クラウドコンピューティングは、今なおテクノロジー業界を席巻しています。思いつく限りの技術課題やビジネス課題に対する答えは、ほぼすべてクラウドです。市場投入を早めたいですか?クラウドを導入しましょう。ビジネスの成長に向けて拡張したいですか?クラウドを導入しましょう。市場の変化に応じて、より迅速に方向転換したいですか?クラウドを導入しましょう。髪をもっと健康にしたいですか?クラウドを導入しましょう。
さすがに最後の例は違うかもしれません。しかし実際には、クラウドがビジネスやITにおけるほぼあらゆる課題への対応に役立つという情報が、世の中にあふれています。クラウドコンピューティングがデジタルトランスフォーメーションの取り組みを支援できることは確かですが、その導入を先導してきた企業は課題に直面しています。F5の「2017年版アプリケーションデリバリの現状」レポートでは、そうしたさまざまな課題に加え、ITの見えにくいところに潜み、今後表面化する可能性のある課題も明らかになりました。

01 | クラウドは「上記のすべて」
驚くことではありませんが、組織は「クラウド」コンピューティングの定義と利用について、はるかに幅広く捉えています。6つの異なるクラウドコンピューティングモデルを提示したところ、回答者はいずれのモデルも利用していました。圧倒的に多く選ばれたのはプライベート(オンプレミス)クラウドでしたが、その他のプライベートクラウドやパブリッククラウドも相当数利用されていました。組織が採用していたクラウドモデルは平均1.8種類でした。これは利用しているクラウドプロバイダーの数ではなく、あくまでモデルの数です。多くの組織が多数のSaaSアプリケーションを利用していますが、SaaSも数あるモデルの1つにすぎません。
わずかに過半数を占める55%が1つのモデルのみを使用していた一方、36%は2~3種類のモデルを採用し、2,100人を超える回答者のうち10%は組織内で4種類以上のクラウドモデルを使用していました。
明らかに、今はマルチクラウドの時代です。クラウド活用を本格化する組織が増えるにつれ、採用されるモデルは今後さらに多様化していくでしょう。しかし、クラウドの利用が「あらゆるモデルを併用する」方向へ進む中、組織は異なる環境間で一貫性を維持するという課題に直面しています。運用上の不整合が広がっています。
02 | 一貫性のあるクラウド
組織が直面している可能性のある課題について尋ねたところ、「一貫性」が共通のテーマとして最上位に挙がりました。具体的には、アプリケーションパフォーマンスの一貫性を課題とする組織もあれば、セキュリティポリシーの一貫性を課題とする組織もありました。また、マルチクラウド環境を運用する回答者の4人に1人にとって、アイデンティティ管理も依然として課題です。さらに、ほぼ同じ割合(27%)が、マルチクラウド管理に伴う運用上の不整合を抑えることに苦慮しています。

一貫性に関する4つの課題のうち、最も大きなものはセキュリティでした。これは10年前に広く聞かれたセキュリティへの懸念とは異なります。より成熟し、経験を積んだ導入企業は、問題はクラウドのセキュリティが不十分なことではなく、一貫したセキュリティを提供できないことにあると認識しています。
この一貫性の欠如は、マルチクラウド環境全体でセキュリティサービスに不整合が生じることに起因します。クラウドプロバイダーやマーケットプレイスからセキュリティサービスを容易に利用できる場合でも、ポリシーの実装方法はオンプレミスのサービスとは異なります。そのため、導入企業が同等性を確保し、それらのポリシーの有効性に確信を持つことは困難です。
この課題は回答者の3人に1人が挙げており、マルチクラウド計画を進める組織が直面する最大の課題となっています。さらに、多くの組織で情報セキュリティとクラウドコンピューティングの両分野の人材が不足し、ポジションを埋められない状況が、この課題を一層深刻にしています。
03 | スキル不足
情報セキュリティ人材の不足は、広く知られています。セキュリティ業界にとって深刻なこの問題については、長年にわたり数多くの記事やブログが書かれてきました。しかし、この1年で状況が改善したようには見えません。2016年の調査では、回答者の34%が「スキル不足」をセキュリティ上の最大の課題の1つとして挙げました。では、2017年はどうでしょうか。今回も34%が、スキル不足は依然として重大な課題だと回答しています。
さらに、マルチクラウドへの移行における大きな障壁として、すぐに活用できる専門知識の不足を挙げた回答者が29%に上ることを踏まえると、多くの組織がプライベートなオンプレミスクラウドの導入に時間と費用を注いでいる理由が見えてくるかもしれません。
クラウドにおけるこの2つのギャップを埋めることは、特にセキュリティの観点から極めて重要です。組織ではクラウドコンピューティングの活用が成熟しつつあるだけでなく、クラウド導入に伴う具体的なセキュリティニーズについても、明確な要件が定められているためです。
04 | セキュリティへの精通

今日、パブリッククラウド環境そのもののセキュリティを懸念することは、もはや現実的ではありません。組織はそうした懸念をとうに乗り越えており、現在のニーズや要件はより具体的になっています。そこからは、ネットワークからアプリケーションまでを網羅する、十分に練られた戦略の必要性が明確に見て取れます。
それでも、クラウド導入に重要だと回答者が挙げたセキュリティの「機能」の第1位は、実際にはセキュリティ機能ではなく、一貫性でした。オンプレミスのサービスやポリシーと同等のセキュリティおよび監査が、最も重要な項目に選ばれました。今年の調査では、保存データの暗号化(40%)と転送中データの暗号化(37%)がそれぞれ第2位と第3位に後退しました。
ここでいったん立ち止まり、転送中データの暗号化がクラウド導入に重要だと回答した人の11%が、SSLをあらゆる場所に実装する予定がなかったことに触れておく必要があります。もちろん、SSLを「一部の場所」にも実装していなかったという意味ではありません。しかし、クラウド導入に重要だとしながらも、その考えを全面的に採用していなかった点は興味深いところです。
また、「これなしではアプリをデプロイしない」項目のトップにセキュリティが躍り出たことも注目に値します。この3年間、セキュリティが首位へと上昇する様子を見てきましたが、他のアプリサービスのカテゴリー(パフォーマンス、アイデンティティ、可用性、モビリティ)が近いうちに首位を奪うのは難しいでしょう。
クラウドがなくなることはなく、現在、ほとんどの組織が目指しているのは間違いなくマルチクラウドです。あとはそこに至るまでの道のりですが、完全なマルチクラウド環境への移行を妨げるものではないものの、進行を遅らせるいくつかの障害が待ち受けています。
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著者について

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。
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