デジタルトランスフォーメーションとは、デジタルビジネスへの移行を目指す道のりです。その過程で、ITとビジネスの関係は変化します。ITは支援役から実現を後押しする存在へ、さらに全面的なパートナーへと進化し、完全に機能するデジタルビジネスを実現します。これは、完全に機能するデジタルビジネスがテクノロジーを通じて具現化されるために不可欠です。その健全性は、ビジネスを支えるITスタック全体の無数のコンポーネントが生成するデジタルシグナルによって測定されます。その成否は、デジタルサービスのセキュリティと拡張性によって決まります。競争力は、インフラストラクチャ、アプリケーション、システム、そして何よりも人材と実践手法の適応力にかかっています。
デジタルビジネスのあらゆる領域が、テクノロジーと密接に結び付いています。
最終的に、この道のりが目指すのは、ビジネスとテクノロジーの統合です。この道のりには成熟度を示す指標があり、テクノロジー部門とビジネス部門のリーダーが、これまでの進展と今後取り組むべき課題を把握するのに役立ちます。
この変革については、以前、F5の書籍『デジタルビジネスのためのエンタープライズアーキテクチャ』で説明し、この道のりを加速するために必要な「6つの技術的能力」についてさらに詳しく掘り下げました。
- インフラストラクチャ
- アプリケーションデリバリー
- データ
- SRE運用
- オブザーバビリティと自動化
- セキュリティ
企業がデジタルビジネスとして成長するための準備状況を測定できるよう、F5はこれらの技術的能力に基づくモデルを開発し、年次調査「State of Application Strategy」の回答組織から選定した約300組織を分析しました。その回答を基に、企業がデジタルビジネスとして成長するための準備状況を測定するモデルを構築しました。測定対象には、F5の書籍で特定した6つの主要能力に不可欠な中核ツールやテクノロジーの活用、およびプラクティスの導入が含まれます。
このたび、その分析結果を新しいレポート「Digital Enterprise Maturity Index」としてお届けできることを大変うれしく思います。
多くの組織がデジタル成熟度を高められる時代へ
F5の分析によると、大半の組織(65%)は、デジタル生産性に数十年にわたって注力し、近年ではデジタルエクスペリエンスにも取り組んできたにもかかわらず、デジタルビジネスとして成長するために必要なツール、テクノロジー、プラクティスをいまだに試している段階にとどまっています。
デジタルエンタープライズの成熟度が高まり続けるなか、今後数十年でデジタルビジネスへの移行は目覚ましく進展するでしょう。ただし、この進展を支えるのは、次々と登場する新しいテクノロジーをそのペースに合わせて取り込み、統合できる適応性の高いエンタープライズアーキテクチャの実現を目指す、継続的なテクノロジーの進化です。
成熟化は、取り組むべき課題があまりに大きいため、さらに困難になります。人間が成熟に向けて最も大きく成長するのが思春期という1つの段階であるように、ほとんどの組織も、デジタルトランスフォーメーションの第2段階、すなわちITスタックのモダナイゼーションをIT部門が一段と強化する段階で、成熟に向けて最も大きく前進します。ほとんどの組織では、既存のITスタックが複数の領域にわたって複雑に相互接続されています。デジタルエンタープライズのニーズに対応するには、定着した慣行やアプローチをモダナイズする必要があります。そのため、この取り組みは計り知れないほど困難になり、場合によっては混乱を招きます。大手航空会社が公の場で厳しい批判にさらされた事例を思い起こせば、モダナイゼーションは必要である一方、リスクも伴うことがわかります。
それでも、この取り組みをなかなか進められずにいる約3分の1(31%)の組織でも、足踏みしている1つまたは2つの領域で成熟度が高まる兆しが見られます。これは、進展が6つの主要な能力に重点を置くプロジェクトの優先順位付けと密接に結び付いていることを示唆しています。また、最も成熟した組織、すなわちF5がデジタル化の実践者と呼ぶわずか4%の組織でさえ、いくつかの主要な能力の成熟度に依然として課題を抱えています。そのため、デジタルトランスフォーメーションのこの段階を順調に進めるうえで、テクノロジーリーダーシップが極めて重要な役割を果たします。
デジタル成熟度がもたらす影響
デジタル成熟度の状況を分析するだけでなく、成熟度の各段階にある組織がテクノロジーをどのように活用しているかも調査しました。その結果、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みが遅々として進まない組織の39%はパブリッククラウドをまったく活用していない一方、デジタル成熟度が最も高い組織ほど、事業継続やグローバル展開の実現にパブリッククラウドを利用する傾向が強いことがわかりました。
成熟度の各段階におけるデジタル分野の優先事項とメリットに加え、プラットフォームおよびAI/MLの活用に関する戦略計画についても調査しました。
今回の調査結果は必ずしも意外なものではありませんが、デジタルビジネスとして事業を運営するには多大な努力が必要であり、現時点でゴールに到達したと言える企業はごくわずかだという前提を裏付ける傾向にあります。つまり、ほとんどの企業が同じ道のりを歩み、同じ課題に苦慮しています。これは心強い事実です。また、デジタルトランスフォーメーションの取り組みを継続することで確かなメリットが得られることも明らかであり、取り組むだけの価値があります。
デジタル成熟度の現状に関する調査結果の詳細については、「Digital Enterprise Maturity Index」をご覧ください。
著者について

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。
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