マルチクラウド(ハイブリッドと呼んでも構いません)は、何年も前から標準となっています。この点については、もはや議論の余地はありません。一方、組織がこうした環境にアプリケーションをどのように分散させるか、また、その変化が運用上なぜ重要なのかについては、今なお大きく変化しています。
F5の最新調査によると、アプリケーションポートフォリオは、モダンアプリケーションと従来型アプリケーションでほぼ二分されています。現在、企業アプリケーションの平均53%がモダンアプリケーションである一方、47%は依然として従来型です。この比率を見れば、レガシーが消滅したという見方は成り立ちません。レガシーは消えたのではなく、単に位置付けが変わったのです。
より注目すべき兆候は、その構成比ではなく、内訳の変化です。
従来型オンプレミスから静かに進む移行
現在のアプリケーションのデプロイ先と、組織が希望するデプロイ先を比較すると、ある変化が際立っています。
組織は、従来型のオンプレミス環境への導入比率を、現在の18.0%から理想とする15.2%まで引き下げる計画です。
この差分がすべてクラウドに移行するわけではありません。むしろ、その大部分はオンプレミスクラウドの増加として現れ、現在の17.6%から理想とする18.4%へ上昇します。パブリッククラウドとSaaSもわずかに増加しますが、最も示唆に富む変化はデータセンター内で起きています。
これは、計画的なモダナイゼーションの道筋を反映しています。組織はオンプレミス環境を放棄しているわけではありません。オンプレミス環境の運用方法を再構築し、静的でインフラストラクチャに依存するプラットフォームから、自動化、API、迅速な変更を支えるクラウド型の運用モデルへとワークロードを移行しています。
コロケーションとエッジは比較的安定しています。この安定性からも、全面的な移行戦略ではなく、アーキテクチャの進化であることがわかります。
モダナイゼーションがアプリケーションデリバリーの前提を変える
モダンアプリケーションの割合が増えるにつれ、かつてアプリケーションの配信とセキュリティを「容易」にしていた前提は、もはや通用しません。
従来、クラウドベースのサービスを利用すると、デリバリー機能とセキュリティ機能が標準で提供されることが一般的でした。負荷分散、TLS、DDoS対策、基本的なアクセス制御が一式で提供されていたのです。しかし、その利便性は複雑さを解消したのではなく、見えにくくしていただけでした。
組織がSaaS、パブリッククラウド、オンプレミスクラウド、そして従来型の環境にアプリケーションを分散させるにつれ、暗黙のうちに得られていたシンプルさは失われます。環境ごとに、制御、可視性、ポリシーモデルが異なります。
その結果、運用上の摩擦が生じます。
現在、各チームは複数のコントロールプレーン、一貫性のないセキュリティ態勢、意図ではなく場所によって異なるデリバリー動作を管理しています。ハイブリッド環境の真のコストは、インフラへの支出ではなく、こうした運用の不整合に表れます。
プラットフォーム思考で主導権を取り戻す
この変化にうまく対応している組織は、同じアプローチに行き着く傾向があります。アプリケーションデリバリとセキュリティを環境固有の機能として扱うのではなく、プラットフォームとして捉え始めています。
プラットフォームアプローチは、環境ごとの違いをなくすのではなく、抽象化します。ポリシーは一度定義すれば、あらゆる環境で適用できます。トラフィック管理はインフラストラクチャではなく、アプリケーションに追随します。実装方法が異なる場合でも、一貫したセキュリティ態勢を維持できます。
これにより、クラウド導入の初期に期待されていた多くのメリットが再び得られます。アプリケーションを1か所に集約することなく、スピードと一貫性を取り戻し、運用負荷を軽減できます。
さらに重要なのは、プラットフォームアプローチにより、デリバリーとセキュリティを、分散し、さまざまな要素が混在し、絶えず変化する今日のポートフォリオの実態に適合させられることです。
ハイブリッド環境の運用実態
ハイブリッドは移行期の一段階ではありません。現実の運用形態です。
データがそれを明確に示しています。ワークロードの移行は続いており、特に従来のオンプレミス環境からクラウド型モデルへの移行が進んでいます。モダンアプリケーションは増え続けていますが、従来型アプリケーションも今後何年にもわたって存続します。
真に問われるのは、アプリケーションデリバリとセキュリティが同じペースで進化しているかどうかです。
環境固有のツールに依存する組織では、ポートフォリオの移行に伴う運用上の負担が続きます。一方、統合プラットフォームに投資する組織は、一貫性と制御性を確保し、運用手順を書き換えることなくワークロードを移行できるようになります。
アプリケーションの分散配置は均衡に達しつつあります。それを支える運用モデルも同様に均衡を図る必要があります。
著者について

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。
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