人工知能は、サイバーセキュリティにとって諸刃の剣となっています。AIモデルはイノベーションを促進し、業界に変革をもたらす一方で、本質的に予測が難しく、新たなリスクを生み出します。チャットボットによる不適切な会話や、過度な自律性を持つエージェントなど、新たなリスク環境には、望まないメディアの注目を招いたり、顧客の信頼を損なったりしかねない、評判を脅かす落とし穴が至る所に潜んでいます。
モデルが新たに更新されるたびに、新たな脆弱性も生じます。組織がツールの呼び出しや処理の実行などをモデルに大規模に委ねるようになると、悪用やバイアス、安全性に関する問題の影響ははるかに大きくなります。そのため、より多くの制御とガードレールが必要です。
“CalypsoAIの機能をF5 Application Delivery and Security Platform (ADSP)に統合することで、F5は、AIリスクを軽減するだけでなく、企業が柔軟性、セキュリティ、信頼性を確保しながらAI導入を拡大できる包括的なソリューションを提供するリーダーとしての地位を確立します。”
Gartner®は最近発表した「AIの信頼性、リスク、セキュリティ管理(TRiSM)のマーケットガイド」で、1「企業は複数のAIリスクに直面しており、データ侵害、サードパーティリスク、不正確または望ましくない出力を特に懸念している」と述べています。F5は、この見解が、ガバナンス、セキュリティ、リスク管理を強化する必要性を裏付けるものと考えています。これらの強化は、AIを大規模に導入する組織、特に迅速な導入を目指す組織にとって極めて重要です。TRiSMに基づく管理策を導入することで、AIをより安全かつ迅速に導入できます。
このように状況が変化する中、F5によるCalypsoAIの買収は、これらの課題に対処するための時宜を得た戦略的な取り組みとなるでしょう。関連する能力には、AIガバナンスに関するCalypsoAIの専門知識や、AIシステムのランタイム検査および制御が含まれます。CalypsoAIの能力をF5 Application Delivery and Security Platform (ADSP)と統合することで、F5は、AIリスクを軽減するだけでなく、企業が柔軟性、セキュリティ、信頼性を確保しながらAI導入を拡大できる包括的なソリューションを提供するリーダーとしての地位を確立します。
急速に成熟するAI環境への対応
AI市場はかつてない速さで進化しており、基盤となる大規模言語モデル(LLM)や特化型の小規模言語モデル(SLM)が、さまざまな業界で急速に普及しています。このように変化する環境で従来のツールに頼ろうとする組織は、拡張性の確保、一定の柔軟性の維持、コストの抑制が十分にできなくなるおそれがあります。
Gartnerは次のように述べています。「AI市場が急速に成熟し変化する中、企業はスケーラビリティ、柔軟性、コスト管理、信頼性を確保するため、特定のAIモデルやホスティングプロバイダーに依存しない体制を維持する必要があります」1
AIの機能が新たなユースケースへと拡大し続ける中、柔軟性と信頼を確保するために、特定のAIモデルやホスティングプロバイダーに依存しないことが重要であるという見解に、F5も同意します。
F5は、CalypsoAIのリアルタイムセキュリティ検査とリスクスコアリングを導入し、提供元を問わずあらゆるモデルに適用することで、この変化の激しい環境に直接対応しています。CalypsoAIのソリューションで強化されたF5 ADSPを活用する企業は、モデルとアプリケーションのガバナンスを維持しながら、多様なAIツールを安心して導入できます。この独立性により、特定のAIプロバイダーへの依存を軽減し、拡張可能な成功に向けてAI実装を将来にわたり有効なものにできます。
多層的なアプローチによるAIセキュリティ
Gartnerの「Market Guide for AI TRiSM」によると、1技術的能力は4つのレイヤーで構成され、そのすべてを、従来型のテクノロジー保護を担う第5のレイヤーが支えています。
- AIガバナンス
- ランタイム検査と適用
- 情報ガバナンス
- インフラストラクチャとスタック
F5は、このフレームワークにより、AIシステムが組織のポリシー、規制要件、倫理的期待に沿っていることを検証し、その信頼性とセキュリティを確保できると考えています。

この図は、Gartner, Inc.がより広範な調査資料の一部として公開したものであり、資料全体の文脈に照らして評価する必要があります。Gartnerの資料は、ご要望に応じてF5から提供いたします。
CalypsoAIの買収により、アプリケーションセキュリティ、特にAI分野におけるリーダーとしてのF5の役割が強化されます。企業は、悪意ある攻撃者による不適切なAI動作の悪用や、AI自体の予測不能な動作という形で、外部と内部の双方から増大する脅威に直面しています。CalypsoAIのAIガバナンスおよびランタイム適用機能は、情報、インフラストラクチャ、従来型の保護テクノロジーに対する全社規模の制御の提供に優れたF5 ADSPを補完します。両者の強みを組み合わせることで、AI TRiSMのあらゆるレイヤーに対応し、1 AIの信頼性とリスク管理をエンドツーエンドでカバーすることを目指します。
CalypsoAIは、ピラミッドの上位2層であるAIガバナンスとランタイムの検査および適用に強みを持ちます。一方、F5 ADSPは、情報ガバナンス、インフラストラクチャ、従来型の保護の各層をサポートすることで、これらの機能を補完します。
AIガバナンス
