いえ、そちらの「スピード」ではありません。もう一方の「スピード」です。
ベロシティ、すなわちアプリケーションを開発して本番環境にリリースするまでの速さは、組織がアジャイル開発手法やデプロイにDevOpsを採用する一般的な動機となっています。 指標としては、多くの場合「サイクルタイム」と「デプロイ頻度」が重視されます。 これらは、機能をより迅速に市場へ投入するため、ますます短くなる「スプリント」で時間を測定するアジャイルの指標と併せて言及されることがよくあります。
重要なのはスピードです。クラウドは、その実現手段として長年注目されてきました。調達に長い時間をかける必要も、機器の設置や配線を待つ必要もありません。数か月待たなければならないような、予定されたデプロイ期間もありません。クラウドの「アジリティ」とは、実質的にはベロシティの言い換えにすぎません。CA Technologiesが2015年に実施した調査では、経営幹部の10人中9人が、アプリをより迅速にリリースするよう求める圧力が強まっていると回答しました。市場に適したベロシティを実現する方法が問われるとき、クラウドがその答えと見なされることがよくあります。

しかし、クラウドへの移行を急ぐあまり、同等のサービスや導入に関する専門知識が得られず、組織はサービスの一部を断念せざるを得ないことが少なくありません。これは、運用に不可欠な3要素であるパフォーマンス、セキュリティ、スケーラビリティに関しては特に大きな問題です。いずれかを犠牲にすれば、企業が四半期ごと、場合によっては日々評価する指標である利益と生産性の両方に、深刻な影響が及ぶ可能性があります。
おそらくそのため、Network Worldの「2016 State of the Network」調査では、回答者の過半数が、ネットワーク投資の主な推進要因として、パフォーマンスの向上(55%)、データセキュリティ(53%)、可用性の確保(50%)を挙げています。
F5独自のState of Application Delivery調査でも、これら3つすべてが同様に重視されていることがわかりました。アプリケーションの導入に不可欠なサービスを尋ねたところ、セキュリティと可用性が同率で首位となりました。では、パフォーマンスはどうでしょうか。ネットワークのセキュリティを強化するためであっても、組織が最後まで手放したくない要素です。
組織には「両方の長所を兼ね備えた」アプローチが必要です。開発チームと運用チームがアプリを本番環境に投入するスピードに対応するには、クラウドコンピューティングの俊敏性、すなわち迅速性が求められます。しかし、そのためにセキュリティ、スケーラビリティ、パフォーマンスを支えるサービスを犠牲にすることはできません。侵害やパフォーマンスの低下、あるいは重要な局面でスケールできないことは、アプリを市場に投入できないことと同じくらい深刻な損害をもたらします。
問題は、この2つの世界が相反しているように見えることです。これは、信頼性と俊敏性を同時に実現しようとすることで生じる、データセンターの不協和です。
実際には、この2つの世界は、言葉から受ける印象ほど不調和ではありません。アプリやモノを活用して業務を最適化し、機能をより迅速かつ頻繁に市場へ投入するためにビジネスレベルで求められる俊敏性は、それを支えるインフラストラクチャの信頼性の上に成り立っています。ネットワークがそのスピードに対応できないのではありません。導入の再現性だけでなく、一貫性と予測可能性も確保できるよう、ネットワークにもう少し注意を払う必要があるということです。

つまり、セキュリティ、拡張性、速度の維持に必要なアプリサービスを従来の方法で導入すること自体が問題なのではありません。問題は、その導入スピードです。これに対処するには、APIやテンプレートなどのプログラムによる手法を採用し、オーケストレーションと組み合わせて、アプリサービスの導入を高速化する必要があります。これにより、アプリケーションの開発や運用に近いスピードを実現できます。
解決策の1つは、従来型環境やコロケーション、パブリッククラウドやプライベートクラウドを問わず、すべての環境で運用上の一貫性を確保できる一連のサービスを利用することです。あらゆるクラウドと従来型データセンターなど、多様な環境に導入できるプラットフォームを活用すれば、複数のポリシーセットの作成と管理に伴う運用上の摩擦を軽減し、導入を迅速化できます。こうしたポリシーセットの中には、一貫性とコンプライアンスの確保に必要な機能が不足しているものもあります。プラットフォームアプローチにより、一元的な指揮と分散型の実行を実現し、導入への信頼を支える再現性を確保できます。
テンプレートを使用する、または「Infrastructure as Code」として扱うことで、環境をまたいだサービス展開の一貫性と再現性が確保され、信頼性が向上します。一方、オーケストレーションは、今日のより柔軟でアジャイルな運用を支える手段として、展開の迅速化に貢献します。
信頼性とアジリティを両立できます。スピードを優先するためにサービスを犠牲にする必要はありません。必要なのは、適切な機能を備えた適切なプラットフォームを、適切な環境に導入することです。
著者について

Lori MacVittieは、F5のOffice of the CTOに所属するDistinguished Engineer兼Chief Evangelistであり、アプリケーションデリバリ、自動化戦略、インフラストラクチャに関する深い専門知識を有しています。AIエージェントのガードレール策定、脆弱なマルチクラウドアーキテクチャの分析、スケーラブルなシステムの限界の検証など、複雑な事柄を明快にすることで知られています。アプリケーション開発、ITアーキテクチャ、ネットワークおよびシステム運用の分野で、30年以上にわたる業界経験を有しています。F5入社前は、受賞歴のあるテクノロジー編集者として活躍していました。 MacVittieはコンピューターサイエンスの修士号を取得しており、セキュリティ、クラウド、エンタープライズアーキテクチャにわたる分野で多数の著作を発表しています。また、テーブルトークゲームとビデオゲームをこよなく愛し、チーズについては遠慮なく強いこだわりを語ります。
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