ハイブリッドクラウドとは
ハイブリッドクラウド環境は、パブリッククラウドとプライベートクラウドの利点を組み合わせ、組織がニーズに合ったコンピューティングモデルを選択できるようにします。
ハイブリッドクラウドとは、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platformなどのパブリッククラウドのインフラストラクチャと、組織のプライベートクラウドまたはオンプレミスのデータセンターを組み合わせた複合コンピューティング環境です。ハイブリッドクラウドの主な利点は、俊敏性にあります。組織は必要に応じてコンピューティングリソースを拡張または縮小でき、データセキュリティやワークロードの機密性に関する要件に基づいて、ワークロードの処理場所を選択できます。また、特定のビジネス要件や規制要件に応じて、処理の柔軟性、コスト、制御を最適化するために、クラウド環境間でワークロードを移行、管理できます。ハイブリッドクラウドは、災害復旧戦略の一環として利用できるほか、パフォーマンス状況に応じて容量を動的に拡張する「バースティング」にも使用できます。
さらに、アプリチームは、パブリッククラウドプラットフォームで利用できる開発者向けツールや充実したツールセットを好む場合があります。
The パブリッククラウドでは、サードパーティーのサービスプロバイダーが所有する共有コンピューティングリソース上で、企業がアプリケーションやデータをホストできます。ほぼ無制限のコンピューティングリソースを利用できるため、データセンターのハードウェアに投資することなく、大規模なスケールメリットを得られます。ただし、クラウドコンピューティングの従量課金モデルでは、継続的な利用によってコストが高額になる可能性があります。また、責任共有モデルでは、データセキュリティに対する企業の管理が限定されるほか、クラウドプロバイダーがワークロードを処理する場所やデータを保存する場所を把握できない場合もあり、データ主権に関する規制に抵触する可能性があります。
Theプライベートクラウドは、共有ではなく企業が管理する専用のクラウドインフラストラクチャであり、第三者が運用することも、プライベートデータセンターでホストすることもできます。多くの組織は、ミッションクリティカルなサービスをオンプレミスのデータセンターやプライベートクラウドに維持しながら、その他のサービスをパブリッククラウドに移行することで、コストの削減と運用効率の向上を図っています。一方、脅威の検知と修復を強化するため、クラウドベースのプラットフォームで提供されるSecurity as a Serviceを導入する組織が増えています。
主なポイント
- ハイブリッドクラウドは、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platformなどのパブリッククラウドのインフラストラクチャと、組織のプライベートクラウドまたはオンプレミスのデータセンターを組み合わせたものです。
- ハイブリッドクラウド環境を実装する際は、データの保存場所とアクセス方法を決定することが重要です。
- ハイブリッドクラウドソリューションは、パブリッククラウドとプライベートクラウド双方の利点を企業が活用できる、両者の長所を兼ね備えたソリューションです。
- ハイブリッドクラウド戦略の簡素化を支援するため、F5は、クラウド間で一貫して利用でき、複数のIT環境にわたってデータとアプリケーションを保護する包括的なセキュリティおよび管理ツール群を提供します。
マルチクラウド、分散クラウド、ハイブリッドクラウドの違いとは?
