ハイブリッドクラウドを実現:F5、Azure、Azure Stack

はじめに

今日、多くのIT部門は経営陣から、従来の社内データセンターが持つ静的な性質から脱却し、運用コストを削減しながら俊敏性、柔軟性、拡張性を高められる、より動的でクラウド中心のアーキテクチャへ移行するよう求められています。パブリッククラウドとプライベートクラウドにはそれぞれ長所と短所があるため、企業の約71%1 (https://www.f5.com/resources/white-papers/hybrid-cloud-realized-f5-azure-and-azure-stack#footnote01)が、長所をより多く活かしながら短所の多くを解消するために、ハイブリッドモデルを導入しています。しかし、こうした組織のほぼすべてが、異種混在のクラウドインフラストラクチャとアプリケーションサービスを利用しているため、これらの環境の設計と保守を担う部門横断型チームにとって、複雑さが大幅に増しています。

代表的なハイブリッドクラウドのユースケース

2つ(またはそれ以上)の異なるクラウド環境を連携してハイブリッドクラウドを構築すると、俊敏性、柔軟性、拡張性の面でメリットが得られるだけでなく、実装がはるかに困難、あるいは不可能な多種多様の特殊なユースケースにも対応できます。なかでも特に一般的なユースケースは次のとおりです。

高可用性(HA)とディザスタリカバリ(DR)

重要なアプリケーションのダウンタイムを防ぐために、プライベートクラウドの高可用性と地理的冗長性を備えたバックアップ環境を構築・維持するには、非常に高いコストがかかり、単一のプライベートクラウドを運用する場合と比べて、必要な投資額が倍増する可能性があります。物理ハードウェアが2倍必要になるだけでなく、地理的に離れた場所に、独自の電源設備、冷却設備、要員を備えた別のデータセンターも必要です。

代わりに、HA環境とDR環境をパブリッククラウドに配置すれば、コストを大幅に抑えられます。アプリケーションデータは、プライベートクラウドからバックアップされるたびに保存されます。一方、実際のアプリケーションとネットワークリソースは、災害やプライベートクラウドの障害が発生するなど、必要になるまで休止状態に置かれます。必要に応じて、保存されたデータを使用してこれらのアプリケーションとリソースを起動し、運用可能な状態にすることで、アプリケーションの可用性と事業継続性を確保します。

アプリケーションの開発とテスト

プライベートクラウドで新しいアプリケーションを開発すると、パブリッククラウドで開発する場合よりも大幅にコストが高くなる可能性があります。ワークロードを実行するには先行投資が必要ですが、アプリケーションが正常に動作する保証も、現在の市場で受け入れられる保証もありません。そのため、企業は「早く、低コストで失敗する」という考え方に基づき、パブリッククラウドのオンデマンドキャパシティを利用して、新しいアプリケーションの開発、テスト、本番環境での運用を行っています。運用上の問題がないと判断された場合や、ユーザーに広く採用された場合は、長期的に見てセキュリティが高く、運用コストも低くなる可能性があるプライベートクラウドへアプリケーションを移行できます。あるいは、より安価なリザーブドインスタンスなどを利用し、長期利用に適した費用対効果の高い環境にデプロイしたまま、パブリッククラウドで運用を継続することもできます。

クラウドバースティング

クラウドバースティングは、ハイブリッドクラウドで最も望ましい機能と見なされることが多い一方、実際の実装はおそらく最も難しく、多くのハイブリッドクラウド戦略において達成困難な目標となりがちです。クラウドバースティングでは、アプリケーションは主にプライベートクラウドで稼働します。需要が処理能力を超えると、追加のリクエストは、借用したインフラストラクチャ上のパブリッククラウドで稼働する完全なレプリカに転送されます。ただし、これは短時間の予期しないトラフィック急増に対応するための一時的な状態です。トラフィック量の多い状態が継続するようになった場合、企業はプライベートクラウドの処理能力を拡張できます。

クラウドバースティングに対応するハイブリッドクラウド環境の構成は、本質的に難しく複雑です。2つの環境を緊密に連携させるとともに、エンドユーザー体験への影響を最小限に抑えるか、まったく生じさせることなく、自律的かつシームレスにリダイレクトできるよう、障害に強いオーケストレーションが必要です。アプリケーションの実行とサポートに使用するインフラストラクチャ、サービス、ツールが環境ごとに異なる場合、構成と管理を担うチームにとって、その難しさはさらに増します。

