多くの人が認めるように、クラウドは成熟期を迎えました。私たちが注意深く、時には警戒しながら見守る中で成熟を遂げ、Harvard Business Reviewが調査2015年秋に実施したところ、回答者の過半数が「自社では、少なくとも一部の新規アプリケーションについて、パブリッククラウドを優先する戦略を採用している」と回答しました。実際、クラウドファースト戦略を重要ではないと回答したのは、調査回答者のわずか22%でした。
F5独自の調査でも、この傾向が裏付けられています。2016年の「State of Application Delivery」調査では、回答者の67%が自社を「クラウドファースト」の組織と位置付け、3つのクラウドモデル(プライベート、パブリック、SaaS)が戦略的トレンドの上位5項目の大半を占めました。
しかし、クラウドの導入には依然としてためらいがあることがわかります。長年パッケージとして購入され、オンプレミスに導入されてきた汎用的な業務ソフトウェアの大半を事実上取り込んだSaaSが驚異的な勢いで成長する一方、パブリッククラウドは引き続き後れを取っていました。パブリック(AWS、Azure、Google、Rackspace)、プライベート(オンプレミス)、SaaSの利用を区別して尋ねると、「クラウド」の導入を牽引しているのはSaaSとプライベートクラウドであり、パブリッククラウドではないことが、F5の調査に限らず示されています。
これにはさまざまな理由があります。前述のHarvard Business Reviewの調査でも、ビジネスクリティカルで長期にわたって利用されるアプリケーションをパブリッククラウドへ一気に移行することに企業が慎重になる背景に触れ、統合が大きな課題であると指摘しています。
しかし、ビジネスリーダーが「クラウドへ移行」する際の障壁となるのは、アプリケーションとデータソース間の統合だけではありません。多くの場合、アプリケーションの速度、セキュリティ、拡張性を支えるアプリケーションサービスとの統合、つまりそれらへの依存関係が妨げとなります。

パブリッククラウドは成熟しつつあり、成長を維持するには、IPテーブルベースのファイアウォールや従来型の負荷分散を超える高度なサービスを提供しなければならない転換点に、ようやく差しかかっています。これは必然的な流れでした。価格競争が終わり、コンピューティングリソースが8 TBのフラッシュドライブよりも安価になると、プロバイダーは差別化を図り、自社プラットフォームを採用するだけの魅力的な理由を示す別の方法を模索する必要がありました。ネットワークへの投資が、速度、拡張性、セキュリティに重点を置いていることも見逃せません。Network Worldの「State of the Network」調査の回答者は、「ネットワーク投資の主な推進要因は、ネットワークの速度とパフォーマンスの向上(55%)、データセキュリティの向上(53%)、可用性の確保(50%)、事業継続性の確保(46%)、ITプロセスの効率向上(43%)、ビジネスプロセスの効率向上(41%)である」と回答しています。
スピード。セキュリティ。スケール。
問題は、プロバイダーがそうしたサービスを提供しないことではありません。実際に提供しており、今後も提供していきます。しかし、そうしたサービスは依然としてデータセンターの運用システム、モデル、プロセスから分断されており、人員だけでなくスキルにも大幅な変更が必要です。ポリシーは、サービスごとに変換しなければなりません。また、デジタル化が進むビジネスを日々管理するうえで運用部門に必要な可視性を確保するため、クラウドコンソール、ダッシュボード、ログ、APIを組み込むようにプロセスとシステムを変更する必要があります。

ただし、これはクラウドで利用できる補完的なサービスが見つかることが前提です。F5初の年次レポート「State of Application Security」では、進化し続ける脅威環境から保護し、防御するために、回答者が多種多様なセキュリティサービスを利用していることが示されています。
Webアプリケーションファイアウォール、マルウェア対策、IPS、ファイアウォール、Web不正検知。提供状況には差があるものの、いずれもクラウド上で利用できます。拡張性と速度を実現するサービスも同様です。
組織がクラウドへの移行を検討する際、選択肢は限られています。アプリケーションの書き換えには膨大なコストと時間がかかる可能性があり、既存のアプリケーション開発の積み残しを考慮すると、なおさらです。この積み残しは、PaaSプロバイダーのOutSystemsによると、調査対象企業の85%に影響を及ぼしていました。また、半数を超える企業が10~20個のアプリケーションを積み残していると回答しました。
しかし、リフト&シフトでは、アプリケーションを支えるインフラストラクチャに関して当然の懸念が生じます。アプリケーションのコンポーネントだけでなく、アーキテクチャ全体をリフト&シフトする必要があるため、このような移行に対するIT部門の意欲が削がれがちです。その結果、相互に分断されたツール、コンソール、ダッシュボード、ポリシー言語の運用コストが、企業が節約しようとしている時間と費用のかなりの部分を奪う可能性があります。
そのため、クラウドプロバイダーが次々と提供する新しいアプリサービスについては、機能だけでなく、ソリューションによって運用の一貫性が確保されるかどうかも検討することが重要です。機能が80%でも許容でき、コストが50%になるなら魅力的かもしれません。しかし、管理コストまで考慮すると、新たな人員やツールに加え、新しいサービスの統合、運用、管理に必要な追加の時間によって、こうした削減効果はすぐに失われてしまいます。

これは運用の複雑化を招くものであり、望ましい状況ではありません。
クラウドへのリフト&シフトを安心して進めることができます。インフラストラクチャサービスの機能面と運用面の両方で同等性を確保することで、より複雑なアプリケーションもクラウドへ移行できます。
安心してリフト&シフトを実現するために、以下をご検討ください。
1. サービス アーキテクチャの同等性を維持することが重要です。特に、明確に定義されたポリシーを持つセキュリティ関連サービスを移行する場合は欠かせません。新しいサービスの導入には多額の投資が必要です。
2. 管理。 導入場所を問わず管理できるサービスを選びましょう。ダッシュボードは複数よりも1つにまとめるのが望ましいでしょう。スタッフにとっては、3台目のモニターを導入するもっともな理由になるかもしれませんが。
3. 自動化 APIと、プログラムによる自動化およびオーケストレーションの手法を評価し、運用担当者のスキルセットに適合することを確認します。新たな言語、フレームワーク、ポリシーツールセットがさらに必要になると、習得に時間がかかり、エラーやポリシーの緩み、意図しない結果につながる可能性があります。
あらゆる調査が示すとおり、クラウドへの移行は進んでいます。パブリッククラウドに移行しないアプリケーションも確かにありますが、多くのアプリケーションは移行することになります。今後の成功の鍵は、アーキテクチャと運用の一貫性です。
これらを念頭に置けば、クラウドへのリフト&シフトを早期に自信を持って進められるようになります。
著者について

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。
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