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推論: あなたが無視しているAIの最も重要な要素

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ロリ・マクヴィッティ
2025年9月29日公開

誰もがAIはAPIから始まりAPIで完結すると語りたがります。 モデルを使って。 「推論完了」と表示される光沢のあるダッシュボードとともに。 しかし、その見せかけは中身を覗き込まない限り成立しません。

すべてのチャットボット、エージェント、RAGパイプライン、オーケストレーション層の基盤には、推論サーバーがあります。 これは比喩ではありません。 流行語でもありません。 JARファイルではなくモデルを実行している、文字通りのアプリケーションサーバーです。 従来のアプリケーションサーバーと同様に、推論エンジンはパフォーマンスが崩れる場所であり、可観測性が重要になる場所であり、あなたのセキュリティ領域が実際に存在する場所です。

問題は? ほとんどの人がそう扱っていません。

企業での推論は実践的なものです

Uptime Instituteの2025年AIインフラ調査によると、データセンター運用者の32%がすでに推論ワークロードを運用しています。 さらに45%が今後数カ月以内に対応を始める予定です。 これは実験段階の話ではありません。 計算基盤の大きな変化です。 にもかかわらず、私たちはまだその変化をほとんど認識できていません。

推論サーバーは理論的なものではありません。 名前があります。vLLM。 TGI。トリトン。 オラマ。 また、これらは互換性がありません。たとえば、vLLM は、PagedAttention やバッチ スケジューリングなどのアーキテクチャの改善により、Hugging Face Transformers よりも最大 24 倍優れたパフォーマンスを示し、持続的なスループットでは TGI を 3 倍以上上回っています。 これらは最適化の癖ではありません。 それらはインフラへの影響です。

具体的な数字で示しましょう。vLLM はバッチモードで毎秒500トークン以上を処理する一方、TGI は150未満にとどまっています。 プロンプトの評価時間を40%以上短縮し、それが応答速度の向上とGPUの効率的な活用へと直結します。 実際の運用では、これが推論をスムーズに拡張するか、負荷で停止してしまうかを分ける要因になります。

しかし、パフォーマンスは始まりにすぎません。 vLLMやOllamaのようなツールは、合計時間、トークン単位の評価時間帯、プロンプトと応答の割合といった詳細なアプリケーション テレメトリを提供します。 トークン数だけでなく、どのトークンがいつ、どこで、どれだけの時間をかけて処理されたかも把握できます。 その細かな分析こそがドリフトの原因を解決する鍵です。 また、それによって適切なガードレールを設定できます。 もし持っていなければ、あなたは見えないまま無秩序にスケールさせていることになります。

アプリケーションサーバの時代から継承し、推論はアプリケーション配信とセキュリティがAIと交わる場所です。ここでトラフィックステアリングと負荷分散を行い、ペイロードを検査し分析し、セキュリティとプライバシーを確実に保ちます。 プロンプトを安全に処理し、応答を絞り込み、パフォーマンスを最大化します。 ここはAIアーキテクチャの戦略的な制御ポイントであり、あなたの組織がレガシー、最新、AIいずれのアプリケーションやAPIでも共通のトップ10の配信課題に対応できる場です。 

推論が後回しにされる理由

推論はまだAPIの世界にとどまっているため、軽視されがちです。 しかし、推論を単なるイングレスの裏にあるサービスと考えているなら、負荷のかかるRAGループのデバッグを試したことがないはずです。 または、同時稼働するエージェントチェーンでの誤動作を追跡したこともないでしょう。 規制の厳しい大規模言語モデル(LLM)で、すべての判断を監査ログに残さなければならないプロンプトインジェクションに対応する際の難しさをご存じでしょうか。

それは単なる理論上の問題ではありません。 ネットワークのボトルネックがすぐそこに迫っています。

推論サーバーはあなたのモデルを収めるコンテナです。 それが実行環境です。 ボトルネックでもあります。 セキュリティの境界でもあります。 AIを実際にスケールする場所です。モデルは数学の式にすぎません。 言い換えれば、データセットであり、高度なExcelのスプレッドシートのようなものです。 そのモデル自体をスケールするのではなく、推論サーバーに読み込み、ここをスケールすればいいのです。 

もし本気でAIを実践に活かしたいなら、抽象的なアーキテクチャ図の議論をやめ、もっと本質的な質問をしてください。

  • 私たちはどの推論エンジンを使っていますか?
  • どこに展開していますか?
  • 誰がそれらにアクセスできますか?
  • 私たちはリクエストごとにどのようなテレメトリを収集していますか?

これらは単なる理論的な問題ではありません。 これはインフラの現実です。 無視すればするほど、AIの導入はどんどん脆くなります。 モデルが重要です。 APIも役に立ちます。 しかし、推論こそが現実を突きつけます。 推論をスケールしなければ、AIのスケールも実現しません。

推論はAIインフラストラクチャの核心を担う重要な要素です

多くの組織は今もAIに関してハイブリッドな状態にあり、利便性を求めてSaaSベースのツールを利用しながら、慎重にセルフホスト推論を模索しています。 問題は、SaaSが厄介な部分を覆い隠してしまう点です。 推論は洗練されたAPIや見やすいUIの背後に隠されています。 エンジンの誤動作やGPUの処理遅延、プロンプトのタイミングのズレに気づくことはありません。 しかし、一度セルフホスト環境に足を踏み入れれば(必ずそうなるでしょう)、それら全てを自分で引き受けなければなりません。 パフォーマンス、可観測性、そしてセキュリティは、単に「あると良いもの」ではありません。 それらは必須の要件です。 

組織が推論の仕組みをしっかり理解していなければ、あなたは本当の意味でAI戦略を築けていません。 単に誰かが正しいと願っているだけです。