ルールからリスクへ:WAFの進化とAIを活用した成果の台頭

F5 ADSP | 2026年4月22日

CISOがWebアプリケーションファイアウォール(WAF)を導入する目的は、機能そのものではなく、組織のスピードを損なわずにビジネスリスクを軽減することです。しかし、多くの企業では、WAFソリューションがよくある段階で停滞します。WAFは導入され、アラートも届いているものの、チューニングには多大なコストがかかり、部門横断の対応が必要で、リスクも伴うため、ブロッキングモードへの移行が遅れています。

一方、攻撃者は待ってくれません。APIを探り、認証情報の不正利用を自動化し、過去のトラフィックを前提に設計されたルールセットを回避する手法を用います。こうした現実に対応するため、WAFも進化してきました。その進化を理解することで、AIを活用したWAFが実用面で転換点となりつつある理由が見えてきます。顧客の利便性を損なうことなく、保護開始までの時間を短縮し、運用負荷を軽減して、セキュリティ成果を向上させます。

“CISOは、個々の機能の多さではなく、ビジネス成果に基づいてWAFソリューションを評価する必要があります。具体的には、組織がどれだけ迅速にブロッキングモードへ移行して維持できるか、アプリとAPI全体で脅威をどれだけ効果的に阻止できるか、正規の顧客トラフィックへの影響をどれだけ抑えられるかが重要です。”


第1世代:豊富な制御機能とシグネチャを基盤とする保護

第1世代のWAFは、シグネチャとプロトコルの適用によって既知の脅威を幅広くカバーし、Webセキュリティの基盤を確立しました。一般的なエクスプロイト(SQLi、XSSなど)のブロック、大規模なシグネチャエンジンによるCVEとのマッピング、HTTP準拠の徹底、アプリ全体への一貫したポリシーと可観測性の適用に優れていました。また、ログ内の機密データのマスキング、ブロックページのカスタマイズ、許可するレスポンスコードの管理、IPレピュテーションフィードの利用、レスポンス内の機密データの保護といった、運用上重要な保護機能も追加されました。

アプリケーションの動的性が高まり、攻撃対象領域がAPI、ボット、自動化へと移行するにつれて、課題が顕在化しました。シグネチャベースのモデルでは、運用上、根本的なトレードオフが生じます。

  • より多くの攻撃を検知するためにルールを厳格化すると、誤検知が増え、ビジネスに支障をきたします。
  • 業務への影響を抑えるためにルールを緩和すると、偽陰性が増え、侵害リスクが高まります。

実際には、これがチューニングの負担となります。セキュリティチームはアラートをトリアージし、開発者はトラフィックが正当かどうかを検証し、プラットフォームチームは例外を実装します。このサイクルはアプリケーションごと、リリースごとに繰り返され、多くの場合は環境ごとにも発生します。その結果、ブロッキングモードへの移行が遅れ、保護に一貫性がなくなり、WAFが阻止できるものと本番環境で実際に阻止しているものとのギャップが拡大します。

第2世代:「リクエスト検査」から「ユーザーとセッションの振る舞い」へ

第2世代のWAFでは、ペイロード検査にとどまらず、クライアントIP、TLSフィンガープリンティング、Cookie、HTTPヘッダーなどの複数の識別情報を使用して、ユーザーセッションを特定、追跡できるようになりました。この変化が重要なのは、現代の攻撃の多くが、単一の「不正なリクエスト」には見えないためです。偵察、自動化、不正利用のパターン、低速かつ長時間にわたる探索など、時間の経過に伴う振る舞いとして現れます。

セッションを追跡し、行動に基づいてユーザーリスクを評価することで、第2世代WAFはボットや不正なクライアントの検知精度を高め、チャレンジや一時的なブロックなどの緩和策を可能にしました。これにより、静的シグネチャのみに依存する必要性が低減しました。

しかし、振る舞いの可視性が向上しても、多くのCISOは依然として同じ導入障壁に直面しています。それは、確信を持ってポリシーを適用できるかどうかです。何かが「疑わしい」と判明しても、正当なトラフィックを妨げない判断を自動的に下せるわけではありません。特にアプリケーションやAPIが毎週変更される環境では、しきい値、例外、ルール間の相互作用について、チーム内で議論が続くことになります。

第3世代:AI搭載WAFと成果ベースの適用

第3世代のWAFでは、AIを活用したWAFリスクスコアリングに基づいてリスクベースの判断を行う、新たな運用モデルが導入されます。シグネチャの一致、違反、チューニング上のトレードオフが複雑に絡み合う状況をチームに解釈させるのではなく、WAFがリクエストごとに複数のシグナルを評価し、リスクレベルを割り当てます。このリスクレベルが、適用制御の基本単位となります。

これにより、CISOの議論は「WAFをどのようにチューニングするか」から、「このアプリ、エンドポイント、または業務機能について、どの程度のリスクまで許容するか」へと変わります。

実務上、大きな成果が得られます。

  • 保護開始までの時間を短縮:単一ルールによる不安定なトリガーではなく、多層的な分析に基づいて判断するため、より早くブロックモードに移行できます。
  • 運用負荷の軽減: 手動による例外対応やケースごとの調整を減らすことで、SecOps、AppSec、開発者、プラットフォームチーム間の摩擦を軽減します。
  • 誤検知を抑えながら検知精度を向上:複数のシグナルを相関分析することで、正規ユーザーへの影響を軽減しながら、より多くの攻撃を検知できます。

多層的なアプローチの採用

Gen 1、Gen 2、Gen 3のWAF機能は、互いに代替するものとして扱うのではなく、階層的に組み合わせることで最良の成果が得られます。

第1世代の制御(シグネチャ、プロトコル準拠、脅威キャンペーン対策、機密データ保護、強力な可観測性)は、既知の脆弱性や一般的な悪用手法に対して高い有効性を発揮し、今後も不可欠な基本対策であり続けます。

Gen 2では、セッション認識と行動追跡を追加してリクエストをユーザージャーニーとして関連付けることで、プラットフォームが不正な自動化と通常の利用パターンを識別し、柔軟性に欠けるURL単位の例外への依存を軽減できるようにします。

次に、Gen 3 AI対応のリスクスコアリングがこれらのシグナルを統合し、シグネチャの一致、行動の異常、コンテキスト指標を相関させて、リクエスト/セッションごとに単一のリスク態勢を導き出す、一貫性のある成果重視の意思決定エンジンを構築します。これにより、偽陰性と偽陽性の両方を最小限に抑えながら、チームはより迅速かつ確信を持ってブロックを有効化できます。

この多層型アプローチを組み合わせることで、運用上の調整を最小限に抑えながら、最高レベルの保護を実現します。既知の脅威には決定論的な制御、進化する脅威には振る舞い検知を適用し、リスクベースの適用によって大規模環境でも正確な判断を可能にします。

ビジネス成果に基づくWAFの評価

前述のとおり、CISOは個々の機能の多さではなく、ビジネス成果に基づいてWAFソリューションを評価する必要があります。具体的には、組織がどれだけ迅速にブロッキングモードへ移行して維持できるか、アプリとAPI全体で脅威をどれだけ効果的に阻止できるか、正規の顧客トラフィックへの影響をどれだけ抑えられるかが評価基準となります。

適切に実施すれば、個々のシグネチャや例外を検討する運用から、ビジネス上の許容度に応じたリスクしきい値を設定する運用へと移行できます。これにより、分散環境全体で誤検知を低く抑えながら、保護を強化できます。

詳細については、F5 Distributed Cloud WAFとそのAIベースの機能に関する製品ページをご覧いただくか、デモをご予約いただくためにF5チームまでお問い合わせください。

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著者について

Debrup Ghosh
Debrup Ghoshプリンシパルプロダクトマネージャー | F5

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