このブログ記事は、AIデータデリバリーに関するシリーズの第6回です。
人工知能(AI)パイプラインは、データがモデルに到達して終わりではありません。むしろ、多くの点で、そこから最も困難な作業が始まります。
データを取り込み、変換し、トレーニングや推論に利用できる状態にした後も、組織はそのデータをAIアプリケーションに組み込み、ユーザー、パートナー、システムに大規模に提供する必要があります。こうしたアプリケーションは、顧客体験の向上、ワークフローの自動化、リアルタイムの意思決定支援において、これまで以上に大きな力を発揮しています。そのため、可用性、パフォーマンス、セキュリティ、ガバナンスは、引き続きアプリケーションデリバリにおける最重要課題です。
AIアプリケーションを確実に提供するには、最新かつ最先端のモデルやインフラストラクチャだけでは不十分です。AIトラフィックをインテリジェントに管理し、限られたリソースを保護しながら、変化の激しい環境に適応できる制御レイヤーが必要です。
ここで引き続き中心的な役割を果たすのが、アプリケーションデリバリーコントローラー(ADC)です
AIアプリケーションデリバリーが異なる理由
従来のアプリケーションが処理するリクエストは、一般に短時間で完了し、予測可能です。一方、AIアプリケーションの動作は大きく異なります。世界各地を訪れ、AIアプリケーションを構築した多くの方々と話す中で、いくつかの共通点が見えてきました。
AIトラフィックは、突発的に増加し、変動が大きくなることがよくあります。リクエストには、大規模なプロンプトやコンテキストが含まれる場合があります。レスポンスは一括で返されるのではなく、継続的にストリーミングされることがあります。1つのリクエストから処理が分岐し、検索システム、埋め込みサービス、ダウンストリームツールなど、複数のサービスが呼び出される場合もあります。その背後では、推論ワークロードがGPUなどの高価で容量に制約のあるリソースを消費します。
AIアプリケーションは、セッションに新たな概念ももたらします。セッションデータは単一のサーバー内に保持されるのではなく、プロンプトとレスポンスで受け渡されるコンテキストに含まれます。これにより推論サーバーの負荷は軽減されますが、アプリケーションデリバリーレイヤーに極めて高度なインテリジェンスを組み込む必要が生じます。今やADCはアプリケーションに不可欠な要素です。
AIシステムの障害も、正常か停止かの二者択一であることはほとんどありません。推論クラスターは稼働していても、一部のノードに過剰な負荷がかかっている場合があります。検索サービスの応答が遅くなることもあります。特定のリージョンが飽和状態にある一方で、ほかのリージョンは正常に稼働している場合もあります。インテリジェントな配信制御がなければ、こうした部分的な障害によってユーザーエクスペリエンスは急速に低下し、コストも増大します。
大規模環境では、AIアプリケーションデリバリは単なるネットワークの問題ではなく、システム全体の問題となります。
AIアプリのコントロールプレーンとしてのADC
ADCは、クライアントとAIサービスの間に位置する一元的なコントロールプレーンを提供します。単にトラフィックを転送するだけでなく、AIアプリケーションの利用方法を能動的に制御します。
Platforms such as F5 BIG-IPなどのプラットフォームは、ハイブリッド環境とクラウドネイティブ環境にまたがるAIトラフィックを管理し、変化する状況にリアルタイムで適応しながら、一貫してポリシーを適用します。F5 BIG-IPは、ADCであると同時に、F5 Application Delivery and Security Platformの中核コンポーネントでもあります。

F5 AIリファレンスアーキテクチャでは、BIG-IPがAIアプリケーションのフロントドアとして機能します。モデルエンドポイント、検索サービス、サポートAPIへのアクセスを仲介し、トラフィックの効率的なルーティング、適切なセキュリティ確保、継続的な監視を実現します。
AIワークロード向けインテリジェントトラフィック管理
AIアプリケーションデリバリにより、トラフィック管理には新たな要件が生じています。単純なラウンドロビン方式の負荷分散では、もはや十分ではありません。(AIストレージに新たな負荷分散アプローチが必要な理由については、本シリーズの以前のブログ記事で解説しています。)
ADCは、バックエンドの健全性、地理的な近接性、キャパシティ、セマンティックポリシーに基づくインテリジェントなリクエスト振り分けを可能にします。リクエストを特定のモデルバージョン、推論プール、リージョンにルーティングできるため、チームはカナリアデプロイや段階的なロールアウトを通じて、新しいモデルを安全に導入できます。バックエンドの性能が低下した場合は、完全な停止に至るのを待たずに、トラフィックを自動的にリダイレクトできます。
バックエンドリソースが限られ、コストも高い場合、このアプローチは極めて重要です。組織は、急激な負荷増大に備えてGPUを過剰にプロビジョニングする代わりに、ADCレベルの制御を使用してトラフィックを平準化し、負荷の高いノードを避けてリクエストを振り分け、システム全体の安定性を維持できます。
AIのフロントドアにおけるセキュリティとガバナンス