「マルチクラウド、分散クラウド」と「ハイブリッドクラウド」という用語は、しばしば同義語として使われますが、同じものではありません。
マルチクラウドは、異なるベンダーが提供する複数のクラウドコンピューティングサービスやプラットフォームを利用することに重点を置いています。たとえば、組織によっては、一部のアプリケーションにAmazon Web Services(AWS)を使用し、その他のアプリケーションにMicrosoft Azureを使用する場合があります。
分散クラウドは、パブリッククラウドプロバイダーのインフラストラクチャを、オンプレミスのデータセンター、エッジサイト、さらには他のクラウドプロバイダーが所有するデータセンターなど、複数の物理拠点に拡張するものです。すべての拠点における運用、更新、ガバナンスについては、引き続きパブリッククラウドプロバイダーが責任を負います。
F5 Distributed Cloud Servicesは、SaaSとして提供されるセキュリティ、ネットワーキング、アプリケーション管理機能により、分散クラウドの実装を支援します。組織は、これらのサービスを利用して、分散クラウド環境全体でアプリケーションを接続、保護、デプロイできます。
ハイブリッドクラウドでは、クラウドサービスとオンプレミスインフラストラクチャの両方を活用します。たとえば、組織のハイブリッドクラウド環境では、一部のアプリケーションをAWSなどのパブリッククラウドで実行し、その他のアプリケーションをオンプレミスでホストされるプライベートクラウドで実行する場合があります。
マルチクラウド、分散クラウド、ハイブリッドクラウドの各環境では、アーキテクチャ、柔軟性、セキュリティ、複雑さに主な違いがあります。
- アーキテクチャ: マルチクラウドは、異なるプロバイダーが提供する複数のパブリッククラウド環境にまたがります。通常、それぞれのパブリッククラウドは異なるタスクに使用されます(たとえば、プログラムロジック、データベース、機械学習にそれぞれ別のクラウドを使用します)。また、クラウド間の分散方法はアプリケーションごとに異なる場合があります。組織は、さまざまなクラウドの柔軟性と機能を活用するために、マルチクラウド戦略を選択します。
分散クラウドでは、単一のパブリッククラウドプロバイダーのインフラストラクチャを複数の物理拠点に拡張します。マルチクラウドのアプローチとは異なり、分散クラウドは複数のベンダーではなく、1社のプロバイダーのコントロールプレーンを使用します。
ハイブリッドクラウドには、2つ以上の異なる種類のクラウド環境(オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウド)が含まれます。多くのアーキテクチャでは、パブリッククラウドはプライベートクラウドまたはオンプレミス環境の機能を拡張する役割を担います。ハイブリッドクラウドアーキテクチャは通常、アプリケーションをクラウドに移行中の組織や、技術的負債(最適化されていないシステムやコード)が多すぎて100%クラウドネイティブに移行できない組織で使用されます。 - 柔軟性:さまざまなベンダーの複数のパブリッククラウドを利用することで、マルチクラウドアーキテクチャでは、ベンダーロックインを回避し、クラウド支出を最適化して、ワークロードごとに最適なクラウドを選択できます。こうした選択は、ビジネス要件のほか、パフォーマンス、必要な機能、地理的な場所などの要因に基づいて行えます。
分散クラウドでは、ワークロードを実行する場所を柔軟に決定できます。レイテンシを低減するため、ユーザーやローカルデータソースの近くでワークロードを実行することも可能です。パブリッククラウドプロバイダーがインフラストラクチャをリモートで運用および更新するため、このアーキテクチャによりインフラストラクチャ管理の負担を軽減できます。
ハイブリッドクラウドアーキテクチャの柔軟性は、プライベートクラウドの利点(制御性、セキュリティ、コンプライアンスの向上など)と、パブリッククラウドの利点(拡張性、コスト効率、使いやすさなど)を組み合わせられることにあります。 - セキュリティ: マルチクラウドアーキテクチャでは、複数のパブリッククラウドにデータを分散することで、単一障害点のリスクを軽減し、セキュリティを向上させます。異なるクラウドプロバイダーを利用することで、各プロバイダーのセキュリティ機能を活用できます。一方、複数のクラウド環境にわたる多様なセキュリティ機能を管理する必要があるため、一定の複雑さが生じます。また、異なるクラウドプラットフォームの統合に伴い、潜在的なセキュリティリスクが生じる可能性もあります。
