検索拡張生成(RAG)
検索拡張生成(RAG)は、外部から利用可能なデータ(多くの場合、独自データや特定分野のデータ)を大規模言語モデル(LLM)を使用するワークフローに統合する、生成AIの効果的な手法として注目されています。RAGは関連するコンテキストを取得し、リクエストの直前に追加のプロンプトコンテキストとして付加します。これにより、トレーニングデータセットしか活用できない単体モデルと比べて、AIの応答の効率と精度が向上します。
検索拡張生成(RAG)とは
RAGは、検索拡張生成(retrieval-augmented generation)の略です。この名称は、その中核となる原則を表しています。リアルタイムまたは頻繁に更新されるデータを取得して基盤となるAIシステムやAIモデルを拡張し、文脈をより的確に踏まえた回答を提供します。
RAGの用途
RAGは、基盤となるLLMが古い情報でトレーニングされている場合でも、静的モデルを最新かつ最も関連性の高いデータに基づいて最新の状態に保つという、AIの根本的な課題に対処するために使用されます。RAGの一般的な用途は次のとおりです。
- カスタマーサポート:AIを活用したチャットボットが、最新の製品マニュアル、システムステータス情報、顧客履歴を取得し、より迅速で個々の状況に応じた解決策を提示します。
- リアルタイム分析:企業は、金融市場のフィード、ソーシャルメディアのトレンド、モノのインターネット(IoT)デバイスのストリームを活用し、意思決定の精度を高めます。
- ナレッジ管理:社内Wiki、研究アーカイブ、その他のコンテンツリポジトリは、AIモデルがトレーニングだけでは保持できない重要な参照情報を提供します。
生成AIのユースケースにおけるRAGの仕組み
ほとんどの生成AIモデルは、固定されたトレーニングサイクルで情報を学習します。トレーニングが終了すると、モデルが保持する知識は、特定の時点まで、または一定のデータ制約内のものに限られます。RAGは、ユーザーからクエリを受け取った時点、つまり推論時に、外部ソースから最新かつ関連性の高いデータを取り込むことで、その知識を拡張します。
- 検索:システムは、最新情報を格納したリポジトリから、最も関連性の高いドキュメント、データベースエントリ、またはベクトル埋め込みを特定します。
- 拡張:モデルは、取得したコンテンツを追加の「プロンプト」またはコンテキストとして使用し、基盤となるトレーニングデータとシームレスに統合します。
- 生成: 静的モデルだけでは再現できない方法で、最新データやドメイン固有のデータを取り入れた最終的な回答が生成されます。
RAGコーパス管理
RAGを安定して機能させるため、組織では多くの場合、構造化データと非構造化データで構成され、ベクトルデータベースやナレッジグラフから容易にアクセスできる最新のコーパスを維持します。このコーパスを適切に管理するには、データの取り込み、クレンジング、埋め込み、インデックス作成を行い、検索エンジンが文脈に適した情報を迅速に抽出できるようにする必要があります。
RAGが重要な理由
- コンテキストに即した正確性:リアルタイムまたは組織固有のデータに回答を整合させることで、RAGは、AIモデルが実際の状況とは無関係な回答を生成する「ハルシネーション」を大幅に低減します。
- より新しい情報: データが変更されるたびに大規模モデルの再トレーニングやファインチューニングに多額のコストをかける代わりに、RAGではモデルが必要に応じて最新のコンテンツを照会できるため、回答内容の品質と鮮度が向上します。
- 規制遵守:RAGは、ユーザーのアクセス権に応じたデータの選択的な取得をサポートし、プライバシーおよびデータ保護に関する規制の遵守維持に役立ちます。
- コスト効率:クエリごとに関連性が最も高いデータのみを取得するため、ストレージとコンピューティングリソースをより管理しやすくなります。
- データ保護の強化:機密データはコアLLMとは別に取得できるため、モデル自体に組み込まれることはなく、ジェイルブレイクやモデル盗難が発生した場合のデータ漏えいリスクを低減できます。
RAGの未来
コンテキストウィンドウの拡大をはじめとするAIの進歩により、モデルが膨大な量のテキストを直接考慮できるようになるため、消費者にとってRAGの重要性は低下するように見えるかもしれません。しかし、マルチクラウド環境に分散する膨大なデータを抱えるエンタープライズ組織は、急速に変化し、広範囲に分散したデータソースへの対応を引き続き迫られています。RAGは、モデルのコンテキストウィンドウに過剰な負荷をかけたり、データの無秩序な拡散を招いたりすることなく、最も関連性が高く、利用が許可された情報を選択的に参照することで、この課題に対応します。AIがエンタープライズワークフローにさらに深く統合されるにつれ、RAGは、タイムリーでコンテキストが豊富かつ高精度な出力を提供するための重要な戦略であり続けると見込まれます。
F5によるエンタープライズAI導入への対応
F5は、マルチクラウド環境に分散する異種データソースとAIモデルをシームレスに接続し、検索拡張生成(RAG)のセキュアな接続を実現するうえで重要な役割を果たします。企業が高度なAIアーキテクチャを導入する中、F5はF5 Distributed Cloud Servicesを使用して、企業データへの高性能でセキュアなアクセスを確保します。Distributed Cloud Servicesは、ネットワーキングとセキュリティに対する統合的なアプローチを提供し、ポリシーベースの制御、統合Webアプリケーションファイアウォール(WAF)、転送中の暗号化をサポートします。多様な保存場所からセキュアかつリアルタイムに必要なデータを選択して取得できるようにすることで、F5は、機密性の高い企業情報を保護しながらAIモデルを効率的に稼働させ、スケーラビリティ、レイテンシ、コンプライアンスに関する課題の克服を支援します。
F5がエンタープライズAIの導入をどのように支援するかについて、詳しくはこちらをご覧ください。

