ADCの終焉は大げさに語られている

F5エコシステム | 2024年11月20日

6年にわたり、市場関係者を対象にマルチクラウドに関する最大の課題を順位付けする調査を実施してきました。その6年間、上位には常に同じ4つの課題が挙げられています。

  1. ツールとAPIの複雑さ
  2. アプリケーションパフォーマンスの最適化
  3. クラウドとデータセンター間でのアプリの移行
  4. すべてのアプリケーションに一貫したセキュリティポリシーを適用
マルチクラウドにおける主な課題
組織が各年に直面していると回答したマルチクラウドの課題上位3項目

興味深いことに、マルチクラウドが標準的な運用モデルとして定着する以前は、これらの課題のうち4つがアプリケーションデリバリコントローラー(ADC)によって解決されていました。ADCは当初ロードバランサーとして登場しましたが、単なるロードバランサーではありませんでした。セキュリティとデリバリを単一のソフトウェアまたはアプライアンスに集約し、トラフィックが通過する戦略的な制御ポイントとして、企業によるアプリケーションの最適化、保護、拡張を可能にしました。インターフェースとAPIが1つに統合されているため、組織はアプリケーションデリバリとセキュリティを担当するサイロ化したチームを設ける必要がなく、ツールの乱立を懸念する必要もありませんでした。

増大するアプリケーションの複雑性

クラウドとデータセンター間でのアプリの移行が大きな課題となったのは、世界中の企業でマルチクラウドが標準となった近年のことです。

この時期から、複雑さの増大とツールの乱立が課題として顕在化しました。クラウド環境ごとに管理方法が異なるうえ、組織がクラウドベースのセキュリティサービスを導入したことで、管理プレーンがさらに増えたためです。その結果、一貫したセキュリティの確保がほぼ不可能になり、ワークロードの移行も困難になりました。ある環境で機能していたセキュリティサービスが別の環境では機能しない可能性があり、既存のセキュリティ機能と同等の機能すら提供できない場合もあるためです。

組織はワークロードを自社環境に戻しつつありますが、その多くは、活用を予定しているAIモデルの近くにデータを配置する、AI対応インフラストラクチャの構築を支えるための動きです。一部のワークロードは今後もパブリッククラウドに残ります。組織のIT環境は、明確にハイブリッドマルチクラウドです。

だからといって、一貫性のないセキュリティ、パフォーマンスを最適化できないこと、運用負荷を増大させる過剰なツールやAPIの複雑さ、さらにはミスが停止やそれ以上に深刻な事態につながる可能性の高まりを、組織が受け入れているわけではありません。

アプリケーションデリバリは、新たなアプリケーションアーキテクチャ、環境、トラフィックパターンによって生じる課題に対応するため、常に進化してきました。近年、ワークロードの配置場所が変化し、そこにAIが加わったことで、アプリケーションデリバリにも対応が求められるパラダイムシフトが進んでいます。

ADCの進化のタイムライン
アプリケーションデリバリの進化

最新のADCが必要な理由

AI、API、マルチクラウドモデルに関する詳細な調査を含む年次調査から、組織が求めているのは、デリバリサービスとセキュリティサービスの両方を提供し、パブリッククラウド、コロケーションセンター、オンプレミス、さらにはエッジまで、あらゆる環境のワークロードに対して両サービスをサポートするプラットフォームであることが分かりました。

組織が求めているのはADCですが、それもモダンなADCです。一般的なデリバリとセキュリティの課題に対応するだけでなく、それほど一般的ではない課題にも対処できるADCです。また、モダンアプリケーションと従来型アプリケーション、さらに増加するAIアプリケーションが混在する、極めてハイブリッドなアプリケーションポートフォリオに適合するADCが求められています。

また、アプリケーションデリバリとセキュリティにAIの力を活用することも求めています。AIを活用してポリシーやカスタムコードを生成し、パフォーマンスやセキュリティの問題がインシデントに発展する前に対処するためのインサイトを引き出したいと考えています。さらに、AIアシスタントによるリアルタイムのサポートと、意思決定の効率向上も求めています。

しかし同時に、アプリケーションを展開するあらゆる場所に、そのADCも展開できることを求めています。

市場が求め、必要としているのは、ハイブリッドIT環境の運用に伴う複雑さに対応し、さらにほぼすべての業務および運用機能でAIアプリケーションを活用する際に生じる新たな課題にも対処できるADCです。

それは、今はまだ存在しないADCです。しかし、やがて実現します。

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著者について

Lori Mac Vittie
Lori Mac Vittie特別技術者兼チーフエバンジェリスト | F5

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。

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