コンテナを利用する開発者にとってインフラストラクチャが重要な理由

F5エコシステム | 2018年9月04日

今日、インフラストラクチャプロバイダーの社内で特によく聞かれるのが、そのインフラストラクチャの価値を開発者コミュニティにどう説明するかという問いです。問題は、インフラストラクチャのメリットの大半が、本番環境へのデリバリー後に得られることです。少なくとも、開発者の日々の業務に影響を与えるような有意義な形で、開発者に直接価値をもたらすものではありません。

開発以外で得られるメリットについては、開発者も十分に認識しています。F5が2018年に実施した「アプリケーションデリバリの現状」調査では、回答者に占める開発者の割合はわずかでした。しかし、導入したいアプリケーションサービスについて、開発者の意向は明確に示されました。ロードバランシング、キャッシング、アクセラレーションなどのアプリケーションサービスは、インフラストラクチャとしてだけでなく、アプリケーション自体の一部として導入されることも少なくありません。一方、TCP最適化とWAFは、ほぼ常にインフラストラクチャサービスとして、モノリスかマイクロサービスかを問わず、アプリケーションの前段(データパス上)に導入されます。

これらのアプリケーションサービスには、リスクの軽減、パフォーマンスの向上、スケーラビリティなど、いずれも価値があります。しかし、これらはアプリケーションとビジネスにもたらされるメリットであり、開発者がその恩恵を得られるのは、アプリケーションを本番環境にデリバリーした後です。デリバリー前、つまり開発ライフサイクルの一環としてインフラストラクチャがもたらすメリットは、明確に説明するどころか、見いだすことさえ困難です。

しかし、コンテナとマイクロサービスの導入が進むにつれ、デリバリー前後におけるインフラストラクチャの価値がより明確になります。

多くの新興テクノロジーと同様、新しいアプリケーションアーキテクチャが登場した当初は、それを支えるインフラストラクチャがほとんどありません。アプリケーションアーキテクチャがアプリケーションサービスのインフラストラクチャを大きく左右することは、開発者にとって意外かもしれません。3層構造のWebベースアプリへの移行に伴い、スケーラビリティ(負荷分散)が実現しました。レスポンシブなプレゼンテーション層を備えたWeb 2.0の普及により、フロントエンド高速化インフラストラクチャが登場しました。モバイルの台頭とあらゆる業界でのデジタル化の進展に伴い、インフラストラクチャもWAF、DDoS対策、ボット対策などのセキュリティサービスによって対応してきました。

現在起きているのは、開発者がインフラストラクチャサービスの機能をアプリケーション内に実装するという動きです。従来は上流サービスが担ってきた機能を、開発者がコードに組み込んでいます。たとえば、ロードバランサーによる再試行、プラットフォームやプロキシによるmTLS、正規のクライアントのみに通信を制限するアクセス制御などです。

これらは本来インフラストラクチャ側が担う責務ですが、コンテナフレームワークがまだ発展途上にあり、急速に普及していることから、開発者が担うようになっています。

しかし、これまでと同様に、その状況は変わりつつあります。従来のアプリケーションアーキテクチャがネットワークインフラストラクチャの対応を促してきたように、コンテナとマイクロサービスも同様の変化を促しています。ただし今回は、新しい機器を導入するという形ではありません。現在進んでいるのは、開発者が必要とするアプリケーションサービスをコンテナ環境の内部に統合する動きです。そこで登場するのがサービスメッシュです。サービスメッシュは、開発者に直接、具体的かつ定量化可能な価値をもたらします。

Aspen MeshのリードアーキテクトであるAndrew Jenkins氏は、Aspen MeshのLinux.comによるインタビューで次のように説明しています。

「今では、驚くほど簡単にWebサービスを作り始められます。コードは1件のツイートに収まるほどです。ただし、これだけでは実用的なWebサービスとはいえません。レジリエンスとスケーラビリティを確保するには、アプリのデータプレーンにいくつかの機能を追加する必要があります。TLSへの対応、障害発生時の再試行、特定のサービスからのリクエストのみを受け入れるアクセス制御、ユーザー認証の確認などです。サービスメッシュを利用すれば、アプリにコードを追加することなく、こうしたデータプレーン機能を実装できます。」

デリバリー前の段階では、コンテナ環境における基本的なセキュリティとスケーリングに対応するための、反復的ながら必要なコードを削減し、開発範囲を縮小できることに価値があります。サービスメッシュには多種多様な優れた機能がありますが、そのメリットの大半は、可観測性、アカウンタビリティ、スケーリングといった運用面にあります。開発者にとって最も大きな価値は、コードを削減し、それによって技術的負債とアーキテクチャ上の負債を軽減できることです。

コンテナ環境にデプロイされたアプリケーションのスケーリング、セキュリティ確保、可観測性の実現にサービスメッシュを活用することで、本来はインフラストラクチャが担うべきものの、最近まで開発者に委ねられていたコード作成の負担を軽減できます。サービスメッシュは、開発者の責任を軽減し、ビジネスに価値をもたらすサービスやアプリケーションの開発に充てられる貴重な時間を取り戻すための1つの方法です。

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タグ: 2018

著者について

Lori Mac Vittie
Lori Mac Vittie特別技術者兼チーフエバンジェリスト | F5

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。

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