データマスキングとデータ漏えい防止の違い

F5エコシステム | 2023年11月20日

2023年に台頭したテクノロジーの中には、技術者なら注目しておくべきものが数多くあります。その1つがデータマスキングです。実装面ではデータ漏えい防止と似ていますが、データマスキングとデータ漏えい防止ではユースケースが大きく異なります。

後者は、主要なWebアプリケーションおよびAPIセキュリティソリューションのすべてに、長年にわたって備わっている機能です。一方、データマスキングは、生成AIなどのテクノロジーの台頭に伴い、その必要性が認識され始めたばかりです。

データマスキングとは

データマスキングとは、元のデータを、同様の構造と形式を維持した架空のデータやスクランブル処理したデータに置き換えたり、元のデータを難読化したりすることで、機密情報を保護する手法です。この手法は、実際の機密情報を秘匿したまま、データを共有したり、テスト、トレーニング、分析に使用したりする必要がある場合に広く用いられます。データマスキングは、組織によるデータプライバシー規制への準拠、データ侵害リスクの軽減、データセットに情報が含まれる個人のプライバシー保護に役立ちます。

データ漏えい防止とは?

Data Leak Prevention(DLP)とは、機密情報を不正なアクセス、開示、悪用から保護するための戦略、ポリシー、ツールの総称です。DLPの主な目的は、個人情報、知的財産、営業秘密などの機密データが、組織のネットワークやシステムの外部へ偶発的または意図的に漏えいするのを防ぐことです。

同じ条件で比較できていますか?

市場では、重箱の隅をつつくように、青リンゴと赤リンゴは別物だと主張しているように見えるかもしれません。結局のところ、データマスキングとDLPはいずれも、アプリケーションやAPIで使用される機密データフィールドを「マスキング」または「難読化」するために、同じテクノロジーを利用する傾向があります。

違いは2つあります。

第1に、データマスキングの主なユーザーは、開発者、データサイエンティスト、MLOps担当者です。こうした従業員やパートナーは、実際の顧客データを使用してテストやトレーニングを行ったり、分析したりする必要があります。そのため、匿名性を保ちたい顧客や、企業のプライバシーポリシーによって匿名性が保証されている可能性のある顧客がリスクにさらされます。一方、DLPを最終的に利用するのは企業です。アカウント番号やクレジットカード番号などの機密情報のマスキングを義務付ける規制を遵守することは企業の責任であり、データが漏えいすれば企業が損害を被ります。組織が消費者を保護するためにDLPを導入しているとも言えます。実際にその役割も果たしていますが、通常、主な推進要因は規制です。

第2に、DLPが識別してマスキングするのは、個人情報のうち特定の一部に限られます。請求書では口座番号はマスキングされますが、氏名や住所はマスキングされません。一方、データマスキングでは、お客さまの匿名性を確保するため、氏名、住所、その他の個人を特定できる情報を難読化することがよくあります。これは特に、マーケティングや予測を目的として顧客全体のパターンや関係性を見いだす一方、特定の顧客を識別しないことが求められる分析のユースケースに当てはまります。

データマスキングに注目すべき理由

2024年に注目すべきテクノロジーの「ウォッチリスト」を作成するなら、データマスキングは間違いなくトップ10に入れるべきです。

これは、データマスキングがさまざまな取り組みに幅広く適用できるためです。特に、顧客行動に関するインサイトを得たり、ビジネス戦略に役立つパターンを見いだしたりするための分析やMLモデルのトレーニングを重視する取り組みに適しています。

生成AIと従来型AIが世界中のあらゆる製品やサービスに浸透し始めるなか、消費者はプライバシーの必要性をますます強く認識するようになっています。機密データをマスキングできれば、企業はAIの取り組みを推進しながら、顧客のプライバシーに対するニーズにも応えられます。

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著者について

Lori Mac Vittie
Lori Mac Vittie特別技術者兼チーフエバンジェリスト | F5

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。

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