分散クラウドモデルでは、クラウドプロバイダーがすべての拠点にセキュリティパッチとアップデートを適用するため、一貫性の維持に役立ちます。組織は、データが物理的にどこに保存されているかを正確に把握できるため、コンプライアンスとデータレジデンシーの要件に対応できます。
ハイブリッドクラウドアーキテクチャでは、プライベートクラウド事業者が機密データや重要なアプリケーションに追加のセキュリティ層を提供します。このインフラストラクチャにより、組織はプライベートクラウドに実装するセキュリティ対策(アクセス制御、暗号化、データ保護など)をより細かく管理できます。ただし、パブリッククラウドの構成要素には、データの完全性や可用性を損なう可能性のあるデータ侵害、アカウントの乗っ取り、その他の脅威への対策が必要になるなど、セキュリティ上の懸念が生じる場合があります。 - 複雑性:マルチクラウドアーキテクチャでは、それぞれ独自のツール、API、インターフェースを備えた複数のパブリッククラウド環境を深く理解し、管理する必要があります。このようなアーキテクチャの構成と管理には、綿密な計画と調整が欠かせません。また、コスト効率を維持し、データセキュリティを確保しながら最適なパフォーマンスを実現するには、継続的な管理も必要です。
分散クラウドは一般に、マルチクラウドやハイブリッドクラウドのモデルと比べて管理の複雑性を軽減します。異なるベンダーや自己管理型環境を統合する必要はなく、単一プロバイダーの統合コントロールプレーン内で運用できます。
ハイブリッドクラウドアーキテクチャでは、プライベートクラウドとパブリッククラウドの両方のコンポーネントを統合し、管理する必要があります。これには、プライベートクラウドとパブリッククラウド間の接続の構成と管理、複数のクラウドにわたるデータの一貫性と同期の確保、ハイブリッド環境全体でのセキュリティとコンプライアンスの維持が含まれます。
ハイブリッドクラウドの仕組み
ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウドとプライベートクラウド双方の利点を兼ね備えています。ただし、データやワークロードを迅速に移動、共有、同期できるようにするには、ハイブリッド環境を慎重に統合、オーケストレーション、調整する必要があります。そのため、ハイブリッドクラウド環境を適切に機能させるには、堅牢な相互接続性とネットワークが不可欠です。これにより、複数の環境でアプリケーションを一貫して稼働させ、複数のクラウドにまたがる単一のコンピューティングプラットフォームを構築できます。
ハイブリッドクラウド環境を導入する際は、データの保存場所とアクセス方法を決めることが重要です。ハイブリッドクラウド環境で一般的なデータストレージ戦略の1つは、アクセス頻度の低いデータの保存にパブリッククラウドを使用し、バックアップ、災害復旧、アーカイブにも活用することです。アクセス頻度の高いデータや機密データについては、制御とセキュリティを強化するため、プライベートクラウドまたはオンプレミスのストレージに保存することがよくあります。ただし、インフラストラクチャへの初期投資が増える可能性があります。ベンダーによっては、クラウドストレージとオンプレミスストレージを単一のプラットフォームに統合し、企業がデータをより柔軟に管理できるハイブリッドストレージソリューションを提供しています。
ハイブリッドクラウドのアーキテクチャと主要コンポーネント
オンプレミスのインフラストラクチャとパブリッククラウドサービスを接続するハイブリッドクラウドアーキテクチャを実装するには、相互接続、仮想化とコンテナ化、およびコントロールプレーンのオーケストレーションが必要です。
相互接続
相互接続では、オンプレミスシステムとパブリッククラウドを物理的かつ論理的に接続します。組織では通常、仮想プライベートネットワーク(VPN)、ソフトウェア定義広域ネットワーク(SD-WAN)、APIを利用して、環境間でデータを移動し、トラフィックを安全にルーティングします。
仮想化とコンテナ化
