最近では、デジタル体験を「構築する」という話をよく耳にします。長年の読者なら、私が細部にこだわる達人だとご存じでしょう。ここからが本番です。
エクスペリエンスを「構築」することはできません。エクスペリエンスは、どのように定義しても、すべて消費者の視点によって決まります。休暇中や博物館を訪れたときに子どもたちが得る体験であれ、デジタルサービスを利用したときに得る体験であれ、それが良いか、悪いか、素晴らしいかは、視点次第です。つまり、消費者の視点です。ある子どもにとっては素晴らしい体験かもしれません。もう一人にとってはどうでしょうか。巨大な毛むくじゃらのマンモスが怖くてたまらないと気づき、最悪の体験になりました。同じものを提供しても、体験は異なります。
優れたプレゼンテーションの秘訣は、何を語るかだけでなく、聴衆にどう感じてもらうかにある、と言われています。デジタル体験も同じです。優れたデジタル体験で重要なのは、利用者にどう感じてもらうかです。
インターフェースは分かりやすく、簡単に操作できますか?それとも、サービスを利用するには知識が足りないと消費者に感じさせてしまっていませんか?
デジタルサービスは快適に動作しましたか?それとも、画像や情報が読み込まれるまで、ユーザーを何度も待たせてしまいましたか?
サービスは、ユーザーに煩雑な手続きを強いることなく、可能な限り本人確認を行っていましたか?それとも、銀行口座の残高を確認するだけなのに、15回ものCAPTCHAやクイズを課していましたか?
つまり、デジタルサービスを構築することはできます。サービスやアプリケーションを開発し、洗練されたユーザーインターフェースを介してAPIで連携させ、利用者を導く最適化されたワークフローを構成しても、それでもデジタル体験の質が低くなることがあります。パフォーマンスやセキュリティがその体験に与える影響を考慮していないためです。
これこそが、デジタルサービスが単なるアプリケーションとAPIの集合体ではない根本的な理由です。だからこそF5は、利用者ごとにパフォーマンスとセキュリティを最適化できるアプリケーションセキュリティおよびデリバリーサービスを組み込んで、デジタルサービスを設計する必要があると考えています。これは、F5がマルチクラウド環境向けのアプリケーションセキュリティおよびデリバリーテクノロジーの提供に注力する企業だからではありません。デジタルファーストの世界では、これが現実なのです。アプリケーションは、どのように設計・開発されていても、可用性、セキュリティ、パフォーマンスに関わる卓越したデジタルエクスペリエンスを提供するうえで必要となる多くの技術要件に対応できるようには作られていません。
これらは従来からアプリケーションのセキュリティとデリバリーが担う領域であり、現在も変わりません。今日では、これらのテクノロジーがデジタルサービスの提供に不可欠となり、利用者がそのサービスを利用する際の体験に大きな役割を果たしている点が異なります。
したがって、デジタル体験を念頭に置いてアーキテクチャを設計し、その体験に影響する要因に対処することはできますが、デジタル体験そのものを構築することはできません。
著者について

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。
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