今日の企業は、数百ものアプリケーションとAPIが複数の環境に分散する、極めて複雑なハイブリッド/マルチクラウドIT環境への対応において、かつてないほどの複雑さに直面しています。さらに、AI駆動型アプリケーションが最新の分散インフラストラクチャに不可欠な構成要素となるにつれ、この複雑さは一層増していきます。
F5では、これを「Ball of Fire」と呼んでいます。各組織でBall of Fireが拡大し続けるにつれ、運用のサイロ化が進み、俊敏性が低下し、市場投入までの時間も長期化します。脅威の対象領域も拡大しており、企業は増加するAI主導のサイバー攻撃にさらされています。同時に、組織は複数ベンダーのポイントソリューションをつなぎ合わせざるを得ず、その結果、ポリシーの不整合や可視性と管理のギャップが生じ、セキュリティリスクがさらに高まっています。

業界が現在陥っている危機の連鎖から脱却するには、新たなアプローチが必要であることは明らかです。その答えは、企業が極めて複雑な課題を克服できるよう支援することに重点を置いた、次世代のApplication Delivery Controller(ADC)にあるとF5は考えています。このADCのさらなる進化は、企業のアプリケーションデリバリとセキュリティに対する取り組み方を根本から変えるものです。
ADCが担う中心的な役割
「ADCですか? ADCの話は何年も前にしなくなったのでは?」と思われるかもしれません。
業界の一部では、ADCについて語ることを確かにやめました。しかし、ADCの終焉という見方はかなり誇張されています。実際、ADCはアプリケーションのパフォーマンス、可用性、セキュリティにおいて中心的な役割を果たしています。ADCはゲートキーパーとして機能し、オンプレミス、複数のクラウド、ファーエッジ環境など、導入場所を問わず、アプリケーションを効率的かつセキュアにユーザーへ提供できるようにします。
API、マイクロサービス、AI駆動型ワークロードの普及に伴い、ADCの重要性はかつてないほど高まっています。最新のAI駆動型ワークロードを導入するには、インテリジェントなトラフィック管理をサポートし、堅牢なセキュリティを提供するとともに、あらゆる環境を一元管理できるソリューションが必要です。
F5は、これを実現するうえでADCが適切なテクノロジーであると考えています。
変化する環境に向けてADCを再構想
ADCは3つの異なる時代を経て進化し、アプリケーションデリバリとセキュリティを大きく前進させてきました。第1世代のADCであるADC 1.0は、ドットコムブーム期に登場しました。オンプレミスのデータセンターインフラ向けに構築され、モノリシックアプリケーションと3層アプリケーションをサポートするとともに、WAFとDDoS対策を中心とするセキュリティコンポーネントを備えていました。主にハードウェアアプライアンスと仮想アプライアンスとして、負荷分散、コンテンツキャッシュ、Webアプリケーションセキュリティに使用されました。F5はこの市場をリードするまでに成長し、大企業がWeb時代に向けてデジタルサービスを拡張できるよう支援しました。
2010年代にクラウドコンピューティングが登場すると、ADCには、俊敏性、拡張性、コスト効率を高め、クラウドの規模に対応することが求められるようになりました。これによりADC as a Serviceが誕生し、ADCの機能が拡張され、クラウド移行に伴うお客さまの課題に対応できるようになりました。この時代には、クラウドの分散型という性質上、可視性、規模、一貫性が求められたため、オンプレミスデータセンターの物理ハードウェアは以前ほど魅力的ではなくなりました。アプリケーションも同様に変化し、マイクロサービスとコンテナ化の普及によって、クラウドベースのアプリケーションの柔軟性が高まり、保守が容易になりました。特に増加を続けるAPIを狙う新たな脅威の出現により、APIセキュリティ、ボット対策、DDoS緩和など、追加のセキュリティ機能が必要になりました。
クラウド時代が進展するにつれ、あらゆるアプリがクラウドに移行するという見方が一般的になりました。ハイブリッド環境は一時的なものにすぎないと考える人も少なくありませんでした。クラウドはより高速で低コスト、かつセキュアであり、ビジネスの俊敏性向上を求められるITチームの負担も軽減すると考えられていたのです。
しかし、当然ながら、こうした予測はさまざまな点で誤りだったことが明らかになっています。
今日のアプリは複数のアーキテクチャで構築され、複数のクラウド、SaaS、エッジ拠点、企業のデータセンターなど、さまざまな環境に分散しています。AIによって現在のハイブリッド/マルチクラウドインフラストラクチャがさらに複雑化すると見込まれる中、絶えず変化するデジタル環境のニーズに応えるため、私たちは共通のビジョンを改めて描き直す必要があります。