仮想化とコンテナ化では、アプリケーションを基盤となるハードウェアから抽象化し、複数の環境で一貫して実行できるようにします。KubernetesやRed Hat OpenShiftなどのテクノロジーは、アプリケーションをコンテナにパッケージ化します。これにより、開発者が基盤となるコードを書き換えることなく、オンプレミスまたはパブリッククラウドでアプリケーションを実行できます。
コントロールプレーンのオーケストレーション
コントロールプレーンのオーケストレーションツールにより、ITチームはオンプレミス環境とパブリッククラウド環境に分散するリソースを一元管理できます。Azure ArcやAWS Outpostsなどのツールは、パブリッククラウドプロバイダーの管理ツールをオンプレミスインフラストラクチャに拡張します。これにより、ワークロードの実行場所を問わず、一貫したポリシーと監視を適用できます。
ハイブリッドクラウドの主な特長
ハイブリッドクラウドのシナリオには、主に次のような機能と概念があります。
- ワークロードのポータビリティとは、オンプレミスシステムとクラウドの間、または異なるクラウドサービスプロバイダー間で、データやアプリケーションを移行し、適応させる能力です。ポータビリティは、アプリケーションやサービスを設計する際の重要な考慮事項です。多くの場合、オープンソースの標準やAPIを採用することで対応でき、相互運用性と自動化の促進にもつながります。
- データ統合とは、可視性を高め、クラウドコンピューティングへの円滑な移行を実現するために、複数の異なるソースからデータを集約するプロセスです。従来、ほとんどの組織は、独立したサイロや個別のデータストアにデータを保存していました。リアルタイムのテレメトリとインサイトを得ることは、デジタルトランスフォーメーション戦略を成功させ、デジタル化が進む世界で競争力を維持するうえで特に重要です。
- ハイブリッドクラウドのセキュリティは、2つの環境間で連携して管理されます。オンプレミスとパブリッククラウドの両方でデータとアプリケーションを保護するとともに、パブリッククラウドとプライベートクラウドまたはデータセンターの間を移動するデータとワークロードも保護する必要があります。情報セキュリティチームは、両方の環境で一貫したセキュリティ態勢を確保し、パブリッククラウドとプライベートクラウドの間のリスクが適切に評価されるようにする必要があります。
- APIは、オンプレミス環境とクラウド環境にまたがるハイブリッド環境で重要な接続を提供するため、攻撃者の標的になることが少なくありません。ホストされている場所を問わずAPIを一貫して保護することは、ハイブリッドアーキテクチャ全体で統一されたセキュリティ態勢を維持するうえで不可欠です。
- 一貫したアプリケーションデリバリとは、オンプレミス、パブリッククラウド、エッジのいずれで実行されているかにかかわらず、アプリケーションの配信、セキュリティ確保、管理を同じ方法で行うことです。ハイブリッド環境で一貫したアプリケーションデリバリを実現するには、オンプレミスとクラウドのリソース間でトラフィックを動的にルーティングする必要があります。ルーティングは、アプリケーションの負荷、ユーザーの所在地、リクエストされたコンテンツの種類など、リアルタイムで変化する複数の条件に基づいて行われます。
- オブザーバビリティとは、環境ごとに分断された個別の監視ツールに依存するのではなく、あらゆる環境にわたるアプリケーションとインフラストラクチャの稼働状況をリアルタイムで把握できる能力です。ハイブリッド環境では、オブザーバビリティツールで応答時間、トランザクション処理、エラー率などの指標を追跡する必要があります。また、パフォーマンス上の問題、ボトルネック、異常を検出した場合は、エンドユーザーに影響が及ぶ前にアラートを生成する必要があります。オンプレミス環境とパブリッククラウド環境を一元的に可視化することで、複数の異なるダッシュボードからデータをつなぎ合わせることなく、ITチームが問題の発生箇所を特定し、迅速に解決しやすくなります。
ハイブリッドクラウドの例
特定のコンピューティングニーズや状況に対応するため、ハイブリッドクラウド環境はさまざまな方法で構成できます。
