アプリケーションパフォーマンス監視(APM)は、成熟した業界です。その起源は、インターネットがプラットフォームとして登場する以前にまでさかのぼります。当初はデータセンター内に限定されていましたが、インターネット環境におけるユーザーエクスペリエンスを把握する必要性が高まったことで、急速に発展しました。
パッシブモニタリング
第1段階では、合成トランザクションを使用してユーザーエクスペリエンスの把握を試みるパッシブな手法が主流でした。インターネット上に広く分散した多数のポイントオブプレゼンスを持つベンダーが市場を牽引し、パッシブモニタリングによって、サイト運営者は、世界各地にますます分散するユーザー層から見たアプリケーションのパフォーマンスを過去にさかのぼって把握できました。
パッシブ技術は、ユーザーエクスペリエンスを測定する初の本格的な試みでした。この技術では、主にポイントオブプレゼンスとアプリケーション間のネットワーク経路に基づき、パフォーマンスを一般化した平均値として把握していました。ほとんどのポイントオブプレゼンスがインターネットバックボーン上またはその近くに配置されていたため、バックボーンとクライアント間の「ラストマイル」が及ぼす影響を考慮できませんでした。
さらに、合成トランザクションに依存する手法では、実際のユーザーによる操作やトランザクションを正確に再現できないことが少なくありませんでした。そのため、得られた測定結果は、ユーザーエクスペリエンスよりも、インターネットの健全性やアプリケーションの可用性を示す傾向がありました。
パッシブ監視システムは、アプリケーションのパフォーマンス低下の原因となるインターネット上の中間ノードを特定することには非常に優れていました。一方、クライアントやアプリケーションの問題の特定、および実際のユーザー体験の監視にはあまり適していませんでした。
アクティブモニタリング
こうした不十分な点から、より積極的な手法であるアクティブモニタリングが登場しました。この段階では、クライアントアプリケーションにごく小さなコードを組み込み、より正確なパフォーマンスデータを取得するベンダーが主流となりました。これらのソリューションは、ラストマイルの課題に対応するとともに、レンダリングがアプリケーションパフォーマンスに及ぼす影響も把握しました。実際の操作をモニタリングすることで、アクティブモニタリングはユーザーエクスペリエンスをはるかに現実に即した視点で捉えられるようにしました。
アクティブモニタリングによってパッシブモニタリングの不十分な点が解消され、現在ではクライアントからネットワーク、アプリケーション、そのバックエンドシステムに至るまで、ユーザーエクスペリエンス全体のデータを収集できます。
しかし、これでモニタリングの進化が終わったわけではありません。既存のパフォーマンス上の問題を特定するという基本的なニーズには対応できるようになりましたが、もはやそれだけでは十分ではありません。全顧客の約3分の1(32%)が、「愛着のあるブランドであっても、たった1回不快な体験をしただけで、そのブランドとの取引をやめる」と回答しています。(PWC)
問題が起きた後に原因を特定するだけでは不十分です。問題が発生する可能性のある箇所を、発生前に特定することが、ビジネスにとってますます重要になっています。
だからこそ、モニタリングの次の段階は予測型になると考えています。
予測型モニタリング
予測モニタリングが機械学習と関連付けられることが多いのには、十分な理由があります。障害やパフォーマンス上の問題を予測する能力は、経験に全面的に依存します。アプリケーションパフォーマンスの場合、この経験は、過去の数百、数千件に及ぶユーザー体験のデータから得られます。
アプリケーションのデータパス全体を幅広く詳細に網羅する、ユーザーエクスペリエンスに関する豊富なデータセットがあれば、分析によって、時間帯、場所、業務機能、ブラウザー、OS、ネットワークなど、複雑な変数群のパターンや相互関係を見いだすことができます。問題を予測する能力は、これらすべての要素の関係性、相互作用、現在の状態に基づきます。
特定のコンポーネントにおける外れ値や異常なパフォーマンスを認識することで、予測モニタリングはユーザーエクスペリエンスが低下する可能性のある状況を特定し、アラートを発することができます。
アラートが十分に早い段階で発せられれば、ビジネスに影響する問題へと発展する前に、状況を是正できます。
F5は、アプリケーションパフォーマンス監視の次なる進化は「予測型」であり、しかも必要不可欠な進化だと考えています。組織のアプリケーションへの依存度が高まるにつれ、アプリケーションは事業の健全性にとって、組立ライン上の機械と同じくらい重要になります。
耐久消費財の製造において予知保全が重要な機能であるのと同様に、デジタルエクスペリエンスの提供においても予測型モニタリングが不可欠な機能となります。
著者について

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。
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