AIアプリケーションのエンドポイントもアプリケーションエンドポイントであることに変わりはなく、多くの場合、サイバー犯罪者にとって格好の標的となります。
AIの導入が進むにつれ、新たな形態の不正利用も増えています。コスト枯渇攻撃、自動スクレイピング、プロンプトフラッディング、プレミアムモデルへの不正アクセスが、一般的な懸念事項になりつつあります。こうしたリスクは、モデル自体の対策だけでは解決できません。
ADCは、セキュリティおよびガバナンス制御を適用するための自然な実施ポイントとなります。認証、認可、レート制限、API保護、モデル保護を、トラフィックがAIサービスに到達する前に一貫して適用できます。これにより、アプリケーションチームの柔軟性を維持しながら、リスクを軽減できます。
重要なのは、ADCがガバナンス目標を組み込むうえで理想的なポイントになり得ることです。組織は、アプリケーションの書き換えやモデルの再トレーニングを行うことなく、テナント単位のクォータを適用し、重要なワークロードを優先して、AIの利用をポリシーや予算の制約に適合させることができます。
インタラクティブAIのパフォーマンス最適化
AIのインタラクティブ性が高まるにつれ、ユーザーがパフォーマンスを実感しやすくなります。
レイテンシの急増、応答の停止、ストリームの切断は、信頼を瞬く間に損ないます。ADCは、長時間接続の管理、TLS処理のオフロード、ストリーミングプロトコルの効率的な管理により、パフォーマンスの最適化を支援します。また、バックエンドの飽和を早期に検出し、ユーザーがパフォーマンスの低下に気付く前にトラフィックを再ルーティングできます。
デリバリーに関する処理をアプリケーションロジックから分離することで、チームはワークロードの変化に応じてパフォーマンスを動的に調整できるようになります。
サービスディスカバリとKubernetesの統合
ほとんどのAIアプリケーションはKubernetes上で稼働しており、サービスは動的にスケーリングされ、エンドポイントも頻繁に変更されます。
ADCはKubernetesと連携し、サービスを自動的に検出してスケーリングイベントをリアルタイムで追跡し、ポッドやサービスの出現・消失に応じて、適切な宛先にトラフィックをルーティングします。Kubernetesには推論インテリジェンスを実現する仕組みがあり、F5はこれを活用しています。この連携により、F5は一貫したデリバリーおよびセキュリティポリシーをクラスター外にも拡張し、ハイブリッド環境やマルチクラウド環境全体に適用できます。
AIワークロードにとって、この外部コントロールプレーンは特に有用です。トラフィック管理とポリシー適用を個々のクラスターから分離することで、AIサービスが急速かつ個別にスケールする場合でも、可視性とガバナンスを一元化できます。
AIアプリケーションデリバリーにF5が選ばれる理由
F5は、トラフィック管理、セキュリティ、オブザーバビリティを、実績ある単一のプラットフォームに統合します。これによりAIアプリケーションでは、予測可能なパフォーマンス、高コストなバックエンドリソースのより強固な保護、環境全体で一貫したガバナンスを実現できます。
F5はデリバリーレイヤーで機能することで、イノベーションを妨げることなく、組織がAIを安全に拡張できるようにします。チームは、コスト、リスク、信頼性を管理しながら、新しいモデルの導入、新たなユースケースへの対応、複数のクラウドへの展開が可能です。(F5とAIアプリケーションデリバリーにおけるF5の役割について詳しく見る)。
精製された燃料から信頼性の高いデリバリーへ
AIデータ配信シリーズの前回の記事では、AI活用の道のりを石油パイプラインによる採掘になぞらえ、取り込み、変換、配信によって燃料を準備するプロセスとして説明しました。データは抽出・精製され、利用可能な状態に整えられました。
AIアプリケーションデリバリーは、その道のりの最終段階です。精製された燃料を安全かつ効率的に、大規模にエンジンまで確実に届けるための流通ネットワークに相当します。ポンプ、バルブ、計量、監視はいずれも、精製能力と同じくらい重要です。
アプリケーションデリバリコントローラーは、AIに必要な制御レイヤーを提供します。需要の増加に応じてフローを調整し、過負荷を防止するとともに、ポリシーを適用してサービスレベルを維持します。これがなければ、どれほど高度なモデルでも、安定したビジネス価値を生み出すことは困難です。
大規模環境でAIを成功させるには、モデルの能力だけでなく、その能力をいかに安定して提供できるかが重要です。
F5は、あらゆる環境でAIアプリケーションのデリバリとセキュリティを実現
F5のAIデータ配信ソリューションの詳細については、AI Data Delivery and Infrastructure SolutionsのWebページをご覧ください。
F5のAIへの取り組みは、データ配信にとどまりません。F5があらゆる環境でAIアプリを保護し、配信する仕組みをご覧ください。
AIデータ配信シリーズのほかのブログ記事もぜひご覧ください:
大規模なAIインフラストラクチャを最適化するためのベストプラクティス
パイプラインの速度を低下させることなく、AIデータパイプラインを保護
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