- クラウドバースティングは、オンプレミスのコンピューティングインフラストラクチャが最大容量に達した場合にのみ、パブリッククラウドのリソースを使用するハイブリッド構成方式です。つまり、社内データセンターの処理能力が100%に達すると、容量を超えたワークロードがパブリッククラウドに移行して処理されます。クラウドバースティングは、需要の変動や季節的なコンピューティングリソース需要の急増に、コスト効率よく対応する方法です。
- クラウドレプリケーションは、オンプレミスストレージのデータを複製してパブリッククラウドにミラーリングするハイブリッドクラウドモデルです。バックアップや災害復旧に利用できるほか、お客さまや分散したチームがデータを利用しやすくし、可用性を高めることができます。
- クラウド階層化とは、データの重要度とアクセス頻度に基づいて、異なるストレージ階層間でデータを移動するデータストレージ戦略です。ストレージ階層は一般に、アプリケーションがすぐに利用できる必要があるデータを格納する「ホット」ストレージから、アクセス頻度の低いアーカイブデータを格納する「コールド」ストレージまでの範囲で定義されます。一般的なハイブリッドクラウドモデルでは、高速処理を可能にするためにホットデータをデータセンターに保存し、よりコールドなデータはコスト削減のためにパブリッククラウドへリモート保存できます。
ハイブリッドクラウドコンピューティングモデルは、複数の大手組織の成功を支える重要な要素です。
- Netflixは、ハイブリッドクラウドモデルを使用して大量の動画コンテンツを保存・管理し、需要の急増に対応しています。Netflixは、膨大なコンテンツカタログの整理に加え、ユーザー、その嗜好、視聴内容、クリックした項目の追跡にパブリッククラウドプロバイダーを利用しています。一方、レイテンシーを低減し、高品質なストリーミングを実現するため、Open Connectと呼ばれるプライベートクラウドベースの独自コンテンツ配信ネットワークを構築し、自社サーバーから顧客に動画コンテンツを直接配信しています。
- Airbnbは、パブリッククラウドとプライベートクラウドの両方を利用し、パフォーマンス、スケーラビリティ、コスト効率の面でインフラストラクチャを最適化しています。Airbnbは、ストレージ、コンピューティング、データベースなどの各種サービスに加え、Webサイト、モバイルアプリ、分析、データ処理にもパブリッククラウドプロバイダーを利用しています。需要が高まる時期には、パブリッククラウドの柔軟性とスケーラビリティを活用して、トラフィックの増加に対応できます。支払い情報やその他の個人を特定できる情報など、機密性の高いユーザーデータの保存と管理には、独自のプライベートクラウドインフラストラクチャを使用しています。
- Adobe は、機密性の高い顧客データを管理下に置きながら、ソフトウェアのアップデートを管理し、さまざまなデバイスでシームレスなユーザー体験を実現するために、ハイブリッドクラウドインフラストラクチャを使用しています。Adobeはパブリッククラウドアーキテクチャを採用し、ユーザーが場所やデバイスを問わず、クリエイティブアセットやアプリケーションにアクセスできるようにしています。システムはアップデートや変更をデバイス間で自動的に同期し、一貫したユーザー体験を提供します。同時にAdobeは、ユーザープロファイル、購入履歴、行動データなど、機密性の高い顧客データを管理下に置くために、プライベートクラウド環境を使用しています。
エンタープライズハイブリッドクラウド
エンタープライズハイブリッドクラウドは、パブリッククラウドとプライベートクラウドの利点を組み合わせ、柔軟性、拡張性、コスト効率に優れたITインフラストラクチャを実現するクラウドコンピューティングモデルです。組織は要件に応じて、アプリケーションやワークロードをクラウドまたはオンプレミスに柔軟に展開できます。これにより、変化する市場のニーズに迅速に対応し、必要に応じてITインフラストラクチャを拡張または縮小できます。また、セキュリティもエンタープライズハイブリッドクラウドの重要な特長です。パブリッククラウドサービスの拡張性とコスト効率を活用しながら、データセンターまたはプライベートクラウド内の機密データやアプリケーションを組織の管理下に維持できます。