CalypsoAIは、モデルのカタログ化とリスクスコアリングのシステムによりAIガバナンスを強化し、企業のAI資産を一元的に把握できるようにします。CalypsoAIのガバナンス機能は、説明責任、透明性、セキュリティという責任あるAIの原則を重視しています。モデルの健全性とパフォーマンスを継続的に評価することで、AIの出力を一般データ保護規則(GDPR)やEU AI Actなどの規制方針に適合させ、倫理と信頼を重視したAIの実践を強化します。
AIランタイムの検査と適用
CalypsoAIはランタイムエンジンを活用し、AIアプリケーション全体でポリシーへの準拠を徹底します。これらの仕組みにより、AIとのやり取りをリアルタイムで検査し、異常や違反を明らかにします。CalypsoAIのプラグアンドプレイ型フレームワークは、モデルの挙動とエージェント型脅威インテリジェンスに基づいて防御を適応させ、企業のAI導入環境にプロアクティブかつリアルタイムのセキュリティを提供します。こうした知見を活用したランタイム検査は、悪意のあるプロンプト、バイアスのリスク、コンプライアンス上の懸念に対処し、企業が新たな脅威に先手を打てるよう支援します。
情報ガバナンス
F5 ADSPは、LeakSignalなどの買収を基盤として堅牢な情報ガバナンスを構築し、F5 BIG-IP SSL Orchestrator (SSLO)などの製品におけるデータ保護の強化を支援します。SSLOは、送信されるデータの種類と送信先を正確に特定するうえで極めて重要な役割を果たします。AIモデルを導入する組織は、SSLOを使用して、データが露出する前に遮断するポリシーベースの制御を適用できるため、リスクを大幅に軽減できます。
CalypsoAIは、F5の幅広いエコシステムに適合する高度なロールベースアクセス制御(RBAC)とデータ損失防止(DLP)の両機能を追加し、AIランタイムで動的なデータ分類と検出を実現します。F5 BIG-IP Access Policy Manager (APM)を使用することで、企業はユーザー、デバイス、APIに対するアクセス制御を一元化できます。これにより、AIを中心としたガバナンス要件に対応しながら、AIを活用したインタラクションのためのセキュアな基盤を構築できます。
インフラストラクチャとスタック
F5 ADSPのWebアプリケーションおよびAPI保護(WAAP)ソリューションは、AIアプリケーションの中核を成すインフラストラクチャのセキュリティ確保において重要な役割を果たします。その第一歩は、堅牢でセキュアなAPIエコシステムの構築です。AIは強力かつ高度な手段ですが、その基盤となるのは、組織がこれまで検出とセキュリティ確保に苦慮してきた従来と同じAPIです。CalypsoAIのランタイム適用機能は、AI固有のインタラクションにおける脆弱性を緩和することでWAAPを補完します。一方、F5は、APIを多用するエコシステム向けに設計されたAPI検出・保護ツールにより、このレイヤーを強化します。
Dell、NetApp、MinIOなどの大手ストレージベンダーとのパートナーシップにより、このセキュリティをデータワークフローにも拡張し、RAGを含むAIモデルのトレーニングと推論のサイクルを支える、拡張性に優れた高性能なデータストレージと転送を実現します。さらに、F5とNVIDIAのパートナーシップでは、F5 BIG-IP Next for Kubernetesを通じてDPUの機能を強化し、GPU向けのアプリケーションデリバリとデプロイの効率化を支援するとともに、推論とトレーニングのための新たなセキュリティ制御を導入します。
これらの技術的進歩をF5 ADSPとともに単一のプラットフォームに統合することで、総所有コストの削減に貢献すると同時に、企業規模の拡張性を見据えたAIインフラストラクチャを実現します。
従来型テクノロジーの保護
従来型テクノロジーレイヤーは、エンタープライズアプリケーションセキュリティの基盤を形成します。F5 BIG-IPおよびF5 WAAPソリューションは、アプリケーション、データ、インフラストラクチャの安定性とレジリエンスを確保するための基本的な保護機能を提供します。
高度なセキュリティツールを基盤とするこれらのソリューションは、大規模な分散型サービス拒否(DDoS)攻撃や標的型DDoS攻撃から、ボットトラフィック、高度なアプリケーションレイヤーの脅威まで、幅広い脅威に対処します。その中核となるのが、SQLインジェクション、クロスサイトスクリプティング(XSS)、その他のOWASPが挙げる主要な脅威を防御する、堅牢なWebアプリケーションファイアウォール(WAF)の機能です。この包括的な対応範囲によって多層型セキュリティアプローチが完成し、従来のワークロードに加えて、AI運用もエンドツーエンドで保護します。
AIセキュリティにおけるリーダーシップの強化
人工知能は、サイバーセキュリティに変革をもたらす可能性がある一方で、重大なリスクも伴います。AIに内在する予測困難性に、悪意ある攻撃者による絶え間ない悪用が重なることで、従来のセキュリティアプローチでは対応が難しい、絶えず変化する脅威環境が生まれています。
企業がAIイノベーションを急速に導入する中、信頼性と説明責任の確保が極めて重要になっています。F5によるCalypsoAIの戦略的買収は、こうした高まるニーズに応える重要な取り組みとなり、組織がセキュリティ、プライバシー、運用管理を維持しながら、安心してAIを導入できるよう支援します。多層型のAI TRiSM1ソリューションにより、F5はAIアプリケーションセキュリティの新たな基準を確立し、企業が信頼を中核に据えてイノベーションを推進できるようにします。
1 Gartner、『Market Guide for AI Trust, Risk, and Security Management』、2025年2月18日。
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