eコマースの未来を拓くエージェント型AI

業界動向 | 2025年12月02日

小売企業は、オンラインプラットフォームにおける顧客体験と運用の両面で具体的なビジネス成果を生み出すため、特定のタスクに特化したエージェント型AIツールを開発しています。

パーソナルショッピングエージェントの登場に伴い、組織はAI主導のショッピングに対応できるようインフラを進化させていますが、これにはセキュリティ上の重大な影響が伴います。

“小売事業者は、自律型エージェントを適切に管理するため、リスク戦略とセキュリティ防御策を適応させる必要があります。”

防御担当者は、膨大なデータ、アラート、ログへの対応に追われています。複雑さを軽減し、効率的に対応するには、環境内で侵害の痕跡(IoC)が見つかる前に、最も重大な脅威を優先できる実用的なコンテキストが必要です。

このブログでは、自律型エージェントが制御不能に陥る仕組みと、セキュリティおよびリスク管理チームがエージェントに付与するアクション権限を慎重に検討する必要性について掘り下げます。

小売業界の現実

小売業者にとって、エージェント型AIは非常に大きな可能性を秘めています。大手eコマースプロバイダーではすでに、顧客の購買シグナルと刻々と変化する店舗環境をリアルタイムで把握する、高度なパーソナルショッピングエージェントを導入しています。

顧客エンゲージメントの効率化がもたらすビジネス価値と競争優位性は導入を促す大きな要因ですが、セキュリティへの影響も重大です。AIエージェントとは異なり、エージェント型AIは、自律的に認識、推論、行動するよう設計されています。その自律性により、トレーサビリティ、説明責任、ガバナンスに関する課題が生じます。

“大手eコマース事業者は、すでに高度なパーソナルショッピングエージェントを導入しています。”

eコマース業界では、Web APIとモバイルAPIのいずれにおいても、高度な攻撃の割合がすでに特に高く、カートへの追加トランザクションの5件に1件を転売ボットが占めています。攻撃者は今後もボットを利用し、バックエンドの大規模言語モデル(LLM)に対するサイバー攻撃を大規模化していくでしょう。また、大手小売業者のクリック&コレクトなどの主要なオンラインサービスをすでに妨害しているハッキング組織が、エージェント型ワークフローを標的とするために、戦術、技術、手順(TTP)を転用することは間違いありません。

小売業者には、エージェント型AIを安全に導入するための新たなアプローチが必要です。自律型エージェント固有のアーキテクチャと動作を考慮してリスク戦略とセキュリティ防御を適応させなければ、企業にとっての責任問題となります。

従来型ツールからの脱却

ああ、古き良き時代!境界を保護し、ネットワークファイアウォールやWebアプリケーションファイアウォールなどのセキュリティ制御を導入して、静的テストと動的テストを実施する。南北方向のトラフィックが主流で、従来のWebアプリセキュリティによってリスクを抑えられたクライアントサーバーアーキテクチャでは、こうした対策が有効でした。しかし、アプリケーションの急速なモダナイゼーション、APIベースのシステムの台頭、高度に相互接続されたAIエコシステムにより、リスクサーフェスが拡大し、マシン間(東西方向)のトラフィックが飛躍的に増加しています。

その後、多くの企業が自然言語処理(NLP)インターフェースを導入しました。セキュリティチームが対応に追われるなか、企業は今、エージェント型AIの導入を進めています。

“セキュリティのベストプラクティス、フレームワーク、規制当局による監督は、エージェント型AIによってその有効性を厳しく試されています。”

フロントエンドに対する新たなAI攻撃が、バックエンドでのリモートコード実行(RCE)など、従来型のエクスプロイトにつながるケースが多いため、多層防御などの既存のパラダイムは今なお有効です。

しかし、倫理的な情報開示などの確立されたセキュリティのベストプラクティス、共通脆弱性識別子(CVE)などの既存の枠組み、規制当局による監督は、エージェント型AIをめぐる開発競争への対応に苦慮しています。

MCPに賛同するのは誰?