さらに、ハイブリッドクラウドでは、ミッションクリティカルなワークロードに既存のオンプレミスインフラストラクチャを最適に活用し、重要度の低いワークロードにはコスト効率の高いパブリッククラウドサービスを利用することで、組織のITコスト削減に役立ちます。
エンタープライズハイブリッドクラウドはさまざまな業界で導入され、組織のビジネス目標の達成に貢献しています。
- 金融業界では、Capital Oneが顧客データをオンプレミスでホストするプライベートクラウドに移行し、重要度の低いアプリケーションにはパブリッククラウドサービスを利用しました。このハイブリッドクラウドにより、データセキュリティとコンプライアンスを維持しながら、コストを削減できました。
- 医療分野では、Mercy Healthは患者記録などの機密データをオンプレミスでホストするプライベートクラウドに移行する一方、メールやコラボレーションツールなどのアプリケーションにはパブリッククラウドサービスを利用しました。このハイブリッドクラウドにより、同社は業務の効率化、データへのアクセス性の向上、業界規制への準拠を実現しやすくなりました。
- 製造業では、GE Aviationは設計およびシミュレーション用アプリケーションをオンプレミスでホストするプライベートクラウドに移行する一方、データの保存と分析にはパブリッククラウドサービスを利用しました。このハイブリッドクラウドにより、コストの削減、スケーラビリティの向上、世界各地のエンジニアリングチーム間のコラボレーション強化を実現しました。
現代の企業におけるユースケース
企業のワークロードが進化するにつれ、ハイブリッドクラウドアーキテクチャは、より新しく専門的な用途で活用されるようになっています。現在、特に一般的なユースケースとして、ハイブリッドAIパイプライン、エッジコンピューティング、FinOps主導のコスト最適化の3つが挙げられます。
ハイブリッドAIパイプラインでは、各段階の実行に最適な場所に応じて、AIワークロードを複数の環境に分散します。大規模言語モデル(LLM)のトレーニングとファインチューニングは、多くの場合、ハードウェアを所有せずに大規模なGPUコンピューティングを利用できるパブリッククラウドで行われます。一方、企業独自の業務記録や規制対象の顧客データなどの機密データは、オンプレミスまたはプライベートクラウドに保持されます。パブリッククラウド環境に移動するのは、トレーニングに必要なデータのみです。このハイブリッドアプローチにより、機密情報に関するデータガバナンスとコンプライアンスの要件を管理しながら、AIワークロードにパブリッククラウドのコンピューティング規模を活用できます。
エッジコンピューティングは、すべてのデータを一元化されたデータセンターやクラウドリージョンに転送するのではなく、データが生成される場所の近くで処理することで、ハイブリッドクラウドアーキテクチャを拡張します。AIワークロードでは、エッジコンピューティングにより、小売店舗、工場の製造現場、ローカルデバイスなど、エッジまたはその近くでAI推論(新しいデータから予測や出力を生成するプロセス)を実行できます。より多くのコンピューティングリソースを必要とするモデルのトレーニングは、パブリッククラウドまたはデータセンターで一元的に実施できます。このアプローチにより、リアルタイムの意思決定に伴うレイテンシーを短縮できるほか、ネットワーク経由で転送する必要がある生データの量も最小限に抑えられます。
FinOpsは、財務、エンジニアリング、運用の各チームが連携し、クラウド支出の変動費を管理するための手法です。ハイブリッド環境では、FinOpsチームは自動化を活用して、ワークロードの使用状況とコストを継続的に監視します。自動化ツールは、リアルタイムの価格、需要、ビジネス上の優先順位に基づき、固定費型のオンプレミスインフラストラクチャと変動費型のパブリッククラウドリソースの間でワークロードを移行します。ハイブリッドクラウドにFinOpsを適用することで、クラウドバースティングの基盤となるコスト最適化の考え方を、継続的かつ自動化された取り組みへと発展させることができます。
ハイブリッドクラウドソリューション
ハイブリッドクラウドソリューションは、パブリッククラウドとプライベートクラウド双方のメリットを企業が活用できるようにします。ハイブリッドクラウドソリューションを導入する主なメリットは次のとおりです。
