「ハイブリッド」クラウドという言葉を使い、その意味をめぐって激しく議論していたのが、つい昨日のことのように思えます。2017年後半には「マルチクラウド」という言葉が台頭しました(その意味をめぐって、同じような議論が数多く交わされました)。
さて、マルチクラウドは、ハイブリッドよりもはるかに意味が明確に思えますが、念のため説明しておきましょう。マルチクラウドとは、複数のクラウドを利用してアプリケーションを開発、デプロイ、提供することです。パブリック、プライベート、オンプレミス、オフプレミス、クラウド相互接続、SaaS……。つまり、増え続けるアプリケーションポートフォリオを提供するために、あらゆる選択肢を活用することを意味します。

長年にわたって誇大な期待のサイクルや新たな「トレンド」が繰り返されてきたため、IT業界には懐疑的な見方をする人が少なくありません。そうした人々は、この言葉を警戒し、単なる最新のマーケティング上の流行にすぎないと考えるかもしれません。
データに基づいて言えば、これは単なるマーケティングではありません。現在、複数のクラウドにまたがるアプリケーションを管理している方にとっては正気の沙汰ではないかもしれませんが、単なるマーケティングではないのです。
実際、F5の「2018 State of Application Delivery」調査に回答した3,000人超のうち、87%がすでにマルチクラウド環境で運用しています。これは、年末までにアプリケーションの25%超をクラウド環境に導入する計画を立てている組織の割合が、前年比で引き続き5%増加している傾向とも一致します。
そこで気になるのは、どのクラウド環境を選ぶのかという点です。
デジタルトランスフォーメーションのトレンドを掘り下げた際に述べたように、組織はアプリケーションごとにデプロイ先を選択する可能性が最も高いと考えられます。コストやセキュリティをはじめとする無数の要因を比較検討し、あらゆるクラウド形態を対象に答えを導き出そうとしています。文字どおり、すべてです。

昨年、回答者が利用しているクラウドモデルは平均1.8種類であることがわかりました(プロバイダーではなく、モデルの種類です)。今年は平均2.1種類に増加しました。これがクラウドプロバイダーの利用状況として具体的に何を意味するのかを尋ねたところ、過半数(59%)がすでに2~6社の異なるプロバイダーを利用していることがわかりました。また、約10人に1人(9%)が現在7~10社の異なるクラウドプロバイダーを管理しています。
回答者はすでにマルチクラウド環境で運用しており、複数のプロバイダーやクラウドモデルにまたがってアプリケーションを管理していることが明らかになりました。実際、すべてのモデルで2017年を上回る利用増加が見られました。ただし、全体としては、パブリックサービスやオフプレミス環境の利用が拡大する傾向にあります。たとえば、オンプレミスのプライベートクラウドの利用は前年比でわずか1%の増加にとどまった一方、パブリックIaaSは6%、オフプレミスのプライベートクラウドは実に11%増加しました。
回答者が1つのクラウドモデルのみに投資している場合、最も多いのは依然としてオンプレミスのプライベートクラウドで、51%を占めています。しかし、「優先」クラウドとして他のモデルを選ぶ割合も増加しており、この傾向が今後も続く可能性を否定するデータはありません。
オフプレミスのパブリッククラウドサービスが爆発的に普及するうえで、依然として足かせとなっているのが、解決すべき課題です。予想どおり、課題はセキュリティとパフォーマンスに集中しています。マルチクラウドに課題がないと回答したのは、わずか5%でした。残る回答者は全員、何らかの課題を抱えています。最大の課題は、すべてのアプリケーションに一貫したセキュリティポリシーを適用することで、回答者の42%が挙げました。僅差で続いたのもセキュリティ関連で、具体的には既存および新たな攻撃からアプリケーションを保護するという課題です。40%がこれを課題として挙げています。また、33%がアプリケーションのパフォーマンス最適化に苦慮しています。パフォーマンスへの懸念が際立つ理由は2つあります。第1に、これはセキュリティではないという点です。第2に、デジタルトランスフォーメーションによる主な影響の1つとして、パブリッククラウドからのアプリケーション提供への移行が挙げられているためです。アプリケーションが消費者向けか社内向けかを問わず、パフォーマンスは極めて重要です。動作が遅い、または応答しない業務アプリケーションは、生産性向上の効果を損なう可能性があります。一般公開されるアプリケーションではさらに深刻で、パフォーマンスの低いアプリケーションを10人中8人の顧客が「削除」したことがあるとされています。

興味深いことに、マルチクラウド環境を構成するプロバイダーの数が、こうした課題に影響を及ぼす場合があるようです。
利用するクラウドプロバイダーが増えるほど、各プロバイダーのコスト効率を判断することは容易になる傾向が見られます。一方、組織が利用するプロバイダーが増えるほど、アプリケーションの健全性(ステータス、パフォーマンス、キャパシティ)を把握することは難しくなります。
興味深いことに、利用しているプロバイダーの数は、パフォーマンスの最適化やセキュリティポリシーの一貫性確保といった課題には、ほとんど影響しないようです。パフォーマンスの最適化を課題として挙げた割合は、2~6社のクラウドプロバイダーを利用している回答者では41%、11~20社を利用している回答者では40%でした。
こうした課題は、その運用環境と同様に現実のものであり、対処が必要です。特に、利用するプロバイダーの数が増え続ける中では、なおさらです。異なる運用モデル、API、コンソール、アプリケーションサービスが混在すると、クラウド環境の混乱が瞬く間に常態化し、アプリケーションに最適なクラウドを選択することで得られたはずの運用上のメリットが損なわれる可能性があります。
マルチクラウドは単なるマーケティング用語ではありません。現実に存在し、実際の組織が今まさに課題に直面しています。
「デジタルトランスフォーメーション」、マルチクラウド、アプリケーションサービス、セキュリティ、自動化、そして進化を続けるNetOpsについてさらに詳しく知りたい方は、「2018 State of Application Delivery」レポートをダウンロードし、Twitterで@f5networksやハッシュタグ#soad18をフォローしてください。今後のブログでも、レポートには掲載されていないデータや見解を含む、さらなるインサイトをお届けします。
著者について

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。
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