いずれ、あらゆる企業がマルチクラウド化し、それに伴って運用、セキュリティ、人材面で生じる複雑さへの対応を迫られることになります。
F5が毎年実施している「State of Application Strategy」調査では、回答組織のうち最も多くが、複数のクラウドにアプリを展開していると回答しました。これは驚くような結果ではありません。現在、4分の3を超える組織(正確には77%)が、従来の意味でのマルチクラウドを採用しています。
ここで「従来の意味」と述べたのは、冒頭の説明で、大多数の組織がクラウドベースのas-a-Serviceサービスも1つ以上利用していることを考慮しているためです。「大多数」とは、実に93%という、ほぼすべての組織を指します。実際、組織が利用しているas-a-Serviceサービスは平均2.9種類です。どの企業も何らかのSaaSを利用しているのだから、これほど普及していて当然だと考える方もいるでしょう。しかし、この2.9種類には、次のような、近年XaaSとしてまとめられることが増えているサービスも含まれています。
- 36%が、クラウドベースのWAF、DDoS対策、ボット管理などのSecurity-as-a-Serviceを利用
- 35%がInfrastructure-as-a-Service(一般に「パブリッククラウド」と呼ばれる)を利用
- 25%がBusiness-Process-as-a-Serviceを利用
- 21%がContainers-as-a-Serviceを利用
- 31%がPlatform-as-a-Serviceを活用
さらに、従来のCDNやセキュリティサービスの配信にとどまらず、エッジコンピューティングの導入も拡大しています。かなりの割合の組織がアプリケーションとデータのワークロードをエッジに展開する計画を立てており、エッジコンピューティングがアプリケーションプラットフォームへと着実に進化していることがうかがえます。
これにより、マルチクラウドの課題はエッジにも広がります。主な理由は、組織が複数のクラウドでアプリケーションの開発、デプロイ、運用に使用しているものと同じテクノロジーやツールの多くが、エッジにも拡張されているためです。
また、多くの組織がオンプレミスでプライベートクラウドを運用していることも忘れてはなりません。
まとめると、マルチクラウドとは、コア、クラウド、エッジを統合したものであり、主に共通の運用モデルによって定義されます。つまり、APIを使用してリソースとの連携、定義、デプロイ、運用を行うモデルです。
問題は、それらのAPIがすべて固有であることです。アクセス方法が固有なのではありません。現在のAPIは主にHTTPベースのREST呼び出しであり、広く理解されているプロトコルとデータ形式(主にJSON)を使用しています。しかし、API呼び出しの操作対象となる実際のモデルや、クラウドベースのリソースを適切にプロビジョニング、管理、さらには監視するために必要なプロセスは、プロバイダーごとに大きく異なります。
だからこそ、そのXaaSが非常に重要になります。すでにあふれかえっているクラウドAPI群に、さらにもう1つのAPIが加わるためです。XaaSを「利用するだけ」の組織はありません。アクセスのためであれ、ワークフローの一部としてであれ、APIによって組織内への接続が実現されます。
そこで複雑さが事態を混乱させ、現在も企業を悩ませ続ける課題を生み出しています。これらの課題は、調査を始めた当初からほとんど変わっていません。具体的には、一貫したセキュリティ、可視性、クラウド環境間でのアプリの移行です。
この3つの課題は、長年にわたりマルチクラウドに関する課題の中で順位を変えてきましたが、いずれも常に上位5位以内に入っています。
今年新たに見られたのは、クラウドAPIやツールに関するスキル不足を自覚する回答者が著しく増加したことです。昨年、このスキルギャップを挙げた回答者は3分の1に当たる33%でした。今年はどうでしょうか。55%と半数を超え、大幅に増加しました。これは直接的な「マルチクラウドの課題」ではありませんが、この増加を踏まえると、2022年のマルチクラウドに関する3大課題の1つに挙げるに値します。

しかし、マルチクラウドの世界は不満ばかりではありません。たとえば、複数のクラウドでアプリを運用していると回答した組織は、アプリケーションの健全性をレポートするために必要なツールを備えている可能性がはるかに高く、実に約2.5倍です。これは、クラウドネイティブアプリケーションではネイティブの計測機能が重視されているためかもしれません。こうしたアプリケーションがパブリッククラウド環境に導入される可能性が高いのは、当然のことです。たとえば、サービスメッシュの利用は、クラスタ環境における可視性の必要性が一因となっていることが多く、コンテナベースのアプリケーションの健全性をレポートするために必要なメトリクスを提供します。一方、従来型アプリケーションの大半は、オンプレミスに残る老朽化したモノリスへと移行しつつあります。その多くは、状態や健全性を適切に監視するために必要な計測機能をサポートするようには設計されていません。エージェントベースの監視手法は、保守や運用だけでなく、スケーリングにもコストがかかります。そのため、カスタマーエクスペリエンスに不可欠と見なされるアプリケーションの監視に利用される傾向があります。データ選択バイアスは大きな課題であり、組織が完全な可視性を実現するうえでの障壁となっています。また、重要ではないと見なされる可能性のある従来型アプリの監視にも、引き続き影響を及ぼしていることは間違いありません。
複雑さをなくすことはできません。組織は今後もマルチクラウド環境で運用を続け、エッジへと拡張するにつれて、複雑さはさらに増していきます。しかし、管理することは可能です。それこそが、テクノロジーリーダーが取り組むべき課題であり、ベンダーが解決を目指している課題でもあります。
マルチクラウドとエッジに関する詳細なインサイトは、年次レポートでご覧いただけます。ぜひ今すぐ入手して、ご一読ください。
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著者について

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。
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