コンテナのスケーリング術:ディスカバリー

F5エコシステム | 2017年12月28日

コンテナのスケーリングは、サービスの前段にプロキシを置くだけで済むものではありません。スケーリングには単なる分散以上の対応が必要です。変化の速いコンテナの世界でスケーリングを確実に行うには、再試行、サーキットブレーカー、ディスカバリ、分散、監視という5つの異なる機能が必要です。

コンテナのスケーリング手法を解説する本記事では、ディスカバリについて掘り下げます。

ディスカバリ

従来のスケーリングモデルは、構成が比較的固定されています。ロードバランシングプロキシは、アルゴリズムを使用して、ほぼ固定されたリソースプールからリソースを選択します。リソースの選択(分散)はリアルタイムで行われ、負荷や応答時間など、その時点の変数が考慮される場合もありますが、環境全体はリアルタイムでは変化しません。運用担当者は、容量の増減を管理する、企業が定めたプロセスに基づいてリソースを追加または削除します。

最新のスケーリングモデルは、本質的に変動性が高く、動的です。最新のシステムにおけるスケーリングは、あらゆるものの「自動化」を前提としています。クラウドによって具体化された自動スケーリングという概念では、需要に応じてリソースプールを拡張または縮小します。しかし、これは従来のモデルから半歩進んだにすぎません。依然として、負荷分散アルゴリズムが選択を行う「中核」のリソースプールという考え方が存在します。このプールは動的に拡張または縮小できますが、依然として、その運用基盤である比較的従来型のモデルによる制約を受けます。

コンテナ、特にコンテナオーケストレーション環境は、こうした従来の枠組みから完全に脱却しています。エンドポイント(イングレス)という概念は、コンテナベースのスケーリングにおける数少ない「固定」要素の1つです。それ以外は、ルーティングルールから、それを支えるプールを構成するリソースに至るまで、すべて変動性が非常に高いと見なされます。理論上、コンテナの存続期間はわずか数秒の場合もあります。しかし実際には、通常は数日間存続する傾向があります。リソースが数か月(場合によっては数年)存続していた従来のモデルと比べると、この存続期間の短さは、自動化なしでは対応できない負担を運用担当者にもたらします。

したがって、ディスカバリはコンテナのスケーリングに不可欠な要素です。ロードバランシングプロキシには、1分前とは構成が変わっている可能性があるリソースプールから、リソースを選択できる機能が必要です。そのため、ほとんどのコンテナオーケストレーション環境にはリソースの「レジストリ」が含まれており、プロキシによるリソースのリアルタイムな検出を支援することで、スケーリングを可能にします。

このプロセスでは、プロキシをコンテナオーケストレーションのエコシステムに統合するだけでなく、こうした環境の共通言語に対応させる必要があります。コンテナオーケストレーション環境では、宣言型構成ファイル(リソースファイル)とメタデータを使用することで、プロキシがスケーリング対象のサービスに関連付けられたリソースを識別できるようにします。これにより、プロキシはリソースの「プール」をリアルタイムで自動調整し、すでに停止しているリソースを誤って選択する事態を回避できます。

ディスカバリ機能がなければ、ロードバランシングプロキシがコンテナ環境でアプリケーションやサービスを効率的にスケーリングすることはできません。このような環境の変化に、手動設定で対応し続けることは、どの運用担当者にとっても不可能です。どのリソースが稼働中で、どのサービスに関連付けられているかを把握するだけで大半の時間を費やしてしまい、必要な変更を実際に行う時間はほとんど残りません。

ディスカバリにより、コンテナオーケストレーション環境内のコンポーネントはリアルタイムで動作できるようになります。また、ロードバランシングプロキシは、必要に応じてリソースを選択するための情報を確実に取得できるため、アプリケーションやサービスをスケーリングできます。

共有
タグ: 2017

著者について

Lori Mac Vittie
Lori Mac Vittie特別技術者兼チーフエバンジェリスト | F5

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。

Lori Mac Vittieのその他のブログ記事

関連するブログ記事

F5 Application Study Tool:OpenTelemetryによるF5 BIG-IP環境の監視
F5エコシステム | 2025/04/15

F5 Application Study Tool:OpenTelemetryによるF5 BIG-IP環境の監視

F5の新しいオープンソースツールは、BIG-IP環境を詳細に可視化し、データを追跡するとともに、強力でカスタマイズ可能なインサイトを得るための基盤を提供します。

F5 BIG-IPでAI防御を実現
F5エコシステム | 2024/11/13

F5 BIG-IPでAI防御を実現

F5 BIG-IP Advanced WAF、BIG-IP APM、BIG-IP SSL Orchestratorが、生成AIアプリ向けに包括的なセキュリティソリューションを提供する仕組みをご覧ください。

F5 Advanced WAFによるGraphQL APIの保護
F5エコシステム | 2021/08/31

F5 Advanced WAFによるGraphQL APIの保護

ここ数年、多くの組織がデジタルトランスフォーメーションを進めており、COVID-19のパンデミックによってその動きは加速しています。

アプリケーションサービスの現状 通信業界版:リーダーとしての台頭
F5エコシステム | 2019/02/19

アプリケーションサービスの現状 通信業界版:リーダーとしての台頭

通信ネットワークが進化し、さまざまな業界の幅広いユースケースに対応するなか、通信業界の回答者がテクノロジーリーダーとしての存在感を高めていることがわかります。

デジタルトランスフォーメーションは、単なるペーパーレス化ではない
F5エコシステム | 2017/07/10

デジタルトランスフォーメーションは、単なるペーパーレス化ではない

デジタルトランスフォーメーションは、単なるペーパーレス化ではありません。真のモダナイゼーションにアプリケーションアーキテクチャとセキュリティの再構築が必要な理由を、F5ブログでご覧ください。

やめましょう。もう本当にやめましょう。HTTPSはHTTPより高速ではありません。
F5エコシステム | 2016/09/19

やめましょう。もう本当にやめましょう。HTTPSはHTTPより高速ではありません。

もうやめましょう。HTTPSはHTTPより高速ではありません。プロトコルのパフォーマンスに関する微妙な違いと、暗号化トラフィックを適切に最適化する方法については、F5ブログをご覧ください。