F5は過去12年間にわたり、世界各地の経営幹部とIT意思決定者を対象に、ビジネスを形作るトレンドについて調査してきました。今年の「F5 State of Application Strategy Report」では、1つのことが明らかになっています。現在、3つの力が、組織によるモダンアプリケーションの構築、運用、セキュリティ確保のあり方を大きく変えつつあります。
第1に、分散AI推論、つまり1つ以上のトレーニング済みモデルを活用して、リアルタイムで応答、意思決定、予測を生成する処理が、AIアプリケーションの導入過程における重要な運用ワークロードとなっています。第2に、攻撃者がAIを利用して探索を加速し、攻撃の実行を自動化して、その範囲を拡大する中、脅威の状況は変化の速度、拡張性、持続性を増しています。第3に、ハイブリッドマルチクラウドは過渡的な段階ではありません。特にAIの普及により、アプリケーション、API、データ、推論サービスの配置場所に対する要件が高まる中、ほとんどの企業にとって恒常的な運用環境となっています。
セキュリティリーダーにとって、こうした変化は机上の話ではありません。すでに、保護すべき環境、支えるべきアーキテクチャ、そして意思決定のあり方に変化をもたらしています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
AI推論は今や、企業価値の中核です。
AI推論は一過性のトレンドではなく、急速にビジネスの中核を担う能力として定着しています。F5の調査では、回答者の77%が、モデルのトレーニングやチューニングではなく、推論がAI関連の主要な活動であると回答しています。
また、このレポートでは、企業が平均7つのAIモデルを運用しており、推論ワークロードがデータセンター、クラウド、エッジ拠点を含む分散環境全体に広がっていることも明らかになりました。

推論は、企業の競争力向上につながる重要なインサイトをリアルタイムで提供するため、企業にとって最も重要なAIワークロードです。こうした理由から、AIの活用は実験段階を脱し、業務や収益に直接影響を与える本番環境での大規模運用へと移行しています。
しかし、多くの組織は、AI推論を運用ワークフローや日常業務に導入する際に、大きな課題に直面しています。
大きな障壁の1つは、エンタープライズ規模のAI推論によって生じる環境の拡大と複雑化です。複数のモデルを使用するAI環境では管理負荷が増大します。また、モデルを連鎖的にルーティングする場合、プロンプト、応答、コンテキストがモデル間を移動する際に、実行時の新たなセキュリティリスクが生じます。
さらに、ビジネスパフォーマンスの向上にAI推論を活用するケースが増えるにつれ、AIのパフォーマンス、セキュリティ、信頼性をリアルタイムで管理する必要があります。そのためには、使用するモデルや導入先を問わず、ポリシーとコンプライアンスルールが一貫して適用されるよう、エンドツーエンドの可観測性が求められます。
こうした複雑さにはコストも伴います。これらすべての高性能な推論インフラストラクチャを運用するコストは、多額になる可能性があります。
分散AI推論は、新たなアプリケーション層として扱う必要があります。この層では、推論は単一のエンドポイントとして動作するのではなく、分散システムとして相互に連携します。つまり、ビジネスを支え、その継続を可能にするアプリケーションスタックの他の中核コンポーネントと同等の重要性と運用規律をもって、推論を扱う必要があります。
企業がAIとエージェントの活用を進める一方で、攻撃者も同様に活用を進めています。
組織は驚異的な速さでエージェント型AIを導入しています。しかし、犯罪者も同様です。回答した組織のほぼすべて(98%)が、自律型AIエージェントによるアクセスに対応するためにアプリを変更していると回答する一方、77%がAIエージェントのIDおよびアクセス制御に問題が生じると予想しており、攻撃者に大きな隙を与えています。

AIは、プロンプトインジェクション、データポイズニング、モデル反転など、従来の防御を回避する、予測困難な攻撃の侵入口を膨大に生み出します。しかし、AIシステムは単に攻撃対象領域を拡大するだけでなく、そのあり方自体を変えます。
お客さまには、API、プロンプト、アクセストークンがリアルタイムで交わり、攻撃の新たな最前線となる推論レイヤーに重点を置いたAIセキュリティツールが必要です。こうした接続は、強固なアイデンティティおよび認可制御と、すべてのAIインタラクションをリアルタイムで可視化する機能によって保護する必要があります。
プロンプトとレスポンスを検査・分析する包括的な監視ツールも必要です。デリバリーとセキュリティを統合することで、攻撃者の隠れ場所となる死角を排除します。
マルチモデルの分散型AIにより、ハイブリッドマルチクラウドの複雑さが増しています。
多くの組織では、あらゆるデジタル環境で柔軟性を確保しようとする中、ホスティング先の数と種類が増え続けています。F5のレポートの統計にも、この状況が表れています。回答組織の10社中9社以上(93%)がマルチクラウド環境を管理し、86%がオンプレミス、パブリッククラウド、コロケーションの各環境にまたがってアプリケーションを運用しています。
さらに、調査回答者は平均して、自社のデータセンター5か所に加え、コロケーション施設5か所を管理しています。また、組織は平均で4社の異なるパブリッククラウドプロバイダーを利用しています。つまり、今日のデジタル環境は本質的に分散し、異種混在しているのが標準です。

複雑さを軽減し、AIを保護するプラットフォームアプローチ
この3つのトレンドが定着する中で成長を続けるには、分散環境全体のあらゆるインタラクションをリアルタイムで提供、保護、制御するための、よりシンプルな方法が必要です。そのためには、環境全体で一貫してポリシーを適用し、デジタルエコシステムのあらゆる場所で機能するエンドツーエンドの可視化ツールと制御機能を備えた、統合インフラストラクチャアプローチが求められます。
ネットワーキング、アプリケーションデリバリ、セキュリティを統合したコンバージドプラットフォームは、分散した制御ポイントを一元的なポリシー適用レイヤーに集約し、動的なAIシステムとハイブリッドマルチクラウドインフラストラクチャの複雑さに対応します。F5 Application Delivery and Security Platform (ADSP) は、これを実現するために設計されています。コンテキストを認識するトラフィック検査により、内部と外部のインタラクションポイント全体に一貫したポリシーを適用し、攻撃者に悪用される隙を解消します。
環境全体にわたるエンドツーエンドの可視性と一貫した保護により、F5 ADSPはコントロールプレーンの数を削減し、NetOps、SecOps、アプリケーションの各チームの連携を促進することで、運用の複雑さを軽減します。その結果、デリバリー、セキュリティ、AIガバナンスが単一の運用モデルに統合され、エンタープライズ規模の推論がもたらす課題に対応できるようになります。
こうした重要なトレンドの詳細については、2026 State of Application Strategy Reportをダウンロードしてご覧ください。
著者について

John Maddisonは、F5の最高マーケティング責任者です。サイバーセキュリティ、クラウド、通信の分野で、製品チームおよびコーポレートマーケティング部門を率いてきた30年以上の経験があります。F5入社前はFortinetに12年間在籍し、直近では最高マーケティング責任者兼製品戦略担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めました。それ以前には、Trend Micro、Vina Communications、Octel Communicationsで要職を歴任しました。 英国デヴォン州のPlymouth Universityで工学の理学士号(B.S.)を取得しています。
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