クラウド活用の先進企業と後発企業を分ける鍵は、アプリケーションサービス

F5エコシステム | 2018年8月13日

El RegのITやテクノロジーに関する論評を読むのが、ときどき無性に楽しくなります。ほどよく辛辣なその批評は、しばしば的を射ています。

しかし、その辛辣な論評が的外れなこともあります。今年の初夏に掲載されたクラウドに関する痛烈な記事「クラウド市場は6社の競争、うち3社は周回遅れ」では、最新のGartner MQの結果を嘆いています。最新の分析では、市場要件に基づき、複数のクラウドプロバイダーが評価対象から外されました。これに対してEl Regはかなり辛辣に反応しましたが、少なくとも今回に限っては、「Gartnerの魔術師たち」の判断はまったく正しいと言えます。

「現在、顧客はクラウドIaaSプロバイダーに高い期待を寄せています。機能の奥行きと幅広さに加え、高可用性、パフォーマンス、セキュリティといった、市場をリードする技術力を求めています」と、Gartnerの賢人たちは記しています。「顧客が期待しているのは、『ハードウェア』インフラストラクチャ機能だけではありません。管理機能、開発者向けサービス、クラウドソフトウェアインフラストラクチャサービス、さらには完全に統合されたPaaS機能も求めています」

最新のMQでは8社のIaaSプロバイダーが除外され、AWSとAzureが首位に君臨し、Googleがそれを追う形でリーダーに位置付けられました。一方、Alibaba Cloud、Oracle、IBMはニッチプレイヤーと評価されています。チャレンジャーもビジョナリーも存在しません。いるのはリーダーと、そうでない企業だけです。

私が腹立たしく感じたのは、Gartnerの分析ではありません。El Regがその評価基準を一蹴し、さまざまな呼び方があるものの、開発者向けサービスや統合機能と併せて「アプリケーションサービス」と総称できる要素に大きく依存している点でした。

なんということでしょう!企業が、エンタープライズ向けの機能や能力を提供するIaaSプロバイダーを求め、選んでいるとは、いったい誰が想像したでしょうか?まったく考えられません!

ここで、2013年にさかのぼり、ある記事をきっかけに始まった議論を簡単に振り返ってみましょう。その記事では、クラウドプロバイダーが「何を間違えていたのか」が詳しく述べられていました。間違いの1つは、アプリケーションサービスと統合による差別化ができていなかったことです(今もできていないプロバイダーもあります)。

2013年に私が書いた辛辣な記事から引用します。

IaaSの差別化は、インスタンスのサイズや構成の選択肢を増やしたり、価格競争を繰り広げたりすることで実現するものではありません。企業顧客は、サービスがもたらすビジネス上および運用上の価値を理解しており、価格は決定要因というよりも、総合的な判断材料の1つにすぎません。ハイブリッドクラウドの構築をより容易かつ迅速にし、サービスの安定性に対する信頼性を高める事前統合済みサービスが提供する価値は、「安いかどうか」よりも重視されます。

今日のクラウドプロバイダーの成否を分けるのは、アプリケーションサービスと統合型サービス(たとえば、AWS Rulesや、迅速かつ容易なロギング統合)です。

今日のアプリケーションデリバリで重要なのは、アプリケーションサービス

エンタープライズアプリケーションをクラウドに移行する際、移行するのはアプリケーションだけではありません。移行するのは、アーキテクチャです。このアーキテクチャは、平均16個ものさまざまなサービスで構成されています。その一部は、移行先クラウドのネイティブなアプリケーションサービスに置き換えることができます(また、置き換えるべきです)。中でも明らかなのは、企業ネットワーク内で「共有」されていたサービスです。こうしたサービスは、クラウドプロバイダーに任せるのが最適です。主にネットワークとアプリケーションのインフラストラクチャが該当しますが、ロギングも含まれます。

アプリケーションサービスの平均所要時間 SOAD18

その他のアプリケーションサービスも、コンプライアンスとポリシーの一貫性を維持するために移行できます(また、移行すべきです)。特に、企業のセキュリティ要件に合わせてアプリケーションごとに作成されたポリシーが該当します。Webアプリケーションファイアウォールのポリシーはアプリケーション固有の性質が強いことで知られており、オンプレミスからクラウドへ移行される可能性が最も高いポリシーです。ポリシー管理への投資を維持するという点だけでも、移行に取り組む価値があります。

