eBPFはエージェントレスかつ無停止で導入でき、データ生成と制御を魅力的な形で両立します。
eBPFは、比類のない可視性を提供し、セキュリティの戦略的な制御ポイントとして機能できることから、最新のオブザーバビリティおよびセキュリティソリューションにおける最も重要なコンポーネントの1つになりつつあります。
eBPFとは
eBPF(extended Berkley Packet Filter)は、テレメトリの収集ポイントと制御ポイントの両方として機能できる、軽量なLinuxカーネルレベルの仕組みです。カーネルの変更や再コンパイルが不要で、収集・制御機能をシステムに容易に組み込めることから、広く利用されています。
主にシステムからテレメトリを収集するために使用されますが、限定的な機能を実行できるため、制御ポイントとしても利用できます。たとえば、不審なパケットの伝播を防止できるほか、パケットレベルのルーターのような役割も果たします。
この二面性により、eBPFはオブザーバビリティ(キャプチャ)とセキュリティ(制御)の両市場で重要性を増しています。eBPFは、従来のエージェントベースのテクノロジーでは技術的またはコスト面で実現が難しい、より充実したキャプチャポイントを提供し、分析を可能にします。eBPFは、オブザーバビリティとセキュリティの機能を実現する基盤となります。
“eBPFについてさらに詳しく知るには、F5 DevCentralのBuu LamによるBrightboardレッスンをご覧ください”
eBPFが2023年の最注目テクノロジーである理由
この主張を聞いて、まず「いやいや、2023年を代表するテクノロジーは生成AIでしょう」と思う方も多いはずです。
異論を申し上げます。
生成AIは2023年で最も有望なテクノロジーですが、市場への影響はまだ初期段階にあります。組織が生成AIの力を迅速に活用できるツール、フレームワーク、ライブラリ、アプリ、Webサイトは文字どおり数千も存在しますが、市場に目に見える影響を与えているものはほとんどありません。これまでのところ、生成AIの影響は主に社内の生産性向上にとどまっています。これは良い兆候ではあるものの、市場を大きく変えるには至っていません。
一方、eBPFは、セキュリティとオブザーバビリティという2つの異なる市場に大きな影響を与えています。実際、eBPFは、この2つの市場の融合を可能にし、企業とそのデータをより安全に保つのに役立つ次世代の運用ツールを生み出す基盤技術の1つです。したがって、eBPFは2023年で最も戦略的なテクノロジーです。
2023年を通じて、eBPFはオブザーバビリティを実現する技術から、限定的ながらも制御ポイントとして機能する能力を通じて、セキュリティを大きく形作る存在へと進化しました。再コンパイルや変更を必要とせずLinuxベースのシステムに組み込めるため、技術的にはエージェントレスであり、従来のエージェントベースの代替手段と比べて非常に軽量です。
ただし、eBPFだけでは、生成された膨大なデータをどう活用するかという課題は解決できません。これはさらに大きな問題です。MLやDataOpsなどのプラクティスやアプローチが台頭しているのは、テレメトリパイプラインを拡張し、そうした有用なデータを分析に活用して、組織が2021年から求め続けている実用的なインサイトを生み出せるようにするためです。
しかし、多くの組織と同様に、まずは適切なすべての場所からテレメトリを収集できていることを確認する必要があります。そして、この課題に対する解決策の1つが、eBPFの活用です。
実は、eBPFは単にデータを生成するだけのテクノロジーではありません。データに基づいて処理を実行することもできるため、フィルターや簡易的なルーターとして、また攻撃や悪意のある攻撃者を早期に無力化する手段として利用できます。セキュリティサービスはデータを原動力とする一方、そのデータに基づいて処理を実行するための制御ポイントにも依存しており、eBPFはこの両方の機能を提供します。
こうした理由から、オブザーバビリティとセキュリティの両市場でeBPFの活用が拡大しており、特に両方の領域にまたがって機能し始めている製品やサービスで、その傾向が顕著です。eBPFは2023年を代表するテクノロジーです。
生成AIの圧倒的な勢いを前に、eBPFが2024年もその地位を維持できるかどうかは、まだ分かりません。しかし、AIの進化の速さを考えると、2024年にeBPFを追い越さなくても、その後まもなく追い越すと見られます。
企業におけるeBPFの導入
エンタープライズ組織は、eBPFを活用するソフトウェアやサービスを利用するだけでなく、自社のテクノロジースタックにeBPFを組み込むこともできます。eBPFを使用すると、特に手動での計測に多大なコストがかかる従来型アプリケーションの可視性を大幅に高められます。eBPFを活用すれば、エージェントベースの選択肢の導入と管理に伴うオーバーヘッドや追加コストをかけずに、アプリケーションスタックへ可視性を効果的に組み込めます。
まだeBPFを検討していない組織には、今こそ検討を始めることを推奨します。クラウドやエージェントベースの選択肢に伴うコストが上昇する中、eBPFの活用は、可視性を高め、AIに必要なデータパイプラインを強化しながらコストを削減するうえで、優れた戦略的選択肢となります。
著者について

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。
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