理由はまったく間違っているのに、結論だけは見事に正しいという奇妙な現象について考えてみましょう。
数年前、F5のOffice of the CTOは、「Continuous API Sprawl」と題するレポートを公開しました。その中で、複利計算に基づき、IT業界の多くの人々を不安にさせる大胆な予測を示しました。2030年までに、世界は約20億ものアクティブなAPIを抱えることになる、というものです。
当時、その予測は終末論的とさえ思えるものでした。では現在はどうでしょうか。まさに予測どおり、20億という数字に達する勢いです。しかし、ここからが本題です。その予測に用いた数理モデルは、もはや完全に成り立たなくなっています。
当初の計算は、AI以前の発想にとらわれていました。APIの無秩序な増加は、人間の開発者がより速くコードを書くことで進むと想定していたのです。しかし、それは誤りでした。人間中心のAPIスプロールの時代は、正式に終わりを迎えました。エージェント型AIによるスプロールの時代が始まったのです。
従来の計算:人間の速度の限界
当初のモデルは、人間の生産能力を単純な線形の式で表したものでした。世界の開発者総数に、APIを作成する開発者の割合を掛け、さらにその値に、開発者1人が年間に作成するAPIの平均数を掛けました。
計算上、複利的な増加は驚異的なものでした。2030年の予測値に達するには、2026年までに平均的なソフトウェアエンジニアが年間30件近くの純増となるAPIを生み出すと、このモデルでは想定していました。
しかし、いつものように現実はそう簡単にはいきませんでした。
世界の開発者人口は実際に増加し、現在では約3,600万人に達していますが、人間の開発スピードは限界に突き当たりました。実際の市場データによると、現在、開発者が新たに作成できるAPIは年間わずか3~5個程度です。なぜでしょうか。それは、残りの70%の時間が保守に費やされているほか、テスト、機能しなくなったパイプラインの修復、日常的な運用の維持にも時間を取られているためです。
さらに、ほぼすべての開発者が最終的にはAPIを手作業でコーディングするという想定も、約83%で頭打ちとなりました。ローコード/ノーコードプラットフォームとAPIファーストのSaaSが普及したことで、標準的な統合ではエンドポイントを一から作成する必要性が薄れました。
市場を動かす要因が人間の開発スピードだけだったなら、APIが20億に達するという予測は、大幅で面目を失うほどの過大評価だったはずです。それでもなお、この予測どおりに推移しているのはなぜでしょうか。
予想外の展開:AIエージェントの登場
人間の入力速度を基準にモデルを構築しましたが、まもなくキーボードをマシンに明け渡すことになるとは、まったく想定していませんでした。
APIの無秩序な増加を引き起こす要因は、根本的に変化しました。もはや、その増加を左右するのは人間の開発者の開発速度ではなく、AIエージェントがエンドポイントを連携させる速度です。
PostmanおよびF5の「アプリケーション戦略の現状レポート」の最新データによると、51%を超える企業がすでにAIエージェントをワークフローに導入しています。これらのエージェントは、グラフィカルユーザーインターフェースをクリックしてソフトウェアを操作するのではなく、APIを呼び出して自律的に連携します。また、タスクの完了に必要な特定の連携機能(通常はAPI)がない場合、最新のAI開発ツールは、そのギャップを埋めるために必要なマイクロAPIをその場で生成します。
現在、AI関連のAPI呼び出しは前年比で実に40%増加しています。今や、ソフトウェアがソフトウェアを記述する時代です。意図に基づいて人間が設計するアーキテクチャから、機械の速度で自律的に生成するモデルへと、前提が変わりました。開発者がエンドポイントを立ち上げるのを待つ必要はもうありません。エージェントが数秒で実行します。
ゾンビ化の要因とガバナンスの崩壊
ここで、当初のモデルにおける最も危険な欠陥、すなわち廃止率の問題に行き着きます。
私たちは、APIの「寿命」は1~3年だと安易に考えていました。いずれ人間が自らの混乱を整理するだろうと想定していたのです。しかし、エージェント型ワークフローでは、廃止率はゼロに近づきます。
エージェントは、極めて限定的かつ一時的なワークフローのために、短命な一時エンドポイントを立ち上げます。適切に廃止されるものもありますが、驚くほど多くがそのまま放置され、たった1つの忘れ去られたプロンプトを処理しただけのマイクロサービスによって、稼働中の総数が膨れ上がっています。
このような背景から、APIの無秩序な増加はインベントリ管理の危機を招いています。現在の業界集計データによると、58%の組織が実際に影響を受けており、さらに深刻なことに、IT部門の経営幹部の78%が、現在稼働しているAPIの正確な数を把握していないと認めています。大規模なグローバル企業では、APIの約30%が管理対象外のシャドーITとして、ガバナンスの枠組みから完全に外れた状態で存在しています。
人がAPIを構築すれば、ゲートウェイに記録される可能性があります。しかし、日曜日の午前2時に、マシンが別のマシンと通信するためのAPIを構築した場合、そのAPIはインフラストラクチャ内に恒久的に残る、把握されない存在となります。
2030年の現実を直視する
したがって、当社は従来の予測を維持します。2030年までに、グローバルエコシステムが20億のアクティブなAPIを確実に支えるようになると見込んでいます。
しかし、その20億の内訳は、当初の想定とは大きく異なります。正式に文書化され、人間が設計し、従来型のAPIゲートウェイの背後に安全に配置されるエンドポイントは、全体の40%未満にとどまります。残りの60%以上は、自律的に生成され、文書化されていないマシン間連携となります。
今後4年間、ITリーダーが直面する課題は、もはや開発者の成果物の管理やCI/CDパイプラインの改善ではありません。チームが存在すら把握していない、エージェントによって作成された不可視のAPIがもたらす、セキュリティおよび運用上の広範な影響に耐えることです。
テクノロジーは力を増幅します。しかし、ガバナンスが不十分なAPIエコシステムにAIエージェントを追加すれば、想像を超える規模と速度でミスを重ねることになりかねません。今すぐガバナンスを整備し、ガードレールを厳格に維持してください。そして、次の点を忘れないでください。エージェントがエンドポイントを構築できるからといって、構築すべきとは限りません。
著者について

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。
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