2022年当時、新しいプロトコルやデータをめぐる議論が市場で活発になる中、アプリケーションアーキテクチャに微妙な変化が起きていることに気づきました。これはそれほど意外なことではありませんでした。というのも、当時述べたように、歴史的にアプリケーションアーキテクチャは5年ごとに台頭し、アプリケーションデリバリとセキュリティの市場を形作り始め、その約5年後には主流となるからです。
2023年当時、私はこの変化が2025年頃には顕在化すると考えていました。しかし、生成AIの登場と、それがこれらのアーキテクチャの進化に及ぼす爆発的な影響までは予見できませんでした。
つまり、その変化は予想以上の速さで進んでおり、文字どおりあらゆるものに劇的な影響を及ぼすことになります。
しかし、アーキテクチャの進化ばかりに目を奪われる前に、その原動力となっているもの、つまりデータをしっかり理解する必要があります。
さまざまな種類のデータ
一般に「データ」と聞くと、多くの人は、巨大なRDBMSのどこかに格納された顧客データや製品データの行をすぐに思い浮かべます。もちろん、全員ではないかもしれませんが、多くの人がそう考えます。これは、主流のデータストレージ設計が、構造化された表形式のデータを重視しているためです。スプレッドシートを開けば、その意味がお分かりいただけるでしょう。スプレッドシートは行と列で構成されており、RDBMSも実際にはそれほど大きく異なりません。
NoSQLやキーバリューデータストア、オブジェクトストアなどのデータ構造が存在する以上、アプリケーションアーキテクチャは表形式データを中心に構成されているわけではない、という見方もできます。しかし実際には、やはり表形式データが中心です。ほかの種類のデータストアも、それぞれ妥当な理由で利用されていますが、その理由の多くはアプリケーションにとって補助的なものでした。そのため、数十年にわたりアプリケーション構築の指針となってきた全体的なアーキテクチャ原則を大きく変えることはありませんでした。
しかし、アプリケーションの分散化が進み、ハイブリッドモデルが普及するにつれて、多くのニーズが生じています。たとえば、オブザーバビリティやセキュリティには、テレメトリデータの生成が必要です。分散環境では、分散したデータストア間の関係を把握する手段が必要となり、そのためにナレッジグラフが活用されます。また、生成AIではモデルを拡張、トレーニングする手段が求められるため、ベクトルデータベースに保存された埋め込みが使用されます。
これらはそれぞれ大きく異なる4種類のデータであり、その保存方法とアクセス方法も新たなものです。4種類すべてが、特に生成AIの活用を促進するよう設計された最新のアプリケーションにおいて、急速に「標準コンポーネント」になりつつあります。

- テレメトリは大きな変化をもたらしています。運用の分野では、テレメトリデータの実体であるリアルタイムのストリーミングデータを転送・処理するには、列指向形式がより適していることが認識されるようになっています。
- ナレッジグラフとグラフ技術は、分散データを統合し、データソース間の複雑な関係を把握する手段として台頭しています。この技術から生まれたGraphQLなどのプロトコルは、分散型エンタープライズ全体でAPIを活用してデータを検索・管理する方法を大きく変えています。
- 生成AIにおける検索拡張生成(RAG)技術の採用が進むにつれ、ベクトルデータベースは、アーキテクチャのより深い階層に配置されるデータストアではなく、アプリケーション自体の一部として利用されるようになっています。
- 最後に、生成AIのデータも忘れてはなりません。LLMは、リクエストのたびに新しいデータを生成します。そのため、セキュリティ担当者は、動的に生成される非構造化データに潜む可能性のある脅威や問題を特定する方法を見いだす必要があり、大きな課題に直面します。
この変化を推進しているのは、形式、プロトコル、用途、アプリケーションが多岐にわたるデータです。その結果、ヘッドレスアプローチが採用され、これまで多くの人が考えもしなかった方法でAPIが活用されるようになっています。つまり、従来のプレゼンテーション層にとらわれず、ビジネスのケイパビリティや機能をAPIとして公開することで、より多様なユーザーデバイスに対応する幅広いインターフェースを開発できます。APIはデータやケイパビリティを利用可能にします。だからこそ、APIはデジタルトランスフォーメーションに不可欠なのです。
マイクロサービスを活用する多くの最新アプリで、このアプローチが採用されています。これが、UIフレームワークが広く普及している(そしてインターネット上で議論を呼んでいる)理由です。こうしたフレームワークは、APIを利用して機能やデータにアクセスする個々のアプリを構築するために使用されます。これらのアプリは、ワークフローを実行し、市場に価値を提供するために利用するバックエンドの「アプリケーション」とは別のものです。
こうした動きが、ヘッドレスアーキテクチャへの移行を後押ししています。この移行はすでに始まっていましたが、生成AIの登場によってデータの重要性が浮き彫りになり、さらに加速しています。
これに伴い、ビジネスとユーザーのニーズに応えるために対処すべき新たな脅威や課題が生じ、アプリケーションデリバリとセキュリティに大きな影響を及ぼすことになります。
著者について

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。
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