- 柔軟性の向上: ハイブリッドクラウドでは、ビジネスニーズに最適な導入モデルを選択できます。アプリケーションの要件に応じて、プライベートクラウド環境またはパブリッククラウド環境に導入できます。
- スケーラビリティ: ハイブリッドクラウドでは、需要に応じてリソースを増減できます。企業は、利用のピーク時にパブリッククラウドを活用して需要に対応するためのリソースを確保し、需要が減少した際にはリソースを縮小できます。
- コスト効率: パブリッククラウドとプライベートクラウドのソリューションを組み合わせて使用することで、企業はワークロードごとに最もコスト効率の高い選択肢を選び、インフラストラクチャコストを最適化できます。その結果、長期的に大幅なコスト削減につながる可能性があります。
ハイブリッドクラウドの課題
ハイブリッドクラウド戦略の導入は組織に多くのメリットをもたらす一方で、課題も伴います。たとえば、ハイブリッドクラウド環境は従来のITインフラストラクチャよりも複雑であり、複数のクラウドプラットフォーム、オンプレミスインフラストラクチャ、サードパーティサービスの統合と管理には、専門的なスキルと知識が必要です。組織は、すべてのハイブリッドクラウド環境にわたってデータのセキュリティ、バックアップ、可用性を確保するとともに、異なるクラウド間およびクラウドとデータセンター間でデータを容易に交換できるよう、クラウドインフラストラクチャの相互運用性を確保する必要があります。
ハイブリッドクラウド環境では、セキュリティも極めて重要な課題です。セキュリティチームは、すべての環境を可視化するだけでなく、異なるクラウド環境にわたるアクセス制御、暗号化、ID管理についても検討する必要があります。また、組織はクラウドインフラストラクチャが業界規制に準拠していることを確認し、オンプレミス環境とクラウド環境の両方に影響を及ぼす可能性がある脆弱性に対する脅威の修復を連携して進める必要があります。
ハイブリッドクラウドのベストプラクティス
ハイブリッドクラウド環境の計画と構築を開始する際は、以下のヒントとベストプラクティスをご検討ください。
- ビジネスニーズと目標を把握する。これには、業界固有のワークロード要件、規制遵守、データ管理、セキュリティ要件などの要素が含まれます。
- ビジネス目標を達成するために、パブリッククラウドサービスとプライベートクラウドサービスをどのように活用するかを決定します。この戦略では、各環境でホストするワークロードの種類や、データの管理方法と保護方法などを考慮する必要があります。
- パブリッククラウドサービスとプライベートクラウドサービスの適切な組み合わせを選択します。この選択は、ワークロード要件、データの機密性、規制遵守などの要素に基づいて行う必要があります。
- インフラストラクチャ全体を一元的に可視化できるクラウド管理プラットフォームを導入します。このプラットフォームでは、管理者が環境間でワークロードを容易に移動し、パフォーマンスを監視するとともに、セキュリティとコンプライアンスを管理できる必要があります。
F5がハイブリッドクラウドを支援する方法
単一ベンダーへの依存を避けるなど、実務上の理由から、結果としてハイブリッドクラウドアーキテクチャを採用する組織は少なくありません。しかし、ハイブリッドクラウドアーキテクチャに環境を追加するたびに、その環境固有のツールやポリシーも増えることが多く、新たな課題が生じます。すべての環境で一貫してアプリケーションを配信、保護、監視する方法がなければ、運用コストの増加や潜在的なセキュリティギャップに直面する可能性があります。
F5 Application Delivery and Security Platform (ADSP)は、オンプレミス、マルチクラウド、エッジの各環境にわたってトラフィック管理、ポリシー適用、可視性を統合する拡張可能なプラットフォームです。これにより、NetOpsチームとプラットフォームチームは、実行場所を問わず、アプリケーションとAPIを一貫して管理できます。
ハイブリッドクラウド戦略の簡素化を支援するため、F5は、クラウド間で一貫して利用でき、複数のIT環境にわたってデータとアプリケーションを保護する包括的なセキュリティおよび管理ツールを提供します。
ハイブリッドクラウド:よくある質問
ハイブリッドクラウドは、マルチクラウドやプライベートクラウド環境とどのように異なりますか?
