企業がAIの力を活用する方法を模索する中、多くの企業が意思決定の改善に向けて大規模言語モデル(LLM)を導入しています。しかし、ChatGPTなどのLLMは、インターネット上で公開されている膨大なデータを基にトレーニングされているため、自社データから知見を得る目的でAIを活用したい企業にとっては有用性が限られます。さらに、こうしたモデルのトレーニングには数か月の期間と多額の費用がかかる場合があり、すべての回答が真に有意義かつ最新であることを保証するのは事実上不可能です。
では、企業は自然言語処理をどのように活用すれば、自社固有のデータから有用かつ最新のAIインサイトを得られるのでしょうか。独自のLLMを構築するには、現実的ではないほど多額の費用がかかります。既存のLLMを専門データでファインチューニングする場合も同様です。
幸い、こうした制約を克服する手段として、検索拡張生成(RAG)が登場しました。この高度なAI技術を使用することで、企業はChatGPTなどの事前学習済みLLMと自社の専有データを組み合わせ、正確でコンテキストを考慮した回答を得られます。また、承認済みの社内手順、ポリシー、製品情報など、関連性が最も高い情報源のみを参照することで、使用するデータを制限できます。さらに、RAGは企業のベクトルデータベースからリアルタイムで情報を取得するため、新しいデータが追加されるたびに、常に最新の情報を得られます。
LLMのメリットと企業データの融合
RAGは、データ検索と言語生成を効果的に組み合わせます。リトリーバーは検索エンジンのように機能し、高度なアルゴリズムを使用して、ユーザーのクエリに基づき、関連性の高い情報だけを収集します。ジェネレーターには通常、ChatGPTのようなLLMが使用され、この情報を基に正確で十分な根拠のある回答を生成します。この2つのコンポーネントを統合することで、企業は競争優位性につながるカスタマイズされたAIシステムを構築できます。

応用の可能性は多岐にわたります。営業・マーケティングチームは、市場レポート、顧客からのフィードバック、ソーシャルメディアのフィードに含まれる情報を迅速に組み合わせ、購買傾向や顧客の嗜好を把握できます。カスタマーサービスチームは、製品情報、顧客プロファイル、購入履歴を活用して顧客からの問い合わせにパーソナライズされた回答を提供するRAG搭載チャットボットにより、顧客ロイヤルティを高めることができます。法務チームは、法的助言を行う際に、契約書、判例、その他の文書からAIが学習した知見を容易に活用できます。RAGは、複数のデータベースに保存された関連性の高い最新の構造化データと非構造化データを従業員が迅速かつ正確に活用できるよう支援します。これにより、業務の生産性向上、顧客体験の改善に加え、作業負担の軽減と顧客ロイヤルティの向上による収益拡大が可能になります。
RAGはエンタープライズAIを変革する可能性を秘めていますが、依然としていくつかの障壁があります。大きな課題の1つは、多くの企業が導入している分散型IT環境全体からデータを取得し、統合することです。現在、大半の企業は、非常に複雑なハイブリッド/マルチクラウド環境でアプリケーションを運用しています。また、データは通常、オンプレミスのデータセンターや、Microsoft Azure、Google Cloud Platform、AWSなどの複数のクラウドを含むさまざまな場所に保存されているため、サイロ化されたこれらすべてのデータをLLMと統合するのは容易ではありません。さらに、適切な保護対策を講じなければ、個人情報が漏えいするリスクもあります。
ハイブリッド/マルチクラウド環境全体へのRAGの実装
F5は、こうした課題を解決するため、データインフラストラクチャ企業のNetAppと連携してきました。F5のセキュアで高性能なマルチクラウドネットワーキング機能と、NetAppの堅牢なデータ管理ソリューションを統合することで、企業データがどこにあっても迅速に取得し、LLMと安全に組み合わせられるようにしています。
NetAppのCloud Volumes ONTAPとAzure NetApp Filesは、データ保護とコンプライアンスを強化しながら、クラウドストレージのコストとパフォーマンスを最適化します。F5 Distributed Cloud Network Connectと組み合わせることで、データの保存場所を問わず、ゾーンやリージョンをまたいでデータを迅速かつ安全に接続し、移動できます。
企業がビジネスの成長につながるLLMアプリケーションの提供方法を模索する中、両社の共同ソリューションは、コストを削減しながら、データをシームレスに管理、保護、最適化する手段を提供します。企業データのプライバシーは維持されます。また、ユーザーは、デジタル時代に成功するために必要な、正確かつタイムリーで、状況に即した情報を入手できます。
F5の最高技術・AI責任者であるKunal Anandは、次のように述べています。「両社の共同ソリューションは、比類のないパフォーマンスと堅牢なセキュリティを提供し、企業がそれぞれ固有のビジネス環境でAIの能力を安心して活用できるようにします」
エンタープライズAIの可能性を最大限に引き出す
このパートナーシップは、F5とNetAppによるこれまでの協業を基盤として、企業のハイブリッド環境とマルチクラウド環境の接続を支援するものです。そして、これは始まりにすぎません。今後数か月にわたり、分散したIT環境全体で企業がAIの力を最大限に引き出せるよう、引き続き両社で連携して支援していきます。
詳細については、プレスリリースをご覧ください。また、F5とNetAppのWebページもご覧ください。
著者について

Hunter Smitは、F5でソリューションおよび戦略担当のプロダクトマーケティングシニアマネージャーを務めています。AIインフラストラクチャやアプリケーションセキュリティを含むF5ポートフォリオ全体のソリューションマーケティングを統括し、新興のAIデータデリバリー市場へのF5の参入を推進しています。Whitworth University School of Businessの諮問委員会メンバーであり、プロダクトマーケティングの非常勤講師も務めました。Whitworth UniversityでMBAおよび経営学の学士号を取得しています。
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