いずれにしても、この手法は、移行先のクラウドに同様のアプリケーションサービス(および統合機能)が存在すること、またはオンプレミスで使用しているアプリケーションサービスを過度なオーバーヘッドを生じさせずにクラウドへ移行できることを前提としています。

アプリケーションサービスを自由に組み合わせ、必要なものだけを選ぶこのアプローチは、アプリケーション単位のアプリケーションサービスが台頭している理由の1つです。クラウドプロバイダーが成長を維持するには企業顧客が必要であり、コストはもはや以前ほど大きな決定要因ではありません。クラウドプロバイダーが企業顧客を獲得し、維持するには、統合とアプリケーションサービスによる差別化が重要です。

しかし、クラウドプロバイダーがすべてのアプリケーションサービスを提供するわけではなく、組織が利用するサービスの平均数は増え続けています。そのため、組織は従来型データセンターのモノリシックなデリバリーアーキテクチャを分割し、アプリケーション単位のモデルを採用する必要があります。これにより、可用性の維持、パフォーマンスの向上、セキュアな環境の維持に必要なアプリケーションサービスを、プラグアンドプレイ方式で選択できるようになります。

残念ながら、El Regはこの点を近視眼的に捉え、的を外しています。分析自体は的確ですが、差別化を求める企業の需要については、付随的に触れているにすぎません。いずれコスト削減が限界に達し、クラウドプロバイダーは顧客を引き付ける新たな方法を見つけざるを得なくなるという見方には、以前から十分な根拠がありました。プロバイダーが差別化を図るうえで、アプリケーションサービスは常に最も有力な選択肢でした。

共有

著者について

Lori Mac Vittie
Lori Mac Vittie特別技術者兼チーフエバンジェリスト | F5

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。

Lori Mac Vittieのその他のブログ記事

関連するブログ記事

F5 Application Study Tool:OpenTelemetryによるF5 BIG-IP環境の監視
F5エコシステム | 2025/04/15

F5 Application Study Tool:OpenTelemetryによるF5 BIG-IP環境の監視

F5の新しいオープンソースツールは、BIG-IP環境を詳細に可視化し、データを追跡するとともに、強力でカスタマイズ可能なインサイトを得るための基盤を提供します。

F5 BIG-IPでAI防御を実現
F5エコシステム | 2024/11/13

F5 BIG-IPでAI防御を実現

F5 BIG-IP Advanced WAF、BIG-IP APM、BIG-IP SSL Orchestratorが、生成AIアプリ向けに包括的なセキュリティソリューションを提供する仕組みをご覧ください。

F5 Advanced WAFによるGraphQL APIの保護
F5エコシステム | 2021/08/31

F5 Advanced WAFによるGraphQL APIの保護

ここ数年、多くの組織がデジタルトランスフォーメーションを進めており、COVID-19のパンデミックによってその動きは加速しています。

アプリケーションサービスの現状 通信業界版:リーダーとしての台頭
F5エコシステム | 2019/02/19

アプリケーションサービスの現状 通信業界版:リーダーとしての台頭

通信ネットワークが進化し、さまざまな業界の幅広いユースケースに対応するなか、通信業界の回答者がテクノロジーリーダーとしての存在感を高めていることがわかります。

デジタルトランスフォーメーションは、単なるペーパーレス化ではない
F5エコシステム | 2017/07/10

デジタルトランスフォーメーションは、単なるペーパーレス化ではない

デジタルトランスフォーメーションは、単なるペーパーレス化ではありません。真のモダナイゼーションにアプリケーションアーキテクチャとセキュリティの再構築が必要な理由を、F5ブログでご覧ください。

やめましょう。もう本当にやめましょう。HTTPSはHTTPより高速ではありません。
F5エコシステム | 2016/09/19

やめましょう。もう本当にやめましょう。HTTPSはHTTPより高速ではありません。

もうやめましょう。HTTPSはHTTPより高速ではありません。プロトコルのパフォーマンスに関する微妙な違いと、暗号化トラフィックを適切に最適化する方法については、F5ブログをご覧ください。