プライベートクラウドとは、他のテナントと共有するのではなく、単一の組織が管理する専用インフラストラクチャを備えた環境です。マルチクラウドアーキテクチャでは、複数のパブリッククラウドプロバイダーを同時に利用します。一方、ハイブリッドクラウドは、オンプレミスまたはプライベートクラウドのインフラストラクチャとパブリッククラウドサービスを単一の環境に統合します。組織は、複数のプロバイダーのパブリッククラウドサービスを含むハイブリッドクラウドアーキテクチャを構築できます。
企業がすべてをパブリッククラウドに移行せず、ハイブリッドクラウドモデルを採用するのはなぜですか?
企業がハイブリッドクラウドモデルを選択するのは、多くの場合、機密性の高いワークロードや厳しい規制の対象となるワークロードをオンプレミスまたはプライベートクラウドに維持しながら、拡張性、コスト効率、専用ツールが必要な場合にパブリッククラウドを活用するためです。また、ハイブリッドクラウドを利用することで、レガシーワークロードを継続して運用し、既存のハードウェア投資を最大限に活用しながら、将来的なクラウド移行への道筋を確保できます。
クラウドバースティングとは何ですか?ハイブリッドアーキテクチャではどのように機能しますか?
クラウドバースティングとは、オンプレミスインフラストラクチャが処理能力の上限に達した際に、超過分の処理をパブリッククラウドで行う手法です。ハイブリッドクラウドアーキテクチャでは、季節的な需要の急増や予測困難な需要に対応する場合など、必要に応じてワークロードを移行できます。これにより、通常の需要時に使用しない処理能力のコストを負担せずに済みます。
企業が直面するハイブリッドクラウドセキュリティの主な課題とは?
ハイブリッドクラウドにおける最大の課題は、環境全体で一貫したセキュリティを維持し、すべての環境を完全に可視化することです。たとえば、異なるツールを使用している可能性がある複数の環境にわたり、アクセス制御、暗号化、アイデンティティ管理を連携させる必要があります。また、関連する規制へのコンプライアンスを維持し、すべての環境で修復対応を連携させることも必要です。
AWS OutpostsやAzure Arcなどのパブリッククラウドツールは、ハイブリッドクラウド戦略にどのように組み込まれますか?
AWS OutpostsやAzure Arcなどのツールは、パブリッククラウドプロバイダーの管理ツールをオンプレミスインフラストラクチャに拡張する、コントロールプレーンのオーケストレーションプラットフォームです。ITチームは、オンプレミスとクラウドのリソースを別々のツールで管理する代わりに、ワークロードの実行場所を問わず、一元的に一貫したポリシー、監視、ガバナンスを適用できます。
ハイブリッドクラウド環境全体のワークロード管理にKubernetesはどのように活用されますか?
Kubernetesは、異なる環境でも一貫して実行できるよう、アプリケーションをコンテナにパッケージ化します。ハイブリッドクラウド環境では、コンテナ化により、環境ごとにアプリケーションを書き換えたり再構築したりすることなく、需要に応じてオンプレミスインフラストラクチャとパブリッククラウドの間でワークロードを移動またはスケーリングできます。