そこで役立つのがModel Context Protocolです。Anthropicが提案したこの標準と、Googleが提案したAgent2Agent(A2A)プロトコルは、それぞれモデルとリソース間、エージェント間の通信に関する課題への対応に役立ちます。しかし、どちらも相互運用性に関する要件をすべて満たすものではありません。

MCPとA2Aは、標準化と相互運用性を大きく前進させるものです。しかし、セキュリティについてはどうでしょうか。既存のセキュリティ制御はMCPに対応できていますか?

ツールやアプリケーションの急増によってシャドーAIが生まれています。また、AIエージェントは新たに出現する攻撃プロンプトを検知できないため、設計上脆弱であり、機密データ漏えいのリスクにさらされています。

“防御側は、既存の制御を改修し、新たな制御を導入することで、ガバナンスを確保する必要があります。”

セキュリティおよびリスク管理チームは、エージェント型AIのリスクを把握し、ガバナンスを確保するために、既存の制御を改修するとともに、新たな制御を導入する必要があります。特に、WebアプリケーションファイアウォールとAPIセキュリティソリューションは、MCPに対応しなければなりません。また、自動化ツールキットがAIによって強化され、攻撃者が攻撃を迅速に武器化できるようになる中でも、ボット管理ツールにはレジリエンスを維持する能力が求められます。たとえば、LLMのトレーニングデータや検索拡張生成(RAG)パイプライン内のコンテンツのスクレイピングを防ぐには、ボット管理ツールが、悪意のあるパターンを検出するMLモデルを使用して攻撃者の新たな手法を発見し、暗号化と難読化によって回避を防止する必要があります。

防御側は、AIモデルとアプリに対する脆弱性テストをランタイム検査と併用する必要もあります。こうした機能強化は、トレーサビリティを確保し、ヒューマン・イン・ザ・ループ(HITL)による監督に必要なインサイトを提供するうえで不可欠です。

目指すべき指針:可視化。設定。統合。保存。

エージェント型セキュリティの要点は、検知までの時間を短縮し、修復を迅速化するとともに、セキュリティチームの負担を軽減することです。

AIモデルの選択によってAIシステム全体が侵害される可能性があるため、導入前および実行時にモデルを強化する必要があります。F5 AI Red TeamとF5 AI Guardrailsを組み合わせることで、継続的なテストと行動ベースラインの継続的な確立が可能になり、潜在的な悪意のあるアクティビティを検出できます。

“エージェント型AIのリスク管理には、起こり得る問題を把握し、適切なガードレールを設定するとともに、パターンを統合してインシデント対応を自動化することが必要です。”

公表済みの特定の攻撃だけを緩和して同じ根本的な弱点が悪用される余地を残すのではなく、継続的なテストを通じて根本的な弱点を発見することに重点を置いたプロアクティブなアプローチにより、さらに優れた保護を実現できます。

Red teamingでは、敵対的攻撃をシミュレーションしてAIシステムの耐性を検証し、導入前にリスクへ対処できます。ライブ監視およびランタイム保護システムと組み合わせることで、セキュリティ制御は異常な動作やデータ流出などの攻撃を継続的に検知し、自動的に対応できます。

EU AI Actのような規制やNISTのフレームワークへの準拠が義務化される中、AIのセキュリティ態勢を実証できることが求められます。

小売企業は、起こり得る問題を把握し、適切なガードレールを設定するとともに、パターンを統合してインシデント対応を自動化することで、時間を節約し、最終的にはコストも削減できます。

未来はすでに始まっています

従来のツールだけでは、エージェント型AIのリスクに十分に対処できず、保護とガバナンスに不備が残ります。

これに対処するには、eコマース事業者は、AIの成熟度のあらゆる段階でAIワークフローを保護する必要があります。これには、プロアクティブな攻撃テスト、実行時の検査とポリシー適用、一元化された可観測性とコンプライアンスにより、新たな規制基準に対応することが含まれます。

レッドチーミングとランタイムガードレールの機能をF5 Application Delivery and Security Platform (ADSP) に導入することで、小売事業者は、パイロット段階から本番環境まで、エージェント型AIの展開を継続的に保護できます。

詳しくは、F5 solutions for eCommerceをご覧ください。

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著者について

Mani Gadde
Mani Gadde業界マーケティング担当シニアマネージャー

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