企業におけるLLMの導入:SaaSフレームワーク

F5 ADSP | 2023年9月04日

生成AI(GenAI)モデル、特に大規模言語モデル(LLM)を企業全体に導入することは、どの組織にとってもハイリスク・ハイリターンの機会です。追加の安全対策やAIセキュリティプロトコルが導入されていない場合は、特にリスクが高まります。 GenAIの活用に向けたこの大きな一歩をどのように踏み出すべきか、慎重に計画する必要があります。

設定やインストールに関する問題を避けるため、Software as a Service(SaaS)の形態で、プロバイダーを通じてAIモデルを利用する方法が適している場合があります。一方、組織のプライベートクラウドまたは自社システムにモデルを導入し、APIの設定と管理を組織内で制御できるようにする方が適している場合もあります。

この全3回のブログシリーズでは、「どのように?」という問いを取り上げます。投資収益率を最大化するには、組織全体にLLMをどのように導入すべきでしょうか。各回では、一般的な導入フレームワークを1つ取り上げ、そのメリットとデメリットについて解説します。自社の組織体制や事業構造、具体的なビジネスニーズを踏まえて検討する際にお役立てください。 

SaaSの定義

SaaS(オンデマンドソフトウェア)フレームワークでは、ソフトウェアがインターネット経由でユーザーに提供されるため、ITチームの観点では、LLMを導入する最も容易な方法と言えるでしょう。負荷の大きい作業はプロバイダーが担い、ハードウェア、モデル、モデルを実行するコード、モデルが使用するデータを保守します。SaaSフレームワークを使用したLLMの導入は、あらゆる面で優れた方法に思えるかもしれませんが、すべての組織にとって最適な選択肢とは限りません。組織でSaaSによる導入アプローチを検討する際に考慮すべき、主な5つのメリットと5つのデメリットを以下に示します。

メリット

迅速な導入で効果を早期に実現:SaaSソリューションでは、アプリケーションがすでにクラウド上にインストールおよび構成され、利用可能な状態にあるため、迅速かつ容易にセットアップして運用を開始できます。LLMをSaaSソリューションとして導入すれば、インフラストラクチャを新設または変更することなく、組織の業務にモデルを統合できます。

財務面と運用面の効率化:通常、LLMはサブスクリプションベースで提供され、特別なハードウェアやソフトウェアを必要としないため、多額の初期設備投資が不要で、リソース管理を効率化できます。システムのアップデートとセキュリティの一部は、サービスプロバイダーが対応します。

容易な拡張と統合:SaaSソリューションとして提供されるLLMにより、組織は多額の追加投資を行うことなく、ユーザーの需要に応じて柔軟に対応できます。柔軟なサブスクリプションオプションが一般的であり、組織の既存機能と統合できるプラグインの種類も増え続けています。

アクセシビリティとコラボレーションを支援: インターネット接続があれば、場所を問わず、インターネット対応デバイスの任意のWebブラウザーからLLMにアクセスできるため、チームやタイムゾーンを越えて継続的に共同作業を行えます。一部のLLMでは、ユーザーが検索履歴の一部またはすべてにアクセスし、簡単に参照できます。

トレーニングがほとんど、またはまったく不要で簡単に使用可能:ほとんどのLLMは検索エンジンに似たユーザーインターフェースを備えているため、ユーザーにとって非常になじみやすいものです。プロバイダーによっては、用途に応じて使用するLLMのバージョンを選択できます。また、一部のLLMは「対話型」で、前のクエリに関連するコンテンツを提供できますが、クエリごとに独立したプロンプトとして扱うLLMもあります。

デメリット

データプライバシーとセキュリティ:機密性の高いタスクにLLMを使用すると、組織がデータ損失やプライバシー上の問題にさらされる可能性があります。プロンプトでLLMに送信されたコンテンツは、プロバイダーによって処理・保存される場合があり、悪用やさらなる拡散を防ぐためのセキュリティは保証されません。

カスタマイズと制御の制限:LLMは新しい技術であるため、非常に幅広いユーザーのニーズに対応するよう設計されています。そのため、組織のニーズや設定に応じてユーザーとのやり取りをカスタマイズする機能は、まだ開発途上にあります。組織が導入を希望する可能性のあるセキュリティ制御や利用制限、たとえばプロンプトへのプロジェクト名やソースコードなどの特定コンテンツの入力を禁止する機能は、まだ提供されていません。その結果、組織のリスクエクスポージャーが高まります。

コストの増加:SaaSの仕組みでは通常、多額の初期投資は必要ありませんが、値上げやシステムへのユーザー追加により、サブスクリプション料金が時間の経過とともに増加し、長期的な費用対効果が低下する可能性があります。 

レイテンシとパフォーマンス:SaaSアプリケーションはローカルアプリケーションよりも動作が遅くなることも珍しくありません。そのため、特に対話型カスタマーサービスや言語翻訳アプリケーションなど、LLMをリアルタイムで利用する場合は、レイテンシを重要な検討事項とする必要があります。 

接続性:これは基本的でありながら、極めて重要な問題です。インターネットベースのあらゆるソリューションと同様に、LLMが安定したパフォーマンスを発揮するには、サービスプロバイダーの接続が信頼でき、速度低下や障害への対策が強化されている必要があります。

まとめ

SaaSフレームワークを使用して企業全体にLLMを導入するメリットがデメリットを上回るかどうかは、組織の財務・技術リソース、ビジネスニーズ、セキュリティ上の制約やその他の運用上の制約を慎重に検討することで判断できます。

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