グローバルレジリエンス:クラウド障害から重要インフラを守る

F5エコシステム | 2024年10月16日

CrowdStrikeに起因する最近の世界的なシステム停止は、多くの組織に警鐘を鳴らしました。企業の取締役会は、自社に責任がないにもかかわらずミッションクリティカルなアプリケーションに支障を及ぼしかねない、次の世界的なシステム停止の影響をどのように軽減できるか、CIOに問いかけています。また、世界各国の政府も、こうした世界規模の混乱によって、銀行、交通、医療などの重要情報インフラ(CII)をはじめとする不可欠な公共サービスに二次的被害が及ぶのを防ぐ方法を検討しています。

デジタルレジリエンスの構築に関する最近のGartnerのレポートによると、大多数の組織(88%)が明確なデジタルレジリエンス戦略を策定しています。しかし、クラウドサービスプロバイダー(CSP)やSoftware as a Service(SaaS)セキュリティプロバイダーの世界規模の障害は、依然として組織に二次的な影響を及ぼしています。このことは、現在、多くの組織が導入しているデジタルレジリエンス戦略では、CSPやSaaSセキュリティプロバイダーに起因する単一障害点が考慮されていない可能性を示しています。

計画外のアプリケーションダウンタイムは、コンプライアンス違反にとどまらず、顧客の不満を招き、競合他社への流出につながる可能性があります。つまり、ダウンタイムはさまざまな損失をもたらしかねません。一方、インフラストラクチャとアプリケーションの保護に取り組むことで、コンプライアンスの向上や顧客体験の改善につながるほか、インフラストラクチャコストの削減にも役立ちます。

オンプレミス運用とクラウド運用の総コストを比較して把握することが重要です。クラウドは、その伸縮性によって利用量の急増に対応でき、従量課金モデルでコストを削減できるため、費用対効果に優れています。ミッションクリティカルなアプリケーションの導入にアクティブ/アクティブ型ハイブリッドクラウドの設計パターンを採用し、既存ハードウェアのライフサイクルも計算に含めると、大幅なコスト削減が見込めます。人工知能(AI)ワークロードでは最大75%削減できると、Dellの調査で報告されています。

グローバルレジリエンスとは

グローバルレジリエンスとは、世界規模のインフラ障害やサイバー攻撃に耐え、適応し、復旧する組織の能力を指します。これには、世界規模のサービス停止を防止、検知し、対応して復旧するための戦略、能力、インフラの整備が含まれます。

“混乱の進行速度と発生頻度が高まり続ける中、デジタルテクノロジーは、事業継続性を確保し、突発的な外的ショックに対する組織のレジリエンスを高めるうえで不可欠な要素となります。デジタルトランスフォーメーションの成否は、それを推進するアイデア次第です。— Tomoko Yokoi、「Focused on Digital Resilience in 2021」、Forbes”

グローバルなレジリエンスを確保するうえで重要なのは、ITシステムとネットワークが柔軟性と拡張性を備え、予期しない負荷や障害にも対応できる堅牢なインフラストラクチャを維持することです。そのためには、マルチクラウド環境を活用し、クラウドがもたらす価値を最大限に引き出す必要があります。

同様に重要なのは、サイバーセキュリティの有効性を最高水準に維持することです。単一障害点を生じさせることなく、データの完全性と可用性を確保しながらサイバー脅威から保護するには、強固なセキュリティ対策を実装する必要があります。クラウドベースのサイバーセキュリティSaaSソリューションの多くは、アーキテクチャ上、単一障害点となっており、停止するとその顧客にも付随的な影響が及ぶことを認識することが極めて重要です。

グローバルなレジリエンスには、適応性の高いプロセスも不可欠です。企業は、環境、市場状況、テクノロジーの変化に迅速に対応できる柔軟な業務ワークフローを構築する必要があります。これにより、新たな課題に直面しても速やかに方向転換できます。

企業がグローバルなレジリエンスをさらに高めるには?

