね。何に使うかは知らないけど。」

とのことでした。

三者三様の環境で、違う課題や悩みがあるようですが、ひとつ確かなのは、部門や個人の評価指標含めた企業の戦略や体制でIT部門の状況がガラッと変わっている、という点では無いでしょうか。先進的な組織環境と言えるBさんは、激変する環境の中で辛そうでしたが、開き直ってプレッシャーを楽しんでいる様子が伺えたことを付け加えておきます。翻って、給与や評価指標などに波及するような、ディスラプティブ(=破壊的)な変化に直面しているわけではないAさんとCさん。お二人は、Bさんより安定している環境と言えそうですが少し将来展望については不安そうな心持ちを言葉の端々から垣間見た気がします。

さて、御社の状況はいかがでしょうか?

是非フルバージョンのレポートをダウンロードして、世界の動向を見るとともに自社の立ち位置や今後の戦略策定にご活用下さい!