均質化:ハイブリッドクラウド成功の鍵

すべてのクラウドが同じではないことは、驚くにはあたりません。それぞれに固有のインフラストラクチャ、ネットワークおよびアプリケーションサービス、開発者向けツール、ユーザーインターフェイスがあり、競合する他のクラウドとの差別化が図られています。たとえば、Sharepoint、Exchange、SQL ServerなどのMicrosoftテクノロジーを利用しているユーザーにとって、AWSやGoogle Cloudへ移行するよりも、Microsoft Azureへ移行する方がはるかに容易です。こうしたプラットフォームやサービスの違いは、クラウド間の非互換性につながり、ハイブリッドクラウド環境の構築を極めて困難にしています。

しかしMicrosoftは、AzureとAzure Stackを通じて、パブリッククラウド環境とプライベートクラウド環境のそれぞれに同等のリソースとサービスを提供することで、ハイブリッドクラウドの構築支援を大きく前進させました。発表されたばかりのAzure Stackでは、社内データセンターの制御性とセキュリティを維持しながら、パブリッククラウドの多くの機能とメリットを利用できます。

一般的な3つのハイレベルなハイブリッドクラウドモデルを比較し、この新しいアプローチをF5の高度なアプリケーションサービスと組み合わせることで、ハイブリッドクラウドの開発と運用が大幅に簡素化される仕組みをご紹介します。

モデル1:異種クラウドプラットフォームとアプリケーションサービス

最初の例は、図1に示すように、パブリッククラウド側ではAzureとAzureネイティブのアプリケーションサービスを使用し、プライベートクラウド側ではVMwareとF5のアプリケーションサービスを活用するハイブリッドクラウド環境です。

図1:モデル1の構成図

環境間で一貫性が著しく欠如しているため、このモデルは実装と運用が最も困難です。前述のHA/DRのユースケースでは、各クラウドでアプリケーションが同一に動作するよう、クラウドごとに個別に構成する必要があります。仮想マシン、API、基盤となるネットワークリソースが異なることを考えると、これは容易な作業ではありません。こうした違いに加え、各クラウドでアプリケーションを運用可能にするために複雑な連携が必要となるため、アプリケーション全体のポータビリティが低下します。実質的に、同様の結果を得るために必要な作業量は2倍になります。さらに、各プラットフォームには固有のポータルインターフェースと開発者/管理者向けツールがあるため、このモデルはすぐに現実的に運用できないほど複雑になります。

しかも、これはプラットフォームの違いだけを考慮した場合です。インターフェース、管理ツール、構成要件が異なるアプリケーションサービスの影響まで加わると、複雑さは飛躍的に増大します。問題は管理上の混乱だけではありません。機能に一貫性がないため、各クラウドで同じサービスを使用してアプリケーションを構成できず、さらなるリスクにさらされます。たとえば、セキュリティサービスが異なると、ファイアウォールのルールセットやポリシーも個別に設定する必要があります。その結果、セキュリティ上の抜け穴が生じ、その後のサイバー攻撃によってアプリケーションが停止したり、顧客データが失われたりする可能性があります。

モデル2:異種クラウドプラットフォームと同種のアプリケーションサービス

この構成はモデル1と似ていますが、図2に示すように、各クラウド環境がF5アプリケーションサービスによってサポートされています。

図2:モデル2の概念図

一貫性のあるアプリケーションサービスを利用すれば、単一画面で管理しながら、F5のすべてのサービス、構成、ポリシーを環境間で複製できるため、システム管理者の負担を軽減できます。機能、インターフェース、用語が異なる2つの体系を習得して使い分ける必要はなく、標準化された多機能な1つのサービス群をハイブリッドクラウド環境全体に導入できます。また、これらのサービスはクラウドに依存せず、どのクラウドでも同じように動作するため、クラウドネイティブサービスの利用に伴う可能性があるベンダーロックインへの懸念を解消できます。ただし、このモデルでは、異なるプラットフォームインフラストラクチャに関連する問題には対処できないため、その点を考慮する必要があります。

モデル3:同種のクラウドプラットフォームとアプリケーションサービス

この最終モデルでは、図3に示すように、モデル2で説明した構成のVMwareプライベートクラウドをMicrosoft Azure Stackに置き換えることで、さらに段階的な改善が図られています。

