ビジネスの進化はムーアの法則を超える速さで

F5エコシステム | 2019年3月25日

ムーアの法則は、21世紀のテクノロジーに関して最も頻繁に引用される経験則の1つです。ご存じない方や、あらためて確認したい方のために説明すると、ムーアの法則とは、集積回路上のトランジスタ数が約2年ごとに倍増するという経験則です。平たく言えば、コンピューティング能力が2年ごとに倍増するという意味でよく使われます。

より身近な例として、ムーアの法則は、初期の[スター・ウォーズ]や[スター・トレック]の特殊効果と、現在の特殊効果との違いに表れています。かつて処理に何年もかかっていたものが、今では数週間、場合によってはわずか数時間で済みます。そのため、現在の「Oregon Trail」は、多くの人が子どもの頃に遊んだピクセル調のバージョンとは大きく異なるものになるでしょう。

ビジネスにとってのムーアの法則の重要性は、常にアプリケーションへの影響にありました。アプリケーションの規模と速度は、利用可能なコンピューティング能力に左右されます。利用可能な能力が倍増すれば、速度が向上し、処理容量(スケール)も拡大します。この2つの能力は、企業がアプリケーション資産を活用するうえで、これまでも、そして現在も不可欠です。

かつては、ムーアの法則によって、企業の成長は技術革新のペースに制約されていました。スケーリング戦略などの対処策は、企業がその制約を乗り越える助けにはなりましたが、制約そのものを解消することはできませんでした。結局のところ、利用可能なコンピューティング能力でできることには限界があります。

ある程度の年齢の方なら、IntelとAMDが、自社のCPUの方が高速で優れていると消費者に訴えるために多額の資金を投じた「CPU戦争」を覚えているでしょう。新しいCPUは、現在のiThingsと同じような華々しさと高揚感を伴って発表されていました。

現在では、コンピューティング能力の進歩に気付くのは、熱心なハードウェアファンくらいです。広告も、ジングルも、歌もなく、華々しい発表もありません。新しいアーキテクチャと運用モデルによって、企業がムーアの法則を上回る速さで前進できるようになったためです。

コンテナとクラウドの力、そして最新ネットワークの信頼性と速度を活用すれば、データ処理能力を高め、意思決定を迅速化するために、コンピューティング能力が倍増するまで2年も待つ必要はありません。必要な数のノードに処理を分散することで、コンピューティング能力を今すぐ2倍、あるいは3倍にできます。機械学習をリアルタイムで活用し、明日ではなく今日、企業が意思決定に必要とする分析とインサイトを提供することも可能です。

このような能力は前例のないものです。かつて分析には、数時間、場合によっては数日かかっていました。現在では、同じ分析結果を数秒で得られます。今日、機械学習は、リアルタイムの脅威分析、ユーザー行動分析、行動ベースのDDoS検知に利用されています。また、顔認識や生体認証セキュリティの活用にも使われています。ムーアの法則に縛られたままでは不可能だった方法で、機械学習を活用しているのです。

これは望ましいことです。物理学者はすでに、ムーアの法則が間もなく限界を迎えると予測しているからです。理論物理学者のMichio Kaku氏は、2022年までにムーアの法則が通用しなくなると述べています。トランジスタ密度を高める能力は限界に達し、それに伴い、コンピューティング能力を倍増させることもできなくなります。それでも、最新のアーキテクチャ、アルゴリズム、分散システムを活用すれば、コンピューティング能力を瞬時に2倍、3倍、あるいは4倍にできます。

一方、ムーアの法則には、コンピューティング能力をシームレスに倍増できるという利点がありました。性能と処理容量の向上を実現するために何かを変更しなければならないことは、32ビットから64ビットシステムへの移行を除けば、ほとんどありませんでした。しかし、人の手による対応が必要な、システムベースの代替アプローチではそうはいきません。アプリケーションのリファクタリングが必要になる場合もあれば、新しい導入モデルやスケーリングモデルが必要になる場合もあります。並列化や分散処理を活用するために、システムの書き換えが必要になることもあります。いずれにしても、スケールと速度を向上させるには、一般に変更と労力が必要です。

いずれにせよ、ビジネスはムーアの法則で対応できる速度をはるかに上回るペースで進んでおり、選択の余地はほとんどありません。だからこそ、セキュリティからアプリケーションデリバリ、運用に至るまで、あらゆるものを再構想し続けることが重要です。処理容量と速度の向上をムーアの法則に頼るのではなく、より多くのデータを、より頻繁に、かつこれまで以上に高速に処理できるよう、自律的にスケールするシステム・オブ・システムズへと移行する必要があります。

企業がリアルタイムで意思決定できるようにするだけでは不十分です。そもそも意思決定が必要になることを予測できなければなりません。

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タグ: 2019

著者について

Lori Mac Vittie
Lori Mac Vittie特別技術者兼チーフエバンジェリスト | F5

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。

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