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抑えるべきアプリケーション基盤の最新動向を世界と日本で比較してみた。

F5 サムネール
F5
Published February 27, 2019

皆さん、こんにちは。先月の私のブログでもご紹介した通り、毎年発表している弊社のアプリケーション基盤の利用動向調査の最新版である2019年度結果が発表されました。簡単にご紹介しますと、これは全世界のユーザ企業様に対してオンラインでアンケート形式のアプリケーション基盤技術の利用動向をお聞きし、集計したものになります。日本からも多数のご協力、ご参加をいただきました。この場を借りて厚くお礼申し上げます。

さて、今回のグローバルのレポート発行に伴い、特に日本のユーザ企業様向けに結果を一部抜粋でご紹介したいと思います。因みに回答数は全世界で3026名の方々、日本だけでも245名の皆様にご協力頂きました。様々な分野に渡る質問項目がある当レポートですが、今回から複数回に分けてご紹介します。今回は特にデジタル革新プロジェクトの取り組みに関する項目ついての結果ご紹介、考察をいたします。

奇しくも、先日調査会社のIDCジャパン様も日本のデジタルトランスフォーメーションに関する2019年の見通しを「Prediction」という形で発表されていました。筆者もこちらのイベントにご招待いただき聴講してきたのですが、いわく、今年はデジタル革新(DX)の現実界を求める企業が増加し、その関連支出が増加するという見立てでした。現実解の定義解説などは上記の記事に譲るとしまして、ここでは弊社の調査の結果をご紹介しつつ見比べてみようと思います。果たして日本の回答者の皆様は5才児に叱られるのか?!

デジタルトランスフォーメーション(デジタル革新)の今

結論から言うと、日本は世界平均より若干回答率が低いものの、それなりにトレンドに沿ったデジタル革新の取り組み率となっています。当然、更にアグレッシブな国・地域も存在するわけで、筆者の担当地域で特に激しいのがオセアニア(ほぼオーストラリア・ニュージーランド2カ国を指す、とお考えください)、及びASEAN地域でした。勿論、日本人は一般的には調査回答時に謙遜する傾向がありますので、そこも差し引いて見るとまずまずの状態かと思われます。何しろオセアニアはパブリッククラウドの導入率の高さなどでも世界最高レベルとしてよく知られた地域ですし、ASEANもシンガポールなど国策としてデジタル技術を推進している点では納得の回答率なのですから。

Chart: Digital Transformation projects in place

デジタル革新の中身では、、、?

一方、それにまつわる動機や目的などを見てみると幾つか興味深い傾向が見て取れます。まず、デジタル革新を活用する道として日本の回答者は新事業への取り組み模索の回答率が世界平均より若干高い(51.9% vs 44.5%、日本VS世界スクリーンショット が含まれている画像自動的に生成された説明平均、以降、全て同じ順で表記)半面、既存事業の差別化への活用などは意識が低い(29.8% vs 45.9%)のが特徴です。

言い換えると、従来の事業領域の中で新しいことを模索するより、今までに事業を行っていなかった分野や市場向けにデジタル技術を活用する思惑が強い、ということになります。一概に結論を集約は出来ませんが、日本国内のビジネス環境の成熟度の高さが関連しているかも知れません。つまり、既存のビジネス領域が飽和に近ければ近いほど、当然ビジネスの成長を求めるのは新規事業、新規のマーケットに移っていく、という事です。

Chart: Changing how we deliver applications to production environments

一方、基盤となるアプリケーションやシステムの開発現場にデジタル革新の影響はどのように及んでいるか、という点では課題と認識するべき点が読み取れます。アジャイル開発への移行、アプリケーションリリースの頻度向上の二点、双方において日本の回答率は世界平均を下回り、デジタル技術を活用した熾烈な競争の重要な基盤を支える組織や体制への移行が日本では遅れているのが若干の懸念事項となります。大きな差ではありませんが、一般的に日本のカルチャーと相入れにくい手法・文化や体制の構築が絡む点であることを鑑みると、日本のデジタル革新における検討事項として無視できない点と考えます。また、関連する中長期的な興味分野の質問項目については日本の回答者は世界平均と比べて非常に機械学習・AI分野への興味度合いが突出しており、ほかについては概ね平均以下である、というのも興味深い点です。昨今話題に上がることが多い働き方改革の推進等においてRPAなどが注目されていますが、同じ文脈でこの分野への興味度合いが高まっている可能性もあります。

 

Chart: Big data analytics vs. machine learning and AI

デジタル革新、ぼーっと取り組まないためには。

流行り物に乗っかるのは得意ではないのですが、世間で話題になっている5才児に叱られる番組で必ずキーとなるフレーズがあります。(決め台詞じゃないほうです)筆者は、あれほどビジネスにも転用できる要素が詰まった番組はそうそう無いと思っております、、、そのセリフとは:「なんで?」です。

ここでそのセリフを使うとしたら、「どうしてあらゆる業界の企業が今、デジタル革新を模索しているの?」という問いです。つまり、デジタル革新をしたいから取り組むわけではない。デジタル革新は手段であって目的ではない。目的は全て、ビジネス上の何らかの目標であるべきであり、その実現のために手段であるデジタル化や基盤技術の取り込みなどがあるべきです。「『なんか周りがパブクラ使い始めてるからウチもそろそろ移行するか』だの、『ドッカー最高!ハードウェアなんて過去の産物だからコンテナ化進めようぜ!』だの、のほほんと構えているネットワーク担当者のなんと多いことか」と煽られることは避けましょう。

当ブログの最初にご紹介したIDC様のPredictionの公園の中で個人的に思ったのは、IDC様のおっしゃる「デジタル技術の活用が日々の業務の中に入り込んでいる状態が重要」「日本はデジタル革新が通常業務から離れたところで起こっていないかが懸念である」というコメントでした。これは言い換えると、従来の業務が何もデジタル技術のおかげで改善・進化していない事と同義かと思います。恐らく、あるべき姿はむしろ「業務のやり方、プロセスが大幅に変わった・改善した、と誰もが感じるデジタルの活用方法であり、それを実現する方策をプロアクティブに考えるのがIT・情シス部門、デジタル部門に求められている役割かと思われます。ビジネスの現場から不平不満が出る暇がない勢いでを情シス・デジタル部門を中心に、ビジネスの目的、ゴールを理解した上で、それに寄り添った情報技術戦略の策定を進めていき、世界平均に先んじた事業展開を我が国でも実行するべく業界一丸となって取り組みたいものです。

尚、今回のグローバル全体の結果を取りまとめた英語版レポートはこちらに、日本の結果を集約した日本サマリ版はこちらから入手可能となっております。皆様の知見のお役に立てれば幸いです。