サーバーレスで重要なのは、サーバーではなくアプリ

F5エコシステム | 2017年6月12日

「サーバーレスコンピューティング」という概念には、多くの混乱がつきまとっています。その原因は、この名称がかなり実態にそぐわないことにあるのかもしれません。サーバーに関するものでも、コンピューティングに関するものでもありません。少なくとも、多くのITプロフェッショナルが使う従来の意味では、どちらにも当てはまりません。

サーバーレスは、Functions as a Service(FaaS)と呼ぶ方がはるかに適切です。実際に提供されるものがFaaSだからです。FaaSがサーバーレスであるのと同じ意味で、SaaSも、そして当然ながらPaaSもサーバーレスだと言えます。通常は開発者である利用者の視点では、サーバー、つまりコンピューティングが考慮の対象から外れるためです。コンピューティングリソース(サーバー、ネットワーク)は利用者から見えないところに置かれ、最終的にはサービスプロバイダーが統括する自動化とオーケストレーションの仕組みによって、自動的にプロビジョニング、管理、スケーリングされます。料金は支払いますが、それらを目にする必要はありません。

サーバーレスFaaSは、SaaSやPaaS、あるいはクラウド全般に取って代わるものではありません。既存のモデルに重ねて利用できる新たな選択肢であり、開発者は必要に応じて関数を呼び出せます。これはイベント駆動型であり、イベントによって関数がトリガーされます。そのイベントは多くの場合、特定のURIを指定したHTTPリクエストという形で行われるAPI呼び出しです。そう、API呼び出しです。

FaaSのユースケースとして最もよく挙げられるのは、画像や動画の処理です。これは、必要なリソースの利用頻度と容量を予測しにくいことが多いためです。FaaSを利用すれば、こうしたメディアを呼び出し単位で低コストかつ効率的に処理できます。もう1つの例はIoT分野です。ここでは、コントローラーアプリまたはモノ自体で発生するイベントによってアクションがトリガーされます。また、APIバックエンドのユースケースもあります。APIは関数を呼び出すURIとして説明されることが多いため、ほかのどのユースケースよりも理解しやすい場合が多いでしょう。関数の処理内容にかかわらず、関数は特定のイベントによってトリガーされた場合にのみ実行され、単一の独立した関数であることが想定されています。

アプリケーションの分解

これは、一般に目にしたり話題にしたりするクラウドとは異なります。クラウド(IaaS)がインフラストラクチャと運用を対象とするのに対し、FaaS(およびPaaSとSaaS)はアプリケーションを対象とするためです。これらは開発環境として設計されており、開発者は、より大規模なアプリケーション開発の一環として、特定のタスクを実行するコードを実装できます。複数のFaaS実装を組み合わせてアプリケーションを構築できるのでしょうか。もちろん可能です。実際、この点では、FaaSとSaaSの関係は、マイクロサービスとモノリスの関係に相当します。

しかし、まさにそこがポイントです。FaaSが対象とするのはサーバーではなく、アプリケーションです。FaaSでクラウドを構築することはできませんが、アプリケーションを開発することはできます。アプリケーションを「サーバーレス」環境へそのままリフト&シフトすることはできません。アプリケーションを分解して再構築する、いや、複数のFaaSで構成されるように再設計する必要があります。

組み合わせ(あるいは順列でしょうか?)は多岐にわたります。IaaSにデプロイしたアプリから、PaaSとともにFaaSを利用することも考えられます。IaaSとPaaSはオンプレミスに配置し、FaaSはパブリック環境で利用する構成も可能です。

SaaS、PaaS、FaaSでは、実際に「サーバー」を目にすることはありません。一方、IaaSでは事情が異なります。サーバーを「インスタンス」と呼び、その管理と保守が必要です。これは、オンプレミスかパブリックかを問わず、IaaSがアプリケーションではなく、インフラストラクチャと運用を提供するものだからです。これは以前から変わりませんが、「サーバー == アプリケーション」が長らく当たり前だったため、過去10年間は意識せずに済んでいました。

しかし、マイクロサービスやAPIが普及し、さらにFaaSが登場した今、「サーバー == アプリケーション」という前提で運用を続けることはできません。もはや、この等式は成り立たないからです。

結局のところ、FaaSの本質はサーバーではなく、これまで理解されてきた意味でのクラウドですらありません。しかし、アプリケーションのアーキテクチャを設計し、構築する方法を大きく変える可能性があります。

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タグ: 2017

著者について

Lori Mac Vittie
Lori Mac Vittie特別技術者兼チーフエバンジェリスト | F5

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。

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