デジタルトランスフォーメーションがもたらす最大の影響の1つは、アプリケーション開発の変革です。従来、アプリケーション開発に新しいアーキテクチャが導入されてから本格的に普及するまでには、通常、数年を要していました。業界全体を席巻するアプリケーションアーキテクチャは、最終的に事実上の標準となります。1990年代半ばから後半にかけて、J2EEが徐々に、しかし着実に3層Webアプリケーション開発の「エンタープライズ標準」となったのが、その一例です。
現在、定着して新たな標準になると見られているアーキテクチャが、クラウドネイティブです。コンテナを基盤とするこうしたマイクロサービスアーキテクチャは、あらゆる業界の新規開発プロジェクトで急速に主流になりつつあります。このようなアプリケーションの多くがデプロイ、運用されているKubernetesの普及は、この最新のアプリケーションアーキテクチャが今後も定着していくことを示しています。F5の調査によると、デジタルトランスフォーメーションを背景に、少なくとも半数の組織が「新しいアーキテクチャ」を検討しています。

これは多くの場合、組織が「モダナイゼーション」の途上にあることを意味すると解釈されます。そして業界では、モダナイゼーションを非常に大まか(かつ曖昧)に語りがちです。まるで組織が魔法の杖をひと振りするだけで、すべてのアプリケーションがこの新しいモデルに基づいて構築されるかのように。
実際には、組織がアプリケーションをモダナイズする方法は数多くあります。リファクタリングに取り組んでいる組織は一部(37%)にすぎません。リファクタリングにはさまざまな手法があり、なかでも特に一般的なのがRed Green Refactorです。このほかにも、準備的リファクタリングや、抽象化に基づく複数の手法から選択できます。その多くは、コードの簡素化を基本としています。つまり、アプリケーションへの影響を抑えた書き換えを主に採用しています。
しかし、モダナイゼーションにおいて、全面的な書き換えが最善の戦略となる場合もあります。一般に、既存のレガシーアプリケーションを全面的に書き換える作業には多大な労力がかかり、デジタルトランスフォーメーションを強く推進する人でさえ、ためらうほどです。しかし、場合によっては、大幅なコスト削減につながる可能性があります。
ある連邦政府機関がアプリケーションポートフォリオのモダナイゼーションに採用したアプローチを見てみましょう。この機関にはアジャイル手法への移行が義務付けられていたため、従来のウォーターフォール方式でアプリケーションを開発するには特別な許可が必要でした。ウォーターフォールは、私がコーディングをしていた頃には主流の手法でしたから、確かに古いものです。この機関は、まず自らのポートフォリオを把握し、各アプリケーションの必要性を精査することが最善だと判断しました。
その監査で、約6,000のアプリケーションのうち、ほぼ同じ基本的な資産管理業務を行うものが200近くあることが判明しました。ここで、その基本的な業務機能に変更が必要となり、200のアプリケーションすべてを修正しなければならない状況を想像してみてください。
同じビジネス機能を開発、テスト、デプロイするために、開発者と運用担当者は多大な時間と労力を費やすことになります。
この機関は、200個すべてのアプリケーションを、現在では機関全体で資産の追跡に利用できる単一のマイクロサービスに置き換え、モダナイズすることを決定しました。アジャイル手法で開発され、モダンな環境で運用されるこのマイクロサービスは、部門ごとに専用の個別アプリケーションを使用していたすべての業務のニーズに対応できるようスケールできます。
モダナイゼーションの取り組みが、すべてリファクタリングを重視しているわけではありません。アプリケーションポートフォリオ全体にとってモダナイゼーションが何を意味するのかを戦略的に検討することで、ビジネス上の大きなメリットが得られる可能性があります。多くの組織、特に数十年にわたって事業を続けてきた組織では、ポートフォリオにおける同じ問題、すなわち重複が生じがちです。組織再編、買収、合併、経営陣の交代によって、アプリケーションの重複は容易に発生します。
モダナイゼーション戦略の一環として、アプリケーションの監査と合理化を実施することは、あらゆる組織にメリットをもたらします。数百ものアプリケーションを保有していても、実際に必要なのはその一部にすぎないことが判明するかもしれません。このような戦略により、リーダーは、新しいアーキテクチャでまったく新しいアプリケーションを開発する妥当性を示し、アプリケーションの重複とそれに伴うコストを解消できます。
著者について

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。
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