「大いなる力には、大いなる責任が伴う」。ヴォルテールやチャーチルとの関連も指摘されていますが、この言葉はピーター・パーカーのベンおじさんの言葉として登場する『スパイダーマン』のコミックで最もよく知られています。もちろん、この言葉が広く浸透している理由の1つは、タイトルが示すTLSインスペクションをはじめ、さまざまな状況やトピックに当てはめられることです。
最近、米国国家安全保障局(NSA)は、Transport Layer Security Inspection(TLSI)の導入に伴う潜在的なリスクに対処するための「勧告」を公開しました。このNSAの勧告では、TLSI製品を導入・使用する組織に向けて、潜在的なセキュリティ上の弱点を軽減する方法も示されています。
TLSIについて簡単に説明します。TLSIは「TLS break and inspect」とも呼ばれ、TLSやSecure Socket Layer(SSL)で暗号化されたネットワークトラフィックを組織が復号し、再暗号化できるようにするプロセスです。現在、攻撃の多くが暗号化トラフィックに隠されていることから、組織にとってTLSIは不可欠です。たとえば、最新の調査によると、現在ではページ読み込みの90%以上がSSL/TLSで暗号化されており、フィッシングWebサイトの71%が暗号化証明書を利用しています。
現在、多くの組織では、プロキシデバイス、ファイアウォール、侵入検知システム(IDS)、侵入防止システム(IPS)などの専用デバイスを使用して、TLSで暗号化されたトラフィックを復号し、再暗号化しています。一方、セキュリティスタック内のデバイスを数珠つなぎにし、TLS暗号化トラフィックを通過させることで、すべてのセキュリティデバイスで復号と再暗号化を行っている組織もあります。TLSIプロセス全体は、受信する暗号化トラフィックに潜むマルウェアなどの潜在的な脅威を監視するうえで役立ちます。また、データ流出や、追加の攻撃手段をダウンロードしようとする悪意のあるサーバーとのアクティブなコマンド&コントロール(C2)通信がないか、送信する暗号化トラフィックを監視することも可能になります。
しかし、NSAの勧告によると、TLSIの導入・使用方式や導入方法によっては、組織に深刻なリスクをもたらす可能性もあります。
NSAは勧告の中で、組織のネットワーク内でTLSトラフィックを復号して検査する処理は1回だけにすることも推奨しています。フォワードプロキシデバイスでTLSトラフィックを復号、検査、再暗号化した後、同じ処理を行うために別のフォワードプロキシデバイスへ送信すべきではないと、勧告には明記されています。この処理は追加のメリットをもたらさず、リスク領域を拡大します。
TLS証明書を適切に検証しないTLSI製品を組織が導入または使用している場合、TLS暗号化が弱まり、中間者(MiTM)攻撃を受ける隙が生じる可能性があります。
TLSIに使用されているフォワードプロキシデバイスが適切に動作していない場合、復号されたトラフィックが許可されていない第三者のデバイスに転送され、機密データの窃取や不正使用につながる可能性があります。
NSAの勧告によると、フォワードプロキシへのネットワークトラフィックの流れを監視することで、悪用される可能性を軽減できます。さらに、TLSIが意図どおりに動作していることを確認するため、ログ分析を活用することも推奨されています。これにより、誤ってルーティングされたトラフィックを検出できるほか、管理者による意図的または非意図的な不正利用や誤用の検出にも役立ちます。
また、TLSI製品ではTLS接続を連鎖させる必要が生じる可能性が高く、その結果、暗号化による保護が低下し、強度の低い暗号スイートやTLSバージョンが悪用されるおそれがあります。一部のTLSI製品では、例外としてのみ、強度の低いTLSバージョンや暗号スイートの使用を許可している場合があります。
ほとんどのTLSIフォワードプロキシデバイスには、新しい証明書を作成して署名するための独自の内部認証局(CA)が組み込まれています。しかし、この組み込みCAが悪意のあるコードの署名に使用され、IDSやIPSなどのセキュリティメカニズムが回避されたり、正規のサービスを装う悪意のあるサービスの展開に利用されたりする可能性があります。NSAの勧告では、データフロー、TLS、CAが適切に実装された製品を選択するよう組織に推奨しています。
TLSIデバイスがトラフィックを復号してからセキュリティデバイスに送信するまでの箇所も、攻撃対象領域となる可能性があります。この時点でトラフィックは平文であるため攻撃を受けやすく、攻撃者にユーザー認証情報やその他の機密データを窃取されるおそれがあります。
F5 SSL Orchestratorは、暗号化されたトラフィックを復号し、適切なセキュリティ制御で検査してから再暗号化することで、暗号化トラフィックの可視性を確保し、隠れた脅威のリスクを軽減します。また、セキュリティサービスを動的に連携させ、ポリシーに基づいて復号済みトラフィックを振り分けるとともに、暗号化トラフィックにコンテキストベースのインテリジェンスを適用し、既存のセキュリティ投資の効果を最大限に高めます。さらに、組織のセキュリティインフラストラクチャ全体にわたって最新の暗号化テクノロジーを一元管理および配布します。証明書と鍵の管理を一元化しながら、堅牢な暗号スイートの管理と制御を実現します。SSL Orchestratorは、各セキュリティサービスの稼働状態を個別に監視します。また、セキュリティソリューションを最高の効率で稼働させるとともに、F5の負荷分散およびスケーリング機能により、高可用性を維持しながら拡張できるようにします。加えて、セキュリティとプライバシーに関する政府および業界の最も厳格で堅牢な標準に対応しています。
NSAの勧告で重視されているのは、TLSの復号と検査を適切に、かつ1回だけ実行することです。次世代ファイアウォール(NGFW)のようなオールインワンソリューションであれば、技術的にはこの考え方に対応できるように思えるかもしれません。しかし実際には、あらゆる種類の暗号化トラフィックとスループット要件に対応しようとすると、極めて非現実的です。真に必要とされる、TLSの復号と検査を適切に1回だけ実行するための最善のアプローチは、複数ベンダーの製品を緊密に監視しながら安全に接続し、「復号/検査/1回のみの再暗号化」を行うソリューションとして構成することです。これにより、柔軟性とレジリエンスが向上し、より実用的な運用が可能になります。
F5 SSL Orchestratorを導入すれば、組織はフォワードプロキシデバイスを連鎖させる必要がありません。トラフィックを個別に監視したり、デバイス監視を追加したりする必要もありません。フルプロキシアーキテクチャにより、最も安全性の高い暗号スイートまたは暗号化方式が使用されます。つまり、SSL OrchestratorはNSAの勧告で指摘されたすべてのリスクを軽減するとともに、責任と権限の間に確立されている関係に沿った対応を組織が進められるよう支援します。
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