AIがもたらす複雑さへの答え
AI時代の到来により、アプリケーションデリバリとセキュリティに新たな課題が生じています。本質的に分散型であるAIアプリの要件に対応するため、インフラストラクチャはハイブリッドかつマルチクラウドを前提に設計されています。こうした分散型AIアプリケーションでは、環境間で膨大な量のデータを移動し、保護する必要があるため、インフラストラクチャのリソースに多大な負荷がかかります。さらに、APIの急増と、より高度化したAI支援型の脅威が相まって生じる新たな脅威環境に対処するには、AIを活用したセキュリティが不可欠になっています。
次世代のADCは、従来の負荷分散をはるかに超える機能を提供します。ADC 3.0は、複雑さ、一貫性の欠如、柔軟性の不足、可視性の欠如という、AI時代のIT環境における重大な課題に対処します。高性能な負荷分散とアプリケーションデリバリに、高度なWebアプリケーションおよびAPIのサイバーセキュリティ機能を組み合わせることで、ADCの可能性とあるべき姿を再定義します。
これらの新しいADCを特徴づけ、企業が直面する喫緊のIT課題への対応方法を示す基本特性は、次の6つです。
- あらゆるアプリに包括的なデリバリとセキュリティを提供し、ITチームとセキュリティチームの管理を簡素化する単一のプラットフォーム。
- あらゆるフォームファクターで導入でき、今日の多様なIT環境全体でシームレスに稼働します。
- 単一のポリシーと一元管理により、すべての拠点で複雑さを軽減し、効率を向上させます。
- 豊富な分析とインサイト今日の複雑なアプリケーションに即した実用的な情報を提供し、パフォーマンスの向上とセキュリティの強化を支援します。
- 完全にプログラム可能なデータプレーンにより、導入の自動化と機能のカスタマイズが可能になり、組織は変化するニーズに効果的に対応できます。
- ライフサイクル全体の自動化により、チームは膨大なメンテナンスタスクに追われることなく、イノベーションの実現に注力できます。
ADC 3.0時代におけるお客さまの成功を支援
ハードウェア、ソフトウェア、SaaSを独自に組み合わせて提供するF5は、ハイブリッド環境やマルチクラウド環境にわたるあらゆるアプリとAPIに対応できる唯一のベンダーです。企業のデータセンターから複数のクラウド、ファーエッジ環境まで、場所を問わず展開されるモダンアプリとレガシーアプリの両方に対応します。
過去25年にわたりこの分野を一貫してリードしてきたF5は、ADC 3.0時代の課題に取り組むお客さまを支援できる独自の立場にあります。
F5はこの専門知識をさらに発展させ、企業がAI活用の取り組みと目標を実現できるよう支援しています。また、ITチームがAIファクトリーとインフラストラクチャを導入し、拡張するために必要なツールを提供できるよう、NVIDIAやNetAppなどの企業と提携しています。さらに、新たに出現するAPIセキュリティ脅威から、お客さまのAI環境を保護しています。組織がAIアプリケーションの導入に必要なセキュリティ、拡張性、信頼性を確保できるよう、F5 AI Gatewayを提供しています。また、お客さまとパートナーがAIワークロードのアーキテクチャ設計と導入を迅速化できる新たなフレームワークも提供しています。さらに、AIを活用した脅威への防御とアプリケーション保護の簡素化に向けて、F5ソリューション全体でAIの活用を進めています。
これはまだ始まりにすぎません。F5は、ADC 3.0時代を象徴するプラットフォームの提供を目指しています。今後数か月にわたり、企業がAIの価値を最大限に活用しながら運用環境を簡素化できるよう、F5が進めている投資について詳しくお伝えしていきます。
今年は刺激的な1年になりそうです。今後の展開にぜひご期待ください。
次世代ADCの詳細については、F5のプレスリリースおよびf5.comの詳細解説をご覧ください。あわせて、Application Delivery Top 10とは?
著者について

Kunal Anandは、最高製品責任者としてF5の製品部門を率いています。製品のビジョン、戦略、実行を統括し、重要な課題を解決して優れた顧客体験を生み出す画期的なソリューションの開発を推進しています。前職の最高技術・AI責任者としては、F5のテクノロジーおよびAIに関する戦略とビジョンを策定しました。 F5入社以前は、Impervaで最高技術責任者と最高情報セキュリティ責任者を兼任していました。2013年に共同創業したアプリケーションセキュリティのスタートアップPrevotyが2018年に買収されたことを機に、Impervaに加わりました。Prevoty以前は、BBC Worldwideでテクノロジーディレクターを務めました。イノベーションと技術分野で豊富な実績と専門知識を有し、Gravity、MySpace、NASA Jet Propulsion Labでは、セキュリティ、データ、テクノロジー、エンジニアリングの各チームを率いる役職を歴任しました。 AIと機械学習の分野で15年以上の経験を持ち、モデルのトレーニング、AIを活用したアルゴリズムによる製品強化、AIアーキテクチャの設計と実装に携わってきました。 Babson Collegeでコンピューターサイエンスの理学士号を取得しています。
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