AI時代のデータは、ただそこにとどまっているわけではありません。複製、移行、マイニング、再トレーニングが行われ、当初のアーキテクチャでは想定していなかったほど多くのゾーン、クラウド、サービスにわたって提供されます。それでもなお、マルチクラウドネットワーキングを「プライマリを1つ選び、障害時に切り替える」ものと考えているなら、すでに後れを取っています。
AIは従来のモデルを崩壊させました。
スタックにLLMやエージェント型AIを導入した瞬間、データは静的なものではなくなります。動的なものとなり、データレイク、データウェアハウス、推論エンドポイントの間を絶えず移動します。もはや、クラウド間で同期するだけではありません。分断されたコンピューティングとストレージのメッシュ全体で、高スループット、低レイテンシ、ポリシー準拠のレプリケーションループをオーケストレーションすることになります。
そして、そのメッシュは急速に拡大しており、管理に伴う運用の複雑さも増しています。
EquinixとF5 Distributed Cloud CE:AIに必要なマルチクラウド基盤
Equinixのグローバル相互接続ファブリックは、マルチクラウドを大規模に実現するための物理および仮想基盤です。そのエコシステムに直接組み込まれたF5 Distributed Cloud Services Customer Edge(CE)は、AI時代のデータフローを実際に制御するために必要なセキュリティとアプリケーションレイヤーのインテリジェンスを提供します。
両者を組み合わせることで、単にパケットをルーティングするだけでなく、その意図に沿って制御できます。
EquinixにF5 Distributed Cloud CEを導入することで、企業は次のことが可能になります。
- クラウド環境全体で統一されたポリシーを適用:AWSからAzure、Oracleまで、環境間のトラフィックが瞬く間に流れる状況では、一貫したポリシー適用は単なる目標ではなく、事業継続に不可欠であり、コンプライアンスの重要な要素でもあります。特に、組織の53%が、F5の調査で一貫性のないセキュリティポリシーはマルチクラウド環境の管理で最も不満を感じる点だと回答しています。クラウドごとに異なる「セキュア」の基準を適用していては、すでに後れを取っています。統一することで、死角を減らし、監査を迅速化し、トラフィックがクラウドの境界を越えてもポリシーの一貫性を維持できます。
- レイヤー7(L7)トラフィックを終端して検査し、機密性の高い推論エンドポイントに到達する前に対処します。AIセキュリティは、あらゆる環境で最優先の課題です。その実現には、転送中のペイロードを大規模に復号、正規化し、ポリシーのコンテキストに基づいて評価する機能が必要です。単に不適切な言葉をスキャンするだけではありません。トラフィックの流れを遅らせることなく、プロンプトインジェクション、ジェイルブレイクの試み、安全でない出力を検査します。このレベルのポリシー適用には、プロトコルを完全に認識するインラインL7制御が必要ですが、従来のファイアウォールはそのために設計されていません。
- 各クラウドの内部だけでなく、エッジでレート制限、ヘッダーの書き換え、認証を適用する。トラフィックが環境の奥深くに到達してから制御が機能し始めるのでは、すでに手遅れです。エッジで制御を適用することで、不正利用が広がる前に阻止し、後段の要件に合わせてヘッダーを書き換え、機密性の高いワークロードに到達する前にすべてのリクエストを確実に認証できます。速度が重要でデータが絶えず流れるマルチクラウドAIパイプラインでは、ポリシーをクラウドエッジまで拡張することで、高速性とセキュリティを維持しながら、制御を確保できます。
- ロギング、トークン検査、利用状況分析のためのサービス挿入ポイントを設けることは、規制対象のAI環境では特に重要です。AIワークロードでは膨大なやり取りが発生し、その多くはデフォルトでは可視化されません。可視性を確保するための専用チェックポイントがなければ、企業は必要なレベルの可視性を得られません。サービスをインラインで挿入することで、プロンプトデータを取得・分析し、異常や違反を検出して、監査に対応できるログを生成できます。これは従来型のマルチクラウドではありません。場当たり的な対応やルートマップではなく、実効性のある適用ポイントと再利用可能なポリシー基盤を備えた運用型マルチクラウドです。
クラウド横断のデータマイニングは、セキュリティ上の悪夢
AIモデルは大量のデータを必要とします。顧客履歴や財務記録、さらには医療画像など、多くの場合機密性の高い大規模なデータセットが求められます。また、そのデータがどこに保存されていても、データへの「アクセス」が必要です。
つまり、現在のアーキテクチャは以下をサポートしています。
- クラウドプロバイダー間のアクティブレプリケーション
- トレーニングと再トレーニングのためのクロスクラウドデータマイニング
- ワークロードプロファイルとGPU料金に基づく推論呼び出しのルーティング
これらはいずれも、境界防御だけでは適切に制御できません。
さらに深刻なのは、ほとんどの企業がこうしたフローを明確に把握できてすらいないことです。SaaSプラットフォームに組み込まれたサードパーティ製AIツールや、社内のエージェント型ワークフローをきっかけに、シャドーデータパイプラインが次々と生まれています。強力なトラフィック検査とクラウドごとのセグメンテーションがなければ、IAMポリシーの設定を1つ誤るだけで、機密データが不適切なモデル、さらには他者のモデルに取り込まれかねません。
Equinixに接続された環境全体にDistributed Cloud CEを導入することで、ほとんどのAIアーキテクチャではまだ実現できない、次のことが可能になります。
- AI主導のデータフローをマッピングしてログに記録し、L7を完全に可視化
- 不正なレプリケーションイベントを制限またはブロック。信頼済みのクラウド間でも適用されます
- サービスロジック(トークン検証、地域ブロック、ログ記録など)をストリーム内に挿入
- モデルのトラフィックを標準的なアプリフローから分離し、影響範囲を縮小してフォレンジック対応の準備態勢を強化します
これこそ、現代のマルチクラウドに必要なものです。AI時代のマルチクラウドでは、稼働時間だけでなく、ガバナンス、トレーサビリティ、信頼性も重要だからです。
重要なのはスピードだけではありません
誰もがスピードを求めています。ビジネスには不可欠であり、消費者は当然のものとして期待し、AIにも必要です。つまり、低レイテンシ、高スループット、高速な同期が求められます。しかしAIでは、制御を伴わないスピードは、いつ侵害が起きてもおかしくない状態を招きます。
EquinixとF5 Distributed Cloud CEを組み合わせる真のメリットは、単なるパフォーマンス向上ではなく、ポリシーに沿った俊敏性にあります。セキュリティや可観測性を損なうことなく、クラウド全体で推論、レプリケーション、データマイニングを拡張できます。さらに、あらゆる場所に導入できるプラットフォームに標準化することで、マルチクラウド運用の複雑さを軽減できます。プロバイダーごとに適用制御、ロギング、トラフィックシェーピングを一から構築するのではなく、コア、クラウド、コロケーション、エッジを含むすべての環境に一貫した制御を適用し、ガバナンスと成長の両方を効率化できます。
それが、スケールするAIと、複雑性が爆発するAIの違いです。
詳しくは、F5とEquinixのWebページをご覧ください。
著者について

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。
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