図3:モデル3の構成図

Azure Stackをご存じない方のために説明すると、このクラウドプラットフォームは、同一のサービス、ツール、仮想インフラストラクチャを備えた、プライベートクラウド内のAzureの拡張環境(または別のリージョン)として設計されています。アプリケーションをリファクタリングすることなく、ハイブリッドクラウド環境間でワークロードを容易に移行できる点がメリットです。また、Azureのツールとポータルインターフェイスに一貫性があるため、管理の複雑さが軽減されます。アプリケーション所有者は、Azureでアプリケーションを開発およびテストした後、Azure Stackへ迅速かつシームレスに移行して本番環境にデプロイできます(逆方向の移行も可能です)。その際、両方の環境で同一のエンタープライズグレードのF5アプリケーションサービスを利用できます。

モデル1と比較すると、このハイブリッドクラウドモデルは、一貫したアプリケーションサービスとクラウドインフラストラクチャのメリットを兼ね備えながら、システム変数の数を4つから2つに半減させます。これにより、アプリケーションの可搬性が大幅に向上し、IT管理の負担が軽減されます。プラットフォームとアプリケーションサービスの両方を統合することで、ネットワーク運用担当者とIT管理者は、ハイブリッドクラウドアーキテクチャを2つの独立した一枚岩のシステムではなく、単一の均質な環境として捉えることができます。

真のハイブリッドクラウド:F5 for AzureとAzure Stack

F5のBIG-IP Virtual Edition(VE)は、両方のプラットフォームで同一に動作し、アプリケーションを支えるサービスを複製することで、AzureとAzure Stackのアーキテクチャ間の同等性を高めます。開発者は、ある環境でアプリケーションを開発して別の環境に移行できるだけでなく、同じBIG-IPの構成、ポリシー、アプリケーションサービスをすべて含む、本番環境に対応したスタック全体を複製できます。これにより、アプリケーションのリファクタリングやテストに膨大な時間を費やす必要がなくなり、開発者は本来の業務であるコードの記述に専念できます。

アプリケーションをパブリッククラウドに移行する開発者にとって、アプリケーションとそのデータの保護は懸念事項になりがちですが、必ずしも心配する必要はありません。開発者がAzure Stack環境でアプリケーションを構築する一方で、セキュリティアーキテクトはF5のWebアプリケーションファイアウォール(WAF)に必要な設定を行えます。アプリケーションが同じ業界最高水準のWAFで保護されることを確保しながら、スタック全体をAzureに複製できます。同一のポリシーとルールセットを使用するため、異なるWAFの併用によって生じる可能性のあるセキュリティ上の抜け穴や脆弱性を防止できます。

また、Azure StackはAzure Resource Manager(ARM)をサポートしているため、F5が幅広く提供するARMテンプレートを使用して、両方の環境におけるBIG-IP VEインスタンスの導入と構成を自動化できます。これにより、起動時間が大幅に短縮され、ハイブリッドクラウドの効率が向上します。最終的に、Azureとの緊密な統合を実現するためにF5が行ってきた取り組みは、Azureのお客さまだけでなく、Azure Stackのお客さまにもメリットをもたらします。

まとめ

組織がハイブリッドクラウド戦略への投資を選択する理由は数多く、その戦略を実装する方法も同様に多岐にわたります。多様化を図るために、特性の異なる複数のクラウドプラットフォームやアプリケーションサービスプロバイダーを利用すると、ハイブリッドクラウドアーキテクチャの実装と運用は飛躍的に複雑になります。

クラウド環境全体でF5の高度なアプリケーションサービスを標準化し、MicrosoftのAzureとAzure Stackという同種のクラウドプラットフォームを活用することで、IT部門はエコシステム間でアプリケーションを完全に移行できる、真のハイブリッドアーキテクチャを構築できます。同一のBIG-IPトラフィック管理およびセキュリティサービスでアプリケーションをサポートすることにより、ネットワークおよびセキュリティの運用担当者は、エンドユーザー向けのアプリケーション可用性を最適化すると同時に、一貫したセキュリティ機能とポリシーによってアプリケーションとそのデータを保護できます。

クラウドコンピューティングがまだ比較的初期段階にある中、多くのIT組織は、長期的なクラウド戦略として、全面的にパブリッククラウドを採用するのか、全面的にプライベートクラウドを採用するのか、あるいは両者を組み合わせるのかという難しい決断を迫られています。AzureおよびAzure Stack向けF5アプリケーションサービスは、ビジネス要件の変化に対応して、アプリケーションポートフォリオ全体をいつでもクラウド環境間で移行できる包括的なソリューションを構築することで、この決断による影響を軽減します。

注記:

1 RightScale State of the Cloud Report 2018

公開日:2018年5月9日