このブログ記事は、デジタル主権に関するシリーズの第5回です。
本シリーズのこれまでの記事では、デジタル主権が戦略的な優先事項となった理由と、変化する規制、運用、ビジネス上の要件に対応するために組織に必要な能力について考察してきました。次に取り上げるのは、より実践的な問いです。現実の世界で、デジタル主権はどのような形で実現されるのでしょうか。
その答えは、組織が事業を展開する地域や業界によって異なる可能性があります。
各国では、特に金融サービスなど規制の厳しい業界を中心に、デジタル主権に対する独自のアプローチの策定が進んでいます。その結果、組織には、デジタルサービスのモダナイゼーション、AIの導入、運用効率の向上を継続しながら、各地域の要件を満たせるアプリケーションアーキテクチャがますます求められています。
だからといって、すべての組織が同じアーキテクチャに行き着くわけではありません。しかし、成功している組織には共通の目標があります。それは、一貫したセキュリティ、可視性、運用管理を維持しながら、レジリエンスを確保し、進化に対応できる柔軟性を保つことです。
最近F5が支援した2つのお客さま事例から、組織によってこれらの課題への対応方法が異なることが分かります。
金融サービス業界が先駆けとなることも
銀行や保険会社は、機密性の高い顧客情報を管理しながら、顧客が24時間いつでも利用できることを期待するサービスを提供しているため、デジタル主権の最前線に立つことが少なくありません。
同時に、こうした組織では急速にモダナイゼーションが進んでいます。デジタルバンキング、モバイルアプリケーション、API、AIを活用したサービス、クラウドネイティブ技術によって、金融機関の顧客との関わり方や新サービスの提供方法が変わりつつあります。
“適切なアプリケーションデリバリおよびセキュリティ戦略を採用することで、組織は世界各地で顕在化し、地域ごとの差異が拡大するデジタル主権要件に対応しながら、イノベーションを継続できます。”
イノベーションと規制上の義務を両立するには、アプリケーションをオンプレミスとクラウドのどちらに導入するかを決めるだけでは不十分です。複数の導入モデルをサポートしながら、各環境に一貫したアプリケーションデリバリおよびセキュリティサービスを適用できるアーキテクチャが必要です。
Prime Bank:規制要件に対応しながらデジタルバンキングをモダナイズ
Prime Bankは、バングラデシュを代表する商業銀行の1つです。従来の法人向け銀行業務を基盤としながら、革新的な個人向け銀行サービスやフィンテックサービスへと事業を拡大しています。この変革により、API、AI、データドリブンな顧客体験の重要性が大幅に高まっています。
バングラデシュの規制下にある金融環境で事業を展開する同行は、アプリケーションインフラストラクチャのモダナイゼーションを進めながら、機密性の高い金融データを適切に管理し続ける必要もあります。Prime Bankは、コンプライアンスとイノベーションを相反する優先事項と捉えるのではなく、その両方を支えるハイブリッドアプローチを構築しました。
機密性の高い銀行データを銀行の管理下にある環境内に保持しながら、F5 Distributed Cloud Servicesは、規制対象情報を外部に公開することなく、アプリケーションセキュリティとAPI保護を拡張します。さらに、F5 BIG-IPおよびF5 NGINXのテクノロジーと組み合わせることで、F5 Application Delivery and Security Platform (ADSP)は、従来型アプリケーションとモダンアプリケーションに一貫した運用レイヤーを提供するとともに、機密データを管轄区域内に保持し、銀行のみがアクセスできるようにします。
Prime Bankにとって、デジタル主権は、セキュリティ、運用効率、規制上の義務を損なうことなくイノベーションを実現するものです。
HDI Sigorta:運用管理を維持しながらモダナイズ
トルコの保険業界では、運用面と規制面で異なる考慮事項がありますが、HDI Sigortaも驚くほどよく似た結論に至りました。
トルコ有数の保険会社であるHDI Sigortaは、ハイブリッドインフラストラクチャ全体で200を超えるAPIをサポートしながら、毎日数十万件の保険契約取引を処理しています。同時に、アーキテクチャのモダナイゼーションと新たなデジタルサービスの導入も継続しています。
すべてのワークロードに単一の導入モデルを採用するのではなく、HDIは運用要件とコンプライアンス要件に応じて、アプリケーションの配置先を選択しています。
SaaSベースのサービスを活用できるアプリケーションには同サービスを利用し、機密性の高いワークロードはオンプレミスに維持します。F5 ADSPは、両方の環境で一貫したアプリケーションデリバリ、APIセキュリティ、トラフィック管理、運用の可視性を提供し、将来の成長を支えながら事業継続性を維持できるようにします。
このアプローチは、デジタル主権がモダナイゼーションを制限するものではなく、ワークロードを最適な場所に配置できる柔軟性を維持するものであることを示しています。
共通の原則が明らかに
Prime BankとHDI Sigortaは、規制環境が異なる別々の国で事業を展開していますが、両社のデジタル主権戦略にはいくつかの共通点が見られます。
- 両社とも、イノベーションのペースを落とすことなく、デジタルトランスフォーメーションへの積極的な投資を続けています。
- 両組織とも、最新のクラウド機能と、機密性の高いワークロード向けのオンプレミス環境を両立させるハイブリッドアーキテクチャを採用しています。
- どちらも、アプリケーションがどこに配置されているかにかかわらず、一貫したアプリケーションデリバリ、セキュリティ、可視性、運用管理を必要とします。
- また、どちらもデジタル主権は最終的に、リスク管理上の問題であると同時に、アーキテクチャ上の課題でもあると認識しています。
環境ごとに個別の運用モデルを構築するのではなく、各組織は、ガバナンス、レジリエンス、セキュリティを維持しながらアプリケーションを進化させられる一貫したプラットフォームを採用しています。
多様な規制要件に対応できる柔軟性
金融サービス業界は、デジタル主権の課題にいち早く直面している業界の1つかもしれませんが、これが最後ではないでしょう。デジタルサービスが拡大し、AIが事業運営により深く組み込まれるにつれ、医療機関、政府機関、製造業者、通信事業者をはじめとする規制の厳しい組織も、同様の問題に直面するケースが増えています。
この教訓は、特定の国や規制だけに当てはまるものではありません。
Digital sovereigntyは、組織にクラウドサービスの放棄やモダナイゼーションの取り組みの中止を求めるものではありません。むしろ、一貫したアプリケーションデリバリ、セキュリティ、可視性、運用管理を維持しながら、多様な規制要件に柔軟に対応できるアーキテクチャが必要です。
Prime BankとHDI Sigortaの事例は、これらの目標が両立可能であることを示しています。適切なアプリケーションデリバリおよびセキュリティ戦略を採用することで、組織は世界各地で明確化が進むデジタル主権の要件に対応しながら、イノベーションを継続できます。
詳しくは、Prime BankとHDI Sigortaの導入事例をご覧ください。
また、このシリーズの過去のブログ記事もぜひご覧ください。
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