グローバルなレジリエンスを備えたアプリケーションを設計する際、企業は3つの重要な取り組みに注力する必要があります。

  1. アプリケーションを4つの階層に分類する
    まず、アプリケーションを特定し、以下の階層に分類します。

    • ミッションクリティカルなアプリケーション: いかなる状況でも常に稼働できるよう、グローバルなレジリエンスが必要です。
    • ビジネスクリティカルなアプリケーション:グローバルなレジリエンスは必須ではありませんが、障害による中断を減らすために推奨されます。
    • 業務運用アプリケーション:通常の業務運用を維持しますが、グローバルなレジリエンスは必要ありません。
    • 管理業務アプリケーション:事業機能を支援するものの、業務を即時に継続するうえで中核とはならない非必須のアプリケーションです。
  2. グローバルレジリエンシーの設計パターンを各アプリケーション階層に対応付ける
    企業は、階層に応じて異なるレジリエンシーパターンを実装できます。

    • 分散デプロイ:
      • 階層型ハイブリッド:フロントエンドアプリケーションはクラウドにデプロイし、既存のバックエンドシステムはオンプレミスに残します。
      • パーティション型ハイブリッド:パブリッククラウドとオンプレミスを組み合わせてアクティブ/アクティブ構成で展開し、単一サイトの障害に対するレジリエンスを確保しながら、コストを最適化します。
      • 分析ハイブリッド:オンライントランザクション処理(OLTP)とオンライン分析処理(OLAP)のタスクを分離し、オンプレミスで中核業務を維持しながら、複雑な分析をパブリッククラウドで処理できるようにします。
      • エッジハイブリッド: 時間的制約があり、ビジネス上重要なワークロード(ネットワークエッジでのAI推論など)をローカルで処理し、その他のタスクにはクラウドまたはオンプレミス環境を使用します。
    • 冗長構成:
      • 冗長化パターン:本番環境と開発環境のニーズに応じて、異なるクラウドまたは環境にワークロードを分散します。
      • 事業継続ハイブリッドパターン:パブリッククラウドへのフェイルオーバーを利用し、コスト効率に優れたコールドスタンバイシステムを実現します。
      • クラウドバースティングパターン:通常時のワークロードはプライベート環境で処理し、必要に応じて追加容量を確保するためにクラウドへバーストします。
  3. 各階層に合わせてグローバルレジリエンスのリファレンスアーキテクチャを調整する
    企業は、これらのアプリケーション階層に基づいてリファレンスアーキテクチャを策定する必要があります。これは、既存および新規のワークロードを展開するための戦略的指針となり、価値実現までの時間を短縮するとともに、技術面とビジネス面のレジリエンス要件を整合させます。ミッションクリティカルなアプリケーションには、「パーティション型ハイブリッド」設計パターンが不可欠です。これは、単一サイトの障害に対するレジリエンスを確保するため、オンプレミス環境とクラウド環境の両方に同一のフロントエンドを展開することを意味します。これらの手順に従うことで、企業は事業運営を保護できるだけでなく、グローバルなクラウド主導の環境で成長するために必要な柔軟性も得られます。
各階層に合わせてレジリエンシーのリファレンスアーキテクチャを調整することで、グローバルなレジリエンシーを強化できます。
各階層に合わせてレジリエンシーのリファレンスアーキテクチャを調整することで、グローバルなレジリエンシーを強化できます。

グローバルレジリエンスのフレームワークはありますか?

組織が混乱への対応力と復旧力を高めるために導入できる、デジタルレジリエンスのフレームワークやモデルはいくつかあります。代表的なフレームワークには、次のようなものがあります。

  • 米国国立標準技術研究所(NIST)サイバーセキュリティフレームワーク
  • 国際標準化機構(ISO)/国際電気標準会議(IEC)27001
  • 情報および関連技術の管理目標(COBIT)
  • Information Technology Infrastructure Library (ITIL)
  • 事業継続管理(BCM)フレームワーク
  • デジタル・オペレーショナル・レジリエンス法(DORA)
  • 能力成熟度モデル統合(CMMI)

これらのフレームワークを採用することで、組織はデジタルレジリエンスを強化し、潜在的な障害により適切に備えるための体系的なアプローチを構築できます。

グローバルなレジリエンスを実現する主な戦略

グローバルなレジリエンスを確保するには、アプリケーションの高可用性、スケーラビリティ、堅牢なセキュリティが必要です。組織は、パフォーマンスと保護の両方を強化する主要なテクノロジーを活用することで、これを実現できます。

ADC:F5のBIG-IPアプリケーションデリバリーコントローラー(ADC)、F5 NGINX ADC、分散クラウド型Application Delivery Controller as a Service(ADCaaS)は、トラフィック分散を最適化し、データセンター、クラウド、ハイブリッド環境全体でアプリケーションを拡張することで、可用性とパフォーマンスを確保できます。

サイバーセキュリティ:Webアプリケーションファイアウォール(WAF)、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)セキュリティ、サービス拒否(DoS)攻撃対策などのツールは、アプリケーションをサイバー脅威から保護し、攻撃を受けている間も継続性を確保します。

クラウドおよびハイブリッド環境への導入:マルチクラウドネットワーキングとハイブリッド構成により柔軟性が向上し、障害発生時にも迅速に対応できます。

自動化とオーケストレーション:アプリケーションデリバリとセキュリティを自動化することで、エラーと対応時間が削減され、レジリエンスが向上します。

可視化と分析:リアルタイムの監視と分析により、パフォーマンス上の問題やセキュリティ脅威に先回りして対応できます。

これらのテクノロジーを導入することで、組織は絶えず変化するデジタル環境において、アプリケーションの可用性、拡張性、セキュリティを確保できます。

包括的なグローバルレジリエンス戦略の構築

相互接続が進む今日の世界では、アプリケーションの完全性を維持するうえで、グローバルなレジリエンスの構築が不可欠です。アプリケーションデリバリ、堅牢なサイバーセキュリティ、柔軟なクラウド戦略といった主要領域に注力することで、組織はサービスを中断からより効果的に保護し、変化する需要に応じて拡張できます。さらに、自動化を導入し、システムパフォーマンスをリアルタイムで可視化することで、レジリエンス強化の取り組みを一層推進できます。包括的かつ綿密に検討されたアプローチにより、企業はアプリケーションの信頼性とセキュリティを維持し、将来の課題に対応できる体制を整えられます。

10月15~17日にシンガポールのSands Expo Convention Centerで開催される「GovWare」のブースP06で、ぜひF5にご相談ください。サイバーおよびクラウドのレジリエンスを構築・強化し、あらゆる環境でアプリを保護、配信、最適化する方法についてご紹介します。

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著者について

Chin Lim
Chin LimF5 ASEAN担当シニアディレクター

シンガポールを拠点とし、チンの名で広く知られています。F5 ASEANの戦略営業担当シニアディレクターとして、ASEAN地域のお客さまエンゲージメント戦略を統括しています。 Chinは、アプリケーション開発とインフラストラクチャ運用において25年以上の経験を有し、特にクラウドネイティブアーキテクチャ、最新のマイクロサービスアプリケーションデリバリ、セキュアなエッジインフラストラクチャを専門としています。 F5入社以前はBorland Softwareに勤務し、アジア太平洋地域の製品販売管理担当ディレクターとして、アプリケーションライフサイクル管理とミドルウェアを統括していました。Borland Software以前はBEAでソリューションマネージャーとコンサルタントのチームを率い、WebLogicおよびTuxedoプラットフォームを使用した分散アプリケーション環境の設計を支援しました。 Chinは、オーストラリアのニューカッスル大学でコンピューター工学の工学士号(第一級優等)を取得しています。

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