ハイブリッドITがアプリとAPIのセキュリティにもたらす影響

F5エコシステム | 2023年1月11日

業界は長年、ハイブリッドITを「マルチクラウド」と呼ぶことで、その現実と、そこから生じる課題を直視せずにきました。

これは、組織が複数のクラウドを運用していないという意味ではありません。実際、間違いなく運用しています。しかし、「クラウド」はIaaS(Infrastructure as a Service)のパブリックプロバイダーに固有のものではなく、1つの運用モデルであるという実態を、この用語では十分に捉えきれていません。実際、F5のデータからは、組織がパブリッククラウドを採用する一方で、オンプレミスクラウドも運用していることが、毎年明らかになっています。

SOAS 2023

しかし、それでもハイブリッドITの現実を見落としています。クラウドが登場し、ビジネス界に旋風を巻き起こして以来、ハイブリッドITはずっと目の前に存在していました。「旋風」はもちろん意図的な表現です。組織がクラウドを導入する一方で、その多くは従来型のオンプレミス環境にも引き続き対応していたからです。大半の企業は新興企業ではなく、20年、30年、場合によっては50年にわたって事業を続けてきました。そのため、モノリスからマイクロサービス、クライアントサーバーからモバイルまで、主要なアプリケーションアーキテクチャのあらゆる世代にまたがる既存のポートフォリオを抱えています。

今年の年次調査では、お客さまが直面している実情を把握するため、オンプレミス環境について具体的に調査しました。データが明確に示しているとおり、企業はこれまでも、そして現在もハイブリッドです。

このレポートの調査だけではありません。F5 NGINXがオープンソースコミュニティを対象に調査したところ、ほかにも興味深い結果が得られましたが、何が明らかになったと思いますか。そう、ハイブリッド環境は今後も定着し続けるということです。

近日公開予定の「アプリケーション戦略の現状レポート」の調査結果をすべて明かすことは控えますが、モダンアプリケーションへの移行傾向は顕著です。一方で、従来型アプリケーションをよりモダンなバージョンへ全面的に置き換えることはないと考えられる組織もあります。

したがって、企業は今後何年にもわたり、ハイブリッドな状態を維持することになります。

しかし、そこで疑問が生じます。これはセキュリティ、特にアプリとAPIのセキュリティにとって何を意味するのでしょうか。

アプリとAPIのセキュリティへの影響

組織は、運用環境だけでなく、その中核となるアプリポートフォリオもハイブリッドであるという前提に立つと、アプリとAPIのセキュリティに及ぼす影響は極めて大きいと言えます。

これは、コンテナなど一部のアプリケーション環境には、従来のセキュリティソリューションでは対応できない固有のセキュリティ要件があるためです。また、アプリがオンプレミスに残ることで、組織は、コア、クラウド、エッジにまたがって展開されるアプリケーションワークロードを一貫して保護できるセキュリティソリューションを見つけるのに苦労することになります。しかし、話はそれだけではありません。既存の従来型ソリューション、特にプロトコルの悪用や脆弱性の悪用からアプリとAPIを保護するソリューションの必要性がなくなるわけではないからです。

残念ながら、組織にとって、ハイブリッドITがハイブリッドセキュリティを意味するわけではなく、意味し得るものでもありません。

ここでいうハイブリッドセキュリティとは、複数のベンダーが提供するアプリおよびAPIセキュリティサービスを混在させることです。セキュリティをアプリのライフサイクルの早い段階にシフトすることは優れた解決策に思えますが、安易な方法に流れ、互換性のない多数のアプリおよびAPIセキュリティサービスが混在する結果になりがちです。そのため、すべてのアプリとAPIを保護する取り組みが複雑になり、妨げられます。

クラウドツールとAPIの複雑さが組織に及ぼす影響は、すでに、すべてのアプリケーションに一貫してセキュリティを適用できないという形で表れています。アプリとAPIのセキュリティを自由に組み合わせるアラカルト方式は、ほとんどの組織で機能していません。その証拠に、この1年間で、ほかでもないアプリとAPIの脆弱性やエクスプロイトに起因する侵害が大幅に増加しています。

セキュリティにおけるハイブリッドITの現実を踏まえると、アプリとAPIを個別のサービスの寄せ集めで保護するアプローチは、長期的には通用しません。より優れたアプローチが必要です。そのためには、ITと企業環境が現在ハイブリッドであり、今後も当面はその状態が続くことを認識する必要があります。

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著者について

Lori Mac Vittie
Lori Mac Vittie特別技術者兼チーフエバンジェリスト | F5

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。

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