まだご覧になっていない方のためにご紹介すると、昨年、F5はアプリケーションデリバリに関する課題トップ10をまとめました。これは、あらゆる環境でアプリケーションのデリバリとセキュリティ確保に取り組んできた約30年の経験に基づいています。
その中の1つが「ADC09 アプリケーション固有の要件」です。これは、特殊なプロトコル、レガシーヘッダー、標準外のAPI動作など、アプリケーションによっては固有の特性があり、それらに対応するにはトラフィックをリアルタイムでインターセプトして変更できる必要がある、ということです。
この課題は、データプレーンのプログラマビリティによって解決できます。たとえば、iRulesやLuaを使用すれば、転送中のアプリケーションおよびAPIトラフィックをインターセプトし、検査、変更できます。これにより、アプリケーションを再構築したり、ベンダーの対応を待ったりすることなく、ヘッダーの書き換え、ペイロードの変換、認証情報の挿入、動作の修正が可能になります。
たとえば、あるAPIで突然、新しい認証トークン形式が必要になったとします。そのAPIを呼び出すすべてのアプリを書き換える代わりに、転送中のトークンを書き換えるデータプレーンルールを適用します。これが「アプリケーション固有の要件への対応」です。つまり、アプリ特有の複雑な仕様に合わせてネットワークロジックを調整できるということです。
さて、「ネットワーク内」でのプログラマビリティのメリットが話題になるとき、多くの人が取り上げるのは、この機能(データプレーンのプログラマビリティ)です。しかし、コントロールプレーンのプログラマビリティも同じくらい重要です。
つまり、アプリケーションデリバリおよびセキュリティインフラストラクチャの管理や運用をはじめ、さまざまな操作を可能にするAPIのことです。50%を超える組織がこれらのAPIで運用を自動化し、ロードバランサーやWebアプリケーションファイアウォールから、APIセキュリティ、さらに最近ではAIセキュリティのサービスに至るまで、導入と管理を迅速化しています。具体的には、iControl、FAST、各種クラウドAPIなどです。
導入を始めたすべてのAIエージェントとアプリを拡張し、セキュリティを確保するには、データプレーンとコントロールプレーンの両方でプログラマビリティを実現することが、成功の鍵となります。大規模な環境では、静的な構成と手動運用だけでは、AI駆動型システムの変化の速さやリスク領域の広がりに対応しきれないためです。プログラマビリティが、そのボトルネックを解消します。
AIのスケーリングとセキュリティ確保にプログラマビリティが不可欠な理由
AIエージェントやAIを活用したアプリケーションを本格的な規模で導入し始めると、従来のインフラストラクチャ管理手法(静的な構成や、人間が介在する自動化)は、その負荷に耐えられなくなります。変化のスピードが速すぎるためです。プログラマビリティは単に役立つだけではありません。混乱を先回りして対処するための唯一の方法です。
AIの導入により、変更の頻度は急増します。エージェントは次々と追加・削除され、APIは変化し、トラフィックパターンも刻々と変わります。データプレーンのプログラマビリティを活用すれば、コードのプッシュやリリースサイクルを待たずに、こうした変化へリアルタイムに対応できます。一方、コントロールプレーンのプログラマビリティにより、全体をトップダウンでオーケストレーションできます。担当者がYAMLの対応に追われる代わりに、環境の変化に応じて、システムが新しいエージェントの登録、セキュリティポリシーの適用、トラフィックの再ルーティングを自動的に実行できます。
そして、セキュリティも重要です。新しいエージェントが増えるたびに攻撃対象領域が広がり、迅速に判断して全体に適用すべき信頼に関する意思決定も増えます。プログラム可能なデータプレーンなら、トラフィック経路にセキュリティ制御を直接組み込めます。プログラマビリティにより、アプリケーションに手を加えることなく、mTLS、WAFルール、トークン処理を管理できます。さらに、コントロールプレーンが頭脳として機能し、こうした信頼に関する意思決定の自動化、認証情報の失効、不正な動作をするエージェントの隔離、証明書のローテーションを、人手を待たずに実行できます。
AI駆動型システムでは、実際の意思決定の多くがペイロード自体に組み込まれているため、データプレーンのプログラマビリティがさらに重要になります。もはや、単にペイロードを地点Aから地点Bへ移動させるだけではありません。AIエージェントのトラフィックでは、データとともにポリシー、指示、動作トリガーも伝送されます。
つまり、指揮統制はコンテキストに応じて行う必要があり、 問題が起きた後にコントロールプレーンのダッシュボード上で対処するのでは遅すぎます。中央コントローラーが異常を検知して新しい設定をプッシュするのを待っている間に、不正な命令がすでに伝播してしまうためです。データプレーンには、転送中にこれらのポリシーを検査、解釈し、それに基づいて動作できるだけのインテリジェンスが必要です。
要するに、コントロールプレーンが意図を定め、データプレーンが実環境でそれを適用します。データパス自体にプログラマビリティがなければ、どのポリシーも単なる飾りのメタデータとして付随するだけで、「制御」が実際に何かを制御することはありません。
小規模であれば、スクリプトと手作業によるレビューで取り繕えます。しかし、AI駆動型コンポーネントが数十、数百に増えると、そうはいきません。プログラマブルなデータプレーンは精密な制御を担うツールであり、プログラマブルなコントロールプレーンは指揮系統です。両方がなければ、やがてシステム全体の進化にガバナンスが追いつかなくなります。
だからこそ、あらゆる最新のアプリケーションデリバリおよびセキュリティプラットフォームにおいて、プログラマビリティは中核的な機能でなければならないとF5は考えています。プログラマビリティがなければ、動的な環境で静的なポリシーに縛られてしまいます。それは制御ではなく、単なる希望的観測にすぎません